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2020年02月26日 07:00

「赤福血風録」赤福会長、暴力団から焼酎を受注し、辞任~根底には、父が息子を追い落としたクーデター事件あり!(後)

 伊勢名物、赤福餅で知られる三重県伊勢市の和菓子老舗「赤福」の濱田益嗣(ますたね)会長(82)が、指定暴力団と関わりをもった責任を取り、赤福会長と持株会社濱田総業の会長を辞任した。赤福といえば、益嗣氏が息子の典保(のりやす)社長(57)を追い落としたお家騒動で企業事件史に名をとどめる。

元住友銀行副頭取の玉井英二氏を会長に招く

 社長・典保氏は、消費期限偽装事件を受け、元住友銀行副頭取の玉井英二氏を会長に迎えた。2人はそれまで面識はなかったが、ある有力者が結びつけた。

 玉井英二氏は乱世に活躍した経営のプロである。住友銀行(現・三井住友銀行)時代、再建役として送り込まれた大昭和製紙(現・日本製紙)では、借金返済のために大昭和の資産を次々と処分。それにより大昭和は住銀に恨みを抱き、後に絶縁状を叩きつけた。

 住銀の屋台骨を揺るがしたイトマン事件の時には、副頭取として「天皇」といわれた磯田一郎会長追い落としの急先鋒に立った。

 阪神電気鉄道の社外取締役をしていた06年には、阪神の買収を狙った村上ファンドが提案した取締役候補に名を連ね、大騒ぎになった。阪神側は「玉井氏が村上ファンドについた」と猛反発。玉井氏は社外取締役を辞任した。「阪神を守るために(取締役候補を)受け入れたのに、あのとき阪神が私にとった態度は許せない」と後々まで語っている。

長男の典保社長が父親の益嗣氏を痛烈批判

 玉井氏の行動原理は明快。是は是、非は非というもの。そんな硬骨漢が、赤福の立て直しの指南役に招かれたのだ。典保氏は社内のコンプライアンス(法令順守)を徹底し、社員提案なども導入して企業風土を改善。作り置きできない生産ラインを導入するなど、「家業から企業」への理念で近代的な企業経営への転換を進めた。

 同族色を薄めて再建させようとする玉井氏に、伊勢商工会議所会頭を兼ねていたワンマンの益嗣氏は面白かろうはずがない。「新会長は飾りもの。自分が会長に復帰する」と広言しており、一波乱は免れないと見られていた。

 しばらく表に出なかった益嗣氏は着実に復権してきた。2013年までに赤福の持株会社で、一族の資産管理の濱田総業の社長に復帰し、赤福にも代表権のない取締役として返り咲いた。

 2013年には伊勢神宮の第62回式年遷宮が行われた。11月地元で開かれたトークショーに出演した益嗣氏は、伊勢は日本人の心のふるさとだから、「外国人にきてほしくない」と語り物議を醸した。

 赤福は典保社長名で「現取締役の不適切な発言」を詫び、「弊社の方針・見解とはまったく異なるもの」とするお知らせを出した。子が父を批判したのだ。

 ここで重要なことは、冒頭にあげた、暴力団との取引を「12年に確認した」というくだりだ。コンプライアンス(法令順守)の徹底を全面に掲げる社長・典保氏が許せるものではなかったろう。父子の間で、どんなやりとりがあったかは詳らかではないが、激しくやり合ったであろうことは想像がつく。

 地元の伊勢新聞は「地元経営者の間では、典保氏解任の噂が広まった」と書いた。

 2014年4月23日、赤福は臨時株主総会を開き、典保氏を退任させ、益嗣氏の妻である勝子(まさるこ)さんを後任の社長に選任した。

 暴力団との取引、それに続く不適切発言が父子の対立を招き、クーデターを誘発したいえるのではないか。

息子の指南役、玉井氏の追い落としがクーデターの狙い

 全国ブランドの赤福餅の製造元、赤福のお家騒動をマスコミは大々的に報じた。だが、マスコミが一行も書いていないことがある。益嗣氏が断行したクーデターの狙いである。

 典保社長の後ろ盾となっている玉井氏は益嗣氏にとって目の上のたんこぶである。益嗣氏は玉井氏を赤福から追い出すために、刺し違える挙に出たというのが真相である。

 赤福新社長の勝子さん名で出された「代表取締役の異動および取締役の異動に関するお知らせ」という文書がある。

 それによると、4月23日開催の臨時株主総会では、濱田典保、濱田益嗣、玉井英二など7人の取締役全員が退任した。ただし濱田典保氏は代表権のない会長に、4人の取締役は執行役員に就任。完全に退任したのは濱田益嗣氏と玉井英二氏の2人だけだ。

 新任取締役は濱田勝子ほか3人を選任。濱田勝子さんが代表取締役社母兼社長に就任した。「社母」とは初めて目にする肩書きだ。

 その結果から、臨時株主総会の狙いは読み取れる。益嗣氏が玉井氏を道連れにして辞めることで、玉井氏の影響力を排除したということだ。益嗣氏は取締役でなくなったが、代わりに妻を社長に据えた。実質的には益嗣氏が経営の実権を握った。

 それから3年。2017年11月24日、益嗣氏は赤福の代表取締役会長に復帰した。勝子さんは社長を続投。息子の前会長・典保氏は、顧問に追いやられた。

後継者は4人の孫から選ぶ

 益嗣氏は、日本経済新聞電子版(17年6月7日付)のインタビューで、後継者についてこう語っている。

 〈4人の男の孫がいる。その孫たちにそれぞれ会社を譲ろうと思って準備している。12代目は4人の孫の中から選びたい。家業だから浜田家のお城として、どれだけ大きくなっても会社を守ってほしい〉

 益嗣氏の一連の行動の意図が読み取れる。家業型経営を死守するということだ。長男の典保氏をクーデターで追い落としたのは、玉井氏に心酔した典保氏がコンプライアンスを錦の御旗に掲げ近代的経営に脱皮しようとしたからだ。先祖代々、引き継がれてきた家業は絶対に守らねばならない。

 益嗣氏の最後の仕事は、4人の孫から12代目当主を選ぶこと。1一代目の典保氏のように近代化の幻想にかぶれたら困る。家業を守るということが絶対条件だ。12代目当主を指名する直前に、益嗣氏は辞任に追い込まれた。

 益嗣氏の晩年は、賞味期限偽装問題、息子の社長追い落としのクーデター事件、そして今回の暴力団との取引問題など、暖簾を汚す出来事が相次いだ。

 赤福の名前は「赤心慶福(せきしんけいふく)」に由来する。人を憎んだり、ねたんだりという悪い心を伊勢神宮内宮の神域を流れる五十鈴川の水に流すと、子どものような素直な心(赤心)になり、他人の幸福を自分のことのように喜んであげられるという意味だ。

 赤福の不祥事の数々は、「赤心慶福」にほど遠かった。12代目となる当主は、赤福の中興の祖、ますさんの赤心を取り戻すことができるだろうか。

(了)
【森村 和男】

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