2024年04月20日( 土 )

除菌率99.99%以上の高機能電解イオンミスト、ワンテンスのIELU~東京大学らと共同開発

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安全と清潔の両立

 インフルエンザ、新型コロナウイルスなどが世界各国で猛威を振るうなか、人々の「除菌」への意識が高まり続けている。私たちの生活には、ノロウイルスや大腸菌、サルモネラ菌など実に多くのウイルスが蔓延しており、「手洗い、うがい」を基本に消毒作業が行われてきた。とくに我が国日本では、諸外国に比べ、国民性からか清潔さに定評がある。常に清潔さを求めている日本で、除菌率99.99%という驚くべき効果が認められた”飲めるほど安全な水”が生まれた。2019年2月に創業したばかりのスタートアップ企業、(株)ワンテンスが製造・販売を行うIELUだ。

 このIELUは東京大学をはじめとした医療機関・研究機関と共同開発され、(1)アルコール以上の除菌力(2)清涼飲料水に認定される安全性(3)皮膚トリートメント効果が実証されるなどの驚くべき効果をもっている。

きっかけは医療分野

左から田辺太一氏、永田寛明氏、片山貴嗣氏

 「もともとは医療現場における生存率を高めるために生まれたものです」。同社創業者の1人、COO片山貴嗣氏はこう話す。片山氏の実父が経営していた(株)レドックスは、30年以上の研究を重ねて特許電解システム(特許5253483)を開発し、「高機能電解イオンミスト」を生成することに成功した。これがのちのIELUとなる。

 片山氏は、学生時代からの知人である永田寛明氏(ワンテンスCEO)、田辺太一氏(同社CMO)とともに高機能電解イオンミストを活用した新規事業創出を目的に同社を共同経営として設立。高機能電解イオンミストは、MRSA感染者の心臓外科手術において、閉胸する前に皮膚表面洗浄と体内洗浄をする必要がある。

 これまで同手術において、体内洗浄に生理食塩水を用いた場合の術後生存率は31%だった。一方、IELUで体内を除菌洗浄しながら手術することにより、生存率は90%までに高まった。この臨床結果は、02年9月創傷治癒世界会議、03年3月世界水フォーラムで発表され注目された。

 IELUの除菌効果は東京大学、(株)江東微生物研究所、(株)ユニオンバイテック、東京医科歯科大学などの検査機関によって実証されたエビデンスがあり(図1参照)、アルコールですら不活性できないノンエンベロープウィルスにも高い除菌効果が認められている。

 19年12月時点ですでに、医療・介護分野において37施設で導入されており、その用途・目的が感染症対策、治療、加湿器、口腔ケアと幅広いのも特長の1つだ。

多くの著名団体に注目される機能性

STELLAに導入されている専用加湿器

 驚異の効果を発揮する同社の高機能電解水に注目する企業は多く、すでに各分野における著名な企業からコラボ商品のオファーが舞いこみ、定期契約締結などが行われている。「工場をフル稼働で回していますが、供給も追い付いていない。生産性の向上にむけてさまざまな手を打っているところ」と永田氏は嬉しい悲鳴をあげる。

 たとえば「空気をデザインする」をブランドステートメントに掲げ、デザイン性の高い家電商品が高所得者層に定評のある(株)カドー。ワンテンスは同社と加湿器専用のコラボ商品として「Purio」を開発。加湿器の給水タンクに高機能電解水(約10倍に希釈して使用も可能)を入れることで、加湿器の問題の1つとなっていたフィルター部分の洗浄・除菌をするとともに、高い加湿性・除菌性をもつミストで部屋一帯を満たすことができる。

 また、「世界で生きる人を育てる」Missonのもと、英語教育など先進的教育を実施しているSTELLA保育園では、全園でのIELU導入検証を経て導入が決定している。検証では、インフルエンザに感染する園児が圧倒的に少なくなったと高い評価を得た。同園を経営する(株)クラッシーからは、「安全は義務ではなく付加価値、本気で安心安全対策に取り組んできたからこそ、飲めるほどの安全性と高い除菌効果を併せもつIELUの採用に迷いはなかった」とされている。

みやき町で行われた協定調印式の様子

 多くの企業が導入を決定するなか、注目されているのは民間企業だけではない。たとえば、先日報じた佐賀県みやき町だ。みやき町では、同社、カドーとともに3月13日に「感染症予防等に関する協定」に調印した。同町は「健幸長寿のまちづくり」や予防医療の推進を図っており、インフルエンザなど一般的な感染症の拡大による学級封鎖対策として、昨年秋から両社と協議を進め、庁舎内に導入していた。今般の新型コロナウイルスの感染拡大を受け、両社の製品を同町の小中学校などに設置することを決めた。

 このように1年2カ月と創業から日が浅いにもかかわらず、多くの企業、自治体、医療機関から高い評価を受けている同社。「根底にあるのは、やはり人びとの生活を守ることに帰結する」と創業者3名は口をそろえる。「今までは限られた医療現場でしか使われていなかったIELUが、いつかは蛇口をひねれば出てくる世の中にしたい」と大きなビジョンを掲げる同社のあゆみは、ビジョンの実現に向けて確実に、かつ急速に進んでいる。それは彼らの理念に対する真摯な取り組み、商品力、そしていち早く同社のビジョンに賛同する団体があるからにほかならない。スタートアップ企業として破竹の勢いをもつ同社の今後に注目が集まっている。

【麓 由哉】

(株)ワンテンス:https://www.onetenth.co.jp

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