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2020年11月12日 11:10

ドンキ・大原孝治前社長、株購入の不正推奨疑惑で判明~突然の退任劇の真相(後)

 「ドンキ前社長、株購入を知人へ不正推奨疑惑」の報道が飛び込んできた。旧(株)ドンキホーテホールディングス(以下、ドンキHD)の大原孝治前社長が2019年9月に突然、退任したことについて、理由が明らかにされていなかったが、今回の報道でこの疑惑が退任の理由であったのかと得心がいった。

安田氏は生え抜きの若手に経営を委譲

 ドンキHDには、安田氏がつくった「権限委譲」の伝統がある。安田氏は、営業に関する権限を各店長に委譲。各店舗の店長は、商品の仕入れから販売まで全責任をもって運営する。結果が出たときには必ず昇給・昇進し、ダメなときには減給・減給するという信賞必罰の人事評価である。この手法で若手の店長が多数、誕生した。

 2005年、安田氏の引責辞任を受けて、後任のドン・キホーテ社長に、成沢潤治氏が就いた。1992年に入社した生え抜きであり、現場で実績を上げ、頭角を現した若手幹部だ。成沢氏は2008年から、買収した総合スーパー長崎屋の社長を兼任。大型ディスカウント店「MEGAドン・キホーテ」に業態転転換し、立て直したことで知られる。

 ところが、13年4月、成沢氏は、悪化した持病の治療に専念するため辞任を申し出た。緊急事態を受け、創業者の安田会長がドンキHDの社長に復帰。事業会社のドン・キホーテの社長に大原氏が就いた。

 大原氏は1993年入社の生え抜きである。売り場の販売員として採用された大原氏は、その商才を認められ、入社から2年の間に、店長として木更津店、幕張店、市原店を立ち上げた。その後、実績を上げ、出世階段を駆け上がってきた。
 その1年後の2014年、ドンキHD社長に大原氏が昇格。安田氏は会長兼CEOとなった。さらに翌15年6月に安田氏は会長兼CEOを退任した。

 安田氏は「かねてから満65歳までの引退を決めていた。当初の計画から1年遅れになるが、気力、体力ともに十分のうちに引退することが、ドンキの長期繁栄につながる絶対条件だ」と語り、グループ全体の創業会長兼最高顧問に就き、海外事業に専念するとした。

 大原氏が名実ともに、ドンキのトップに就いた。同氏の経営者としての最大の功績は、在任中にグループの売上が1兆円を超える企業に成長させたこと。もう1つは、ユニー・ファミマHDと資本・業務提携を結び、総合スーパー「ユニー」全株式を取得して、傘下に収めたこと。長崎屋のようにユニーをドンキ化し、大型ディスカウント店「MEGAドン・キホーテUNY」に業態転換させ再生させた。

 ユニー・ファミマHDとドンキHDの提携発表の席上、大原社長は「総合スーパー、ディスカウントストア、コンビニの3業態を持つ流通グループになる」と高揚感にあふれていた。だが、資本提携の過程で、株購入不正推奨により足をすくわれた。 

PPIHへの社名変更は第2の創業

 ユニー・ファミマHDとドンキHDの提携をまとめたのは、オーナーである安田氏であることはいうまでもない。ただ、安田氏は表に出なかっただけだ。安田氏はどのような意図から提携を決定したのか。

 安田氏はPPIHへの社名変更を、第2の創業期と位置付けた。今後、日本の国内の消費市場は、人口構造的にも経済構造的にも、縮小していくのは明らかである。今、何をしなければならないかを突き詰めた結果、安田氏自身に適した役回りが、海外での起業であった。

 日本を本拠地としつつ、環太平洋(パン・パシフィック)にドメイン(拠点)を拡大した戦略展開をしていかないかぎり、成長はありえない。そうした危機感を、逆にチャンスに変えようというのが、社名であるPPIHに込めた強い想いだという。

 17年にシンガポールにまったく新しいコンセプトのジャパンブランド「DON DON DONKI」の1号店を開業。ドンキ名物の焼き芋や焼きとうもろこしがシンガポールの消費者の間でちょっとしたブームになった。現在、シンガポール7店舗、香港3店舗、バンコクに2店舗を展開。今後、マレーシア、台湾、グアムなどへの出店を予定しており、安田氏は環太平洋におけるPPIHグループの成長の総指揮を執っている。

事業を存続させるために伊藤忠グループに加入

 安田氏が第2の創業に込めた意味は、もう1つあった。伊藤忠商事グループに加わることである。18年から伊藤忠商事(株)、ユニー・ファミマHD(現・ファミリーマート)、ドンキHD(現・PPIH)の3社間で、資本関係の組み換えが行われた。ドンキHD(現・PPIH)は、ユニー・ファミマHD(現・ファミリーマート)からGMS(総合スーパー)のユニーの株式を買い取り、完全子会社化した。

 ユニー・ファミマHDは、見返りにPPIHに出資し、現在、ファミマがPPIHの株式の10.1%をもつ。伊藤忠商事は8月、ファミマ株のTOB(株式公開買い付け)が成立し、完全子会社化した。伊藤忠は完全子会社化するファミマを通じて、PPIHを持ち分法適用会社に組み入れるという構図だ。

 今回の資本提携で、業界を驚かせたのは、独立路線を堅持すると見られていた安田氏がファミマの持ち分法適用会社になることを受け入れたことだ。

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 ほとんどの創業者は終身現役であるため、晩年にもっとも頭を悩ます問題は、誰に事業を継がせるかということだ。安田氏は1つの解答を見つけた。伊藤忠グループの傘下に入るという選択だ。安田氏自身は早晩引退するが、安田氏がいなくなっても、事業は続けていかねばならない。伊藤忠グループに加わることで事業を続けていくということである。

(了)

【森村 和男】

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