2024年05月19日( 日 )

「文化創造企業」グローバルエージェンツの新たなホテルブランド挑戦(4)

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 (株)グローバルエージェンツ(東京都渋谷区、山﨑剛代表)は2019年11月、神奈川県川崎市に新たなホテルブランド「slash(スラッシュ)川崎」を開業した。同社はこれまで5つのホテルブランドを展開し、北は北海道から南は沖縄まで、全国各地に13棟のホテルを運営。今回のホテルはユニークなネーミングもさることながら、街の様相とは一線を画すスタイリッシュな仕様とさまざまなデジタル体験が話題になっている。

朝食でデジタル体験??

 朝食では、ほかのホテルではできないデジタル体験ができるとうかがった。それを聞いて記者がまず思いついたのは、「朝起きたら、巨大スクリーンに美味しそうな食事の映像が流れ、食欲を掻き立てる」こと―

 勝手に推測したが、実際は違った。デジタル体験ができるのは朝食のオーダーの仕方。客室の扉に朝食オーダー用のQRコードが貼ってあり、これを読み取るとメニュー画面に移動。好みの料理をオーダーすることができる仕組みとなっている。

 ビュッフェではなくオーダー形式にすることによって食材ロスを削減でき、オーダーから出来上がりまでの時間を短縮することにもつながる。オーダーから提供までの時間は、その時の混雑状況などにもよるが、およそ5分から10分程度。注文してからの待ち時間を短縮し、出来立てを提供することを可能にするほか、待ち時間の間に身支度を整えたりするなどの時間に充てることができる。

朝食メニューの一例
朝食メニューの一例

 実際にiPhoneでオーダー後、身支度を整えてから1階に下りると、しばらくして目の前に爽やかな朝の光とともに、出来立ての朝食が用意されていた。

フレンチトースト

 人気メニューの「フレンチトースト」は、中まで味がしっかりと染み込み、見た目に以上にボリューミー。備え付けの蜂蜜をかけて口に運ぶと、口中にほのかな甘みが広がるのがわかった。ベーコンエッグは記者の好みである半熟、ベーコンもしっかり焼き目がついて、香ばしい香りが口中に広がる。脇役のサラダは新鮮で瑞々しく、ヨーグルトとフルーツも食後のお腹に程よく収まった。

 現代人にとって平日の朝は時間との闘いだ。記者は普段なかなかゆっくりと朝食を口にする機会がなく、どちらかといえば“ギリギリまで布団のなかに潜っていたい派”“パンかおにぎり1つで済ます派”なのだが…「非日常的な」時間をゆっくりと味わうのであれば、たまにはプチ贅沢してホテルで朝食を摂るのもいいかもしれないと思った。

群雄割拠のホテル業界でひときわ目立つ存在感

 デジタルと聞くと無機質なものを想像し、中にはアレルギー反応を示す方もいるかもしれないが、このホテルはそうではない。デジタルによって効率化・短縮化された部分を、同社が長年培ってきた「新たなコミュニティ形成」という部分に注力しようとしていることが伝わってくる。

 スタッフのおもてなしも心地よい。ホテルの雰囲気と同じく、どのスタッフも“スタイリッシュ”な印象だが、親切丁寧で雰囲気も明るく、こちらの会話にも気さくに話しかけてくれた。1人での宿泊だったが、滞在を満喫することができた。

 山﨑代表は、「これからもミレニアル世代が考える価値観に共感してもらうものを造っていく」と話し、「これまでさまざまなホテルブランドを展開してきて、色んな世代がホテル利用を楽しんでいただけるようになってきたのではないかと感じている。いつも同じホテルや安いホテルではなく、“たまにはホテル選びも変えていいかな?”と思えるような価値観を提供していきたい」と話した。

 ホテル業界は今まさに群雄割拠。インバウンド増加にともなう供給力不足ということもあり、現在は都市圏を中心に大小さまざまなホテルが乱立している。世の中に新しい価値を生み出し、文化をつくる「文化創造企業」として、同社が今後どんなホテルを提供していくのか、その動向が注目される。

(了)
【長谷川 大輔】

【slash(スラッシュ)川崎 施設概要】
開 業:2019年11月1日
所在地:神奈川県川崎市川崎区砂子2-9-7(JR各線川崎駅中央東口から徒歩5分)
客室数:95室
URL:https://www.slashhotels.com/

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