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2020年11月26日 12:12

アメリカ大統領選挙後の世界秩序を模索する!(2)

 「国際アジア共同体学会(ISAC)年次大会」が11月7日(土)、「ポスト・コロナを生きる日本の道」をメインテーマとして、東京・日比谷の現地会場とオンラインのハイブリッド形式で開催された。
同大会の後援者は、朝日新聞東京本社、(公社)日本中国友好協会、共催者は(一社)アジア連合大学院機構、日本ビジネスインテリジェンス協会、日本華人教授会議。

【第2部】

 下記2名が「岡倉天心記念賞(※1)」の受賞者として選出された。

一帯一路構想を主軸に、欧亜・ユーラシア地域協力統合を展開

(1)「岡倉天心国際賞」
<受賞者>
 ケント・カルダー氏(ジョンズホプキンズ大学SAIS(高等国際関係大学院)副学長・ライシャワー東アジア研究所所長)

<受賞理由>
 カルダー博士はハーバード大学大学院博士課程で元駐日大使を兼任されたライシャワー博士の指導を受けた後、長年、日米外交関係に関する研究啓蒙活動に従事。プリンストン大学教授、駐日米国大使補佐官を含め、官民の外交活動を通じ、広くアジア太平洋地域の平和と国際協力に従事してきた。2014年に米国における日本研究の発展および相互理解の促進に寄与した功績が認められ、旭日中綬章を受賞。

<受賞作品>
『スーパー大陸―ユーラシアの地政学―』(潮出版社、杉田弘毅監訳)

 この作品は、20世紀「パクス・アメリカーナ」終焉後の、一帯一路構想を主軸に展開し始めた、欧亜・ユーラシア地域協力統合の動きを実証的かつ論理的に分析し追跡した、卓越した研究著作。英語版は、英国フィナンシャルタイムズ紙の19年政治経済部門のベスト書籍の1冊に撰ばれている。

国際政治でどうやって平和を守り国家の繁栄を支えるのか

(2)「岡倉天心学術賞」
<受賞者>
 小原雅博氏(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

<受賞理由>
 『コロナの衝撃―感染爆発で世界はどうなる?』(ディスカヴァー携書)

 コロナ問題に関して、多くの著作が出版されるなか、小原博士はこの問題を歴史的な俯瞰図のなかに位置づけて解析し、多くの文学作品や歴史的故事を引用しながら、今回のコロナ禍のもつ特異性を分析し、21世紀グローバル化の意味を明らかにし、具体的な政策の提言におよんだ。

 小原教授は、外務省上海総領事などを歴任された外交官出身の学者である。現役外交官時代、経団連代表団を引率した現地調査を基に、アジア地域統合へ参加・協力を説いた先端的で優れた政策研究書『東アジア共同体―強大化する中国と日本の戦略』(日本経済新聞出版社)を著し、「アジアは1つ」の政策理念の指南役を演じてきた。

【授賞式】進藤榮一 ISAC会長(向かって左)、小原雅博氏

「安全か自由か、健康か経済か」は、トレードオフの関係

 小原氏は、受賞の喜びを以下のように語った。

小原 雅博 氏

 名誉ある賞をいただき、とても嬉しく感じます。今は東京大学で「現代外交」を教えていますが、前職は外交官でした。国際政治のなかで、「どうやって平和を守り、国家の繁栄を支えていくか」という大きなテーマに学生と共に日々、挑戦しています。外務省における35年の実学経験、大学に移ってからの理論研究を融合して、新天地を開拓したいという野心を抱いてから約6年が経過しました。

 しかし、その答えはまだ見つかっていません。今回のコロナ禍が世界に与えた影響はとても大きく多面的で、そのなかには本質的で深い問題が隠れている気がします。解答のないテーマではありますが、自分の考えを少しまとめておきたい感じ、本書を著しました。

 出版後まもなく、多くのメディアで取り上げられ、新聞に書評も掲載されました。帯に書かれている「安全か自由か、健康か経済か」(100年に一度の危機の本質)が、本書の内容をよく表しています。

物事は「ある1つの問題を解決しようとすると、もう1つの問題が深刻化してしまう」というトレードオフの関係にあり、コロナ禍はこの厄介な問題を人類に対して問いかけています。

外交とは、自分を相手の立場に置いて考えてみることで成立

 私は、書評でも取り上げられましたが、2つの点に注目しています。

 1つは「安全と自由の両立」、すなわち自由社会での責任を自覚し、安全のために行動することです。

もう1つは「想像力」です。想像力は国際政治を考えるうえで重要な要素です。今の国際政治では、米国のトランプ大統領の「アメリカファースト」がその典型ですが、ナショナリスティックになって、国益のみを優先する傾向があります。しかし、外交は、基本的に「自分を相手の立場に置いて考えてみない限り」成り立つものではありません。

 「キューバ危機(※2)」を思い出していただけるとよく理解できます。当時、人類が「核戦争」を避けることができたのは、やはりアメリカのケネディ大統領が、ソ連のフルシチョフ書記長の立場に自分を置き、「フルシチョフ書記長は何を考え、何を求めているのか」という想像力を働かせた結果だと考えています。

 外交は国と国との関係ですが、権力を持つ指導者同士のコミュニケーションに尽きるともいえます。国の指導者が相手国にメッセージを出すときは、「このメッセージを出した場合、相手はどんな反応をするか」を十分に考えなければいけません。ここでは「利他心」(自分の利害はさておき、他人に利益となるよう図る心)も重要な要素になるのです。

強制ではなく、地道な自発的な協力の大切さを説く

 しかし現実に目を向けると、国際政治やコロナ騒動でも、トランプ大統領は新型コロナウイルスを「武漢ウイルス」と呼んで中国に責任を転嫁し、選挙民にアピールして大統領選を優位に導こうとしました。一方、中国も「戦狼外交」(攻撃的な外交スタイル)という言葉に象徴されるように、非常に激しい言葉で自国の「核心的利益」を追及、応酬して緊張感を高めました。

 最後に、コロナ禍に関して、20年3月20日に行われたドイツのメルケル首相の演説を下記に紹介します。

 「私たちは民主国家にいます。強制されることなく、知識を共有し、協力し合って生活しています。これは歴史的な課題であり、協力なしでは達成できません。(中略)私たちは心から理性をもって行動することで人命が助けられることを示さなければなりません。例外なしに、1人ひとりが私たちすべてに関わってくるのです。」

 メルケル首相は演説のなかで、強制ではなく、地道な自発的な協力の大切さを説いています。

(つづく)

【金木 亮憲】

※1:国際アジア共同体学会では13年以来毎年、年次大会開催時に表彰される。同賞は学会の理念「アジアは1つ」を代表する明治の国際的美術家にして思想家の岡倉天心の思想を記念して設定された。アジア地域協力や地域共同体構築に関する優れた国際活動、ならびに学術出版に対して与えられる。 ^

※2:キューバにソ連軍のミサイル基地が建設中であることに抗議して、1962年10月22日以降、米国が戦艦と戦闘機でキューバを海上封鎖した事件。米国大統領J.F.ケネディは、キューバから攻撃があった場合にはソ連によるものとみなして報復するとした。ソ連はこれに対してキューバへの支援を強化、ミサイル基地建設もその一環であった。水面下の交渉をへて、同月28日にソ連のフルシチョフ書記長がミサイル撤去を約束し、海上封鎖は解除された。米ソの核戦争の脅威が現実に近づいた一瞬として、冷戦時代の軍事的緊張を象徴する事件となった。 ^

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