2024年04月20日( 土 )

神奈川県知事肝いりで推進!「人生100歳時代の設計図」(前)

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 100歳まで生きることを前提にどういう人生を送るか―――。高齢化が進む日本では、会社員がリタイア後、40年近く、老後、余生を送るという時代は過去のものとなりつつある。そんな時代を見越して、「人生100歳時代の設計図」という政策に取り組んでいるのが神奈川県である。充実した人生を送るためには、人生の設計図を描くことが大切だということを県民に気づいてもらおうと、機会づくり、場づくりに取り組んでいる。

7万人を突破した100歳以上人口

 世界に類を見ないスピードで高齢化が進む日本。高齢化率(人口に占める65歳以上の割合)が21%を超えると「超高齢社会」と呼ばれる(国連)。日本が超高齢社会になったのが2007年。現在は28%程度だが、2025年には30%、2060年には40%に達するとみられている。

 そんな超高齢社会を1人ひとりがどう生きるかという観点からとらえた言葉が「人生100年時代」だろう。今や時代を表すキーワードとして定着しているが、発端は『ライフシフト―寿命100年時代の人生戦略』(2016年10月東洋経済新報社刊/ロンドンビジネススクールのリンダ・グラットン、アンドリュー・スコット両教授著)である。

 本書の主張はこうだ。健康な状態で生きる年数が長くなると、引退後の生活だけでなく、人生全体を設計し直さなければならない。これまでの人生のステージは多くの場合「教育→仕事→引退」だったが、寿命が延びれば70代、80代まで働くことが当たり前になる。そして、いくつものステージを経験する「マルチステージ」の人生に突入する。そこで必要となるのは、画一的な生き方にとらわれない覚悟である。何を大切に生きるかを絶えず問い直し、自分らしい人生をどう計画するかが大事になる――

 これと同じ観点から政策に取り組んでいる県が神奈川県である。

神奈川県政策局未来創生課長 杉山 力也 氏

 政策に取り組み始めたのは、実は本書の出版よりも早い。黒岩祐治知事は2016年1月記者会見で「『人生100歳時代の設計図』を考えていく年にしたい」と述べ、県として人生100歳時代の取り組みを進めることを発表した。

 厚生労働省によると、全国で100歳以上の高齢者は7万1,274人。初めて7万人を突破した。2018年から1,489人増え、49年連続で過去最高を更新した。2050年には53万人となり、192人に1人が100歳以上の人口構成になるとみられている。

 100歳以上の高齢者は、統計を取り始めた1963年には全国で153人だったが、1981年に1,000人、1998年に1万人を突破。2012年には5万人を超え、増加を続けている。

 まさに100歳まで生きることは目の前に迫った現実なのである。

 神奈川県は超高齢社会を見据え、未病改善の取り組みを進めてきた。「かながわ未病改善宣言」を行い、そのなかで「食」「運動」「社会参加」によって未病を改善していくアプローチを訴えてきたのである。未病改善の取り組みを進めていくと、その先には元気な状態で人生が100歳まで続くことになる。だが、一般の会社員の場合、定年退職後に40年近くも人生が続くことをイメージできていない。

 そこで、未病の取り組みを進めている県として、「食」「運動」「社会参加」のうちの「社会参加」に着目して、新しい生活モデル・社会モデルを示していく必要があると考えたのである。それが「人生100歳時代の設計図」だ。

 今までは、60歳を過ぎるとまもなく余生、老後というイメージだったが、これからは100歳まで元気で、社会から必要とされる生涯現役が当たり前になるのである。

(つづく)
【本城 優作】

■かながわ人生100歳時代ネットワーク

構成員(83団体・有識者3名)2019年10月10日現在

●有識者
牧野 篤(東京大学大学院教育学研究科教授、東京大学高齢社会総合研究機構副機構長)
前田 展弘(東京大学高齢社会総合研究機構客員研究員、ニッセイ基礎研究所主任研究員)
澤岡 詩野(ダイヤ高齢社会研究財団主任研究員)

●大学
東海大学、横浜国立大学、神奈川大学、関東学院大学、横浜市立大学、松蔭大学、県立保健福祉大学、昭和音楽大学、星槎大学、横浜商科大学、昭和大学、横浜薬科大学、東京都市大学、相模女子大学、相模女子大学短期大学部

●企業
第一生命保険、横浜銀行、大塚製薬、タウンニュース社、NTTドコモ、東急不動産R&Dセンター、日本生命保険、オイレス工業、アズビル、ソフトバンク、Peatix Japan

●NPO
ソーシャルコーディネートかながわ、NPOサポートちがさき、YUVEC、藤沢市民活動推進機構、さがみはら市民会議、YMCAコミュニティサポート、I Love つづき、シニアネットワークおだわら&あしがら、鎌倉市市民活動センター運営会議、横浜移動サービス協議会、湘南スタイル、若葉台、若葉台スポーツ・文化クラブ、湘南ふじさわシニアネット、ホームスクーリングで輝くみらいタウンプロジェクト、学習サークルBE-GLOBAL、スーリールファム

●団体
神奈川県社会福祉協議会、神奈川県住宅供給公社、神奈川県経営者協会、神奈川県商工会議所連合会、神奈川県中小企業団体中央会、神奈川県商工会連合会、神奈川県シルバー人材センター連合会、プラチナ構想ネットワーク、UR都市機構、神奈川県中小企業家同友会、茅ケ崎市まちぢから協議会連絡会・12地区協議会・1地区連合会、生活協同組合パルシステム神奈川ゆめコープ、一般社団法人アイオーシニアズジャパン

●行政
県、横浜市、相模原市、横須賀市、藤沢市、小田原市、茅ケ崎市、大和市、綾瀬市、三浦市、逗子市、湯河原町、寒川町、神奈川労働局

(中)

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