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2020年10月17日 07:00

新型コロナ、インフルエンザの救世主はワクチンより「免疫力」(後)

七合診療所 所長 本間 真二郎 氏

世界で開発が進む新型コロナのワクチン。米国の国立衛生研究所(NIH)でワクチンの研究に携わっていた七合診療所所長・本間真二郎氏は、「重症化のリスクがない場合には、ワクチンの接種は効果とリスクを天秤にかけて個人の判断にゆだねるべきではないか。普段の生活のなかで人が本来もつ免疫力、治癒力を高めることが重要だ」と語る。

インフルエンザワクチンの効果

七合診療所

 これからの秋、冬に流行が予想されるインフルエンザ。インフルエンザワクチンの効果を調査した研究論文では、ワクチンは「効果が高い」とする論文から、「ほとんど効果はない」とする論文まで、その幅は大きい。「ワクチンは効果があるのか?」についてもさまざまな議論や主張があり、論文の著者や査定者は、自分の見方や社会的に置かれた立場から判断して結論を出している。本間氏は「このデータが本当に正しいかは各個人の判断による、というのが現実のところだ。インフルエンザの約10年間の研究結果を要約したコクランレビュー、JAMAなどを重要視しているが、それらのデータによると、インフルエンザの治療薬やワクチンは、入院日数や重症化率にほとんど効果がないとされている」と話す。

 毎年、「A香港型」など流行型が変わるインフルエンザは、遺伝子で見ると数万以上の種類があり、「ある人に感染して次の人にうつるまでにその種類が変わる(変異)可能性があるとも言われている。ワクチンがターゲットとしていたウイルスが変異してしまうと、ワクチンは効かなくなる」と本間氏はいう。では、新型コロナやインフルエンザに対して、どう対策すべきか。

免疫力、治癒力を高める

 本間氏は、「まず、社会をおおっている新型コロナの恐怖を払拭することが不可欠。普段の生活のなかで免疫力、自然治癒力を上げることがカギになる。人が本来もっている免疫力を高めるためには、自然に沿った生活をおくることが大切。生活の何か1つを変えたら、免疫力が高まるというものではない」と語る。

 「自然派医師」である本間氏は、自然にめぐまれた栃木県那須烏山市の七合診療所で診療に従事、田畑を耕して無農薬の野菜をつくるだけでなく、味噌、醤油、酢などの調味料もすべて手づくりしているという。その土地でつくられたものを食べると健康でいられるという「身土不二」の考え方からだが、その土地の麹菌などの微生物でつくられた発酵食品が、免疫に大切な役割をする腸内細菌のバランスをもっとも健康に整えてくれるという。

 「野菜だけでなく、微生物まで土地のものを摂る」という話を初めて聞いた筆者は驚いたが、なんと田んぼや畑でつくって天日干しにした作物から発酵のもとになる麹菌を入手し、味噌や醤油などを醸造しているという。味噌・醤油を手づくりすることはできても、発酵のもとになる麹菌の入手まで行うのは専門家ならでは。興味があっても素人がすぐに始められるものではない気がしたが、できることから取り入れたい。

 たとえば、食事では食品添加物や放射能などに気をつけること、地産地消のものを食べることなどがある。農業をして自然に触れるのもいい。日光も、紫外線で健康に害があるといわれるが、日光にあまり当たらないのも健康には良くないという。なかでも、腸内細菌のバランスを整えることを選ぶのがもっとも大切だという。前述のように腸内細菌は、全身の健康に大きく関わっているためだ。

 腸のなかは目に見えないため想像しにくいが、健康に大きな役割をはたす腸内細菌を傷つけないか、元気になるかで判断する。食事や生活だけでなく、メンタルも大きく影響する。便秘や下痢などのお腹の調子を毎日把握すると、体に合う食べものや生活スタイルをつかみやすい。また、35℃台の低体温になると免疫力が落ち、血流が悪くなるため、体の「冷え」は防ぐ。

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ウイルス風邪を治すのは自己治癒力

 本間氏は「風邪をひくと処方される抗生物質は、風邪のうち約5%を占める細菌の風邪には効くが、残りの約95%のウイルスの風邪には効かない。解熱剤は熱を下げる薬、消炎剤は炎症を抑えて咳や鼻水をやわらげる薬であり、ウイルスの風邪から回復させているのは、体がもつ自己治癒力」と語る。

コロナ禍で懸念されるメンタルの害

 本間氏は、「コロナ禍で経済がダメージを受けているのはもちろんだが、『コロナうつ』という言葉があるように多くの人がメンタルに害を受けている。『病は気から』といわれるように、心が調子を崩すと病気になる。食事や生活も健康に大きな影響をおよぼすが、心の調子がそれ以上に体調を決めていると言っても過言ではない。コロナ禍で、今後は心や体の病気という害が大きく出ることを懸念している」という。

 コロナ禍によるさまざまな自粛で暮らし方が制限され、本人が気づかないうちにメンタルに大きな負担がかかっている。自分の価値観で判断する「自分軸」がないと、他の人が何をしているかという「他者軸」が基準になり、自分の体の健康のために本当に必要かという基準からずれてしまう。

 「現代人は自分が感じることや価値観を置き去りにして、人と比べること、『他者軸』に関心を向きすぎではないか。たとえば、ワクチンが必要か、体重は正常か、発達障害かどうかも、何を基準として判断するかで変わる。新型コロナやインフルエンザウイルスは自分の外にあるものだが、その解決策は『自分軸』を取り戻し、自分の免疫力、自然治癒力を上げることだ」と本間氏は語った。

(了)
【石井 ゆかり】

<プロフィール>
本間 真二郎(ほんま・しんじろう)

1993年札幌医科大学を卒業。全道の中核病院・地方病院に小児科医として勤務。2001年米国、国立衛生研究所(NIH)に留学。専門はウイルス学・ワクチン学で、主にノロウイルス、ロタウイルスの研究に携わる。05年帰国。札幌医科大学新生児集中治療室(NICU)室長を経て、09年に退職。09年自然派の医療を実践するために、栃木県那須烏山市に移住。現在は、地域に密着した医療に携わりながら、プライベートでは「農的生活」を送っている。 皆で米づくりを、個人的には自然栽培で季節の野菜と穀物を育て、調味料を自給自足。著書に『病気にならない暮らし事典』、『病気にならない食と暮らし』(セブン&アイ出版)、『自然に沿った子どもとの暮らし・体・心のこと大全』(大和書房)『感染を恐れない暮らし方 新型コロナからあなたと家族を守る医食住50の工夫』(講談社)など。

 

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