2024年04月18日( 木 )

新型肺炎緊急経済対策・消費税減税でも弱腰(守りの姿勢)~立憲民主党・枝野幸男代表の指導力不足(前)

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 後手後手の対応で批判噴出の安倍首相が抱きついてきた新型インフルエンザ等特措法で、立憲民主党の枝野幸男代表は「駆け引き、取り引きをしない」(3月5日の会見)と政治休戦、検査関連法(野党提出済)の“抱き合わせ成立”や非常事態宣言濫用の歯止めとなる国会事前承認などを勝ち取ることがないまま、3月13日の早期成立に協力した。他国に比べてケタ違いに少ない検査数など安倍政権の対応を是正する機会を逃してしまったのだ。

 結局、首相の”抱きつき作戦“は大成功。非常事態宣言への懸念などから共産党やれいわ新選組は反対、共同会派からも反対や欠席をする議員が相次いで野党のバラバラ感が露わになる一方、安倍首相は14日の会見で改正法成立をアピール、「やっている感」演出が功を奏して内閣支持率は前月比で8.7%(16日の共同通信)も上昇したのだ。

立憲民主党 枝野 幸男 代表

 本来なら枝野氏は「国難なのに協力しないのはケシカラン」といった批判を恐れずに、提出済の検査関連法の抱き合わせ成立・科学的根拠に基づく対応決定に不可欠な新たな専門家集団(日本版CDC)の創設・非常事態宣言濫用を防ぐ国会事前承認などの野党要求事項を安倍政権に突きつけるべきだったのだ。

 しかし実際には、「党首会談で話をしたので、あとは現場に任せています」(5日の会見)と国対に丸投げをして事足りた。抱きついてきた安倍首相にパンチを繰り出さず、守りに固めることに徹したに等しい。この戦闘力不足は、新型肺炎の緊急経済対策でも見て取れる。枝野氏は、国民民主党や共産党やれいわ新選組が提案する消費税減税に否定的で、その理由として「与党に財源論で攻められる」(2月16日の党大会=立憲フェス60分対話)ことをあげていたからだ。「(消費減税は)必ずしも消費にプラスの影響を与えない」と指摘したうえで枝野氏は、弊害もあると強調していたのだ。

「与党は『待っていた』というばかりに『財源をどうするのか』という攻撃を徹底的にやって来ます。これに対して説得力のある答えを出さなければ、旧民主党政権で財源問題が国民の不信を買ったので、かなり明確に財源問題を示さなければ、こっちが与党を攻めているのではなくて、攻められる選挙になる」

 続いて枝野氏は、所得に応じて還付金を増やす「給付付税額控除制度」を代替案として示してもいた。

「(政権交代後に)財源が確保できた時に、消費税を下げるお金に全部使うのか、低所得者の皆さまに給付付税額控除、所得の低い人にそのお金を給付(還付)してしまう。傾斜配分をして所得の低い人にたくさん使うことと、一律に高額所得者の税率が下がることとどちらがいいのかの選択を問いたいと思う」。

国民民主党 玉木 雄一郎 代表

 約2週間後の3月5日の会見でも枝野氏は、フリーの田中龍作氏の消費減税に関する質問に「現時点では立憲フェスで申し上げたことがすべて」と回答。そこで、私は新型肺炎感染拡大に絡めて聞いてみた。

「新型肺炎の影響がますます大きくなっている現在、立憲フェスから考えを変えていないのか。枝野さんが高く評価する田中信一郎さんの本(注)には、消費税については8%減税を検討すべきと書いてあるが、これと若干食い違っているのではないか。玉木(雄一郎)代表は『家計減税』ということで実質的な消費税5%減税を提唱しているが、新型肺炎を受けて野党間で話し合いをもたれる可能性があるのか」。

※『政権交代が必要なのは、総理が嫌いだからじゃない』(現代書館)刊行記念 枝野幸男さん×田中信一郎さんトークイベントが開かれた1月8日にも、両党の共闘は可能との思いを強くした。この本について枝野氏は冒頭で、「私が言ってきたことと重なり合っている田中さんの話が書籍化されることで、枝野氏の政策を「『田中さんの話ですよ』と15秒で語れるようになる」と絶賛。ほぼ「枝野氏の政策=田中氏の本」という関係のようなのだが、この本の89ページには消費税について「2019年10月の消費増税には、次の5つの問題があり、いったん8%に戻すことを検討すべきでしょう」と提案、その問題点の1つが「(4)総合課税の導入や金融所得課税の強化を優先すべきでした」と書いていたのだ。この「総合課税の導入や金融所得課税の強化」こそ、枝野氏が先の演説で語り、山本氏も訴えていたことでもあったのだ。
 大企業や富裕層の自己利益追及が国民全体に波及していくとする安倍政権に対して、立憲とれいわが共闘するのか同士討ちをするのかが、次期総選挙の結果を左右する一大ポイントになっているのだ。

(つづく)

【ジャーナリスト/横田 一】

(後)

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