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2021年01月25日 07:00

政府は財政規律を凍結し積極財政を展開せよ(後)

京都大学大学院工学研究科 教授 
藤井 聡 氏

 菅政権は73兆円規模の経済政策を決定し、これに基づいて3次補正予算を実施することを発表した。1次補正、2次補正も同規模の大きな対策が図られてきたということで、これを見て、「菅政権は本気で日本のために頑張ってくれている」という印象をもった国民もおられるかもしれない。しかし、実態はその正反対だ。

菅政権は実質的な増税を行おうとしている

 それどころか、この経済対策と平行して進められたのが、庶民からカネを巻き上げる「社会保障制度改革」であった。

 菅内閣は実に驚くべきことに、このコロナ禍状況において、(年収200万円以上の)75歳以上の医療費窓口負担が、これまで1割だったところを「2割」に引き上げる制度改革を決定したのである。さらには、現在支給されている児童手当を縮小する改革もまた合わせて検討している。

 これは単なる国民負担増であり、実質上の増税だ。しかもその対象は、高齢者だけでなく若年層も含めた双方同時になることは確実で、幅広い層の庶民からカネを巻き上げる実質上の増税を行おうとしているわけだ。

菅義偉首相
菅 義偉 首相

 そして、その一方で、「デジタル」や「グリーン」「グローバル」などのカタカタビジネスの外国人も含めた経営者や資本家たちにとっての儲け話を10兆円以上のカネを使って進めようとしている。これの一体どこが「国民のために働く内閣」なのだろうか? 菅内閣は今、この言葉をスローガンに掲げているのだが、「たちの悪い冗談」でしかないと言わざるを得ない。もう鼻で笑わざるを得ないような話なわけだが、さすがにこれだけあからさまな利益誘導をしていると、支持率は急落しているのが実情のようだ。しかしそれでもなお、いまだに40%~50%程度もの国民が支持しているというのだから、国民もエラくなめられたものだと言わざるを得ない。

今なすべきは財政規律凍結と消費減税、欧米並の所得補償

 以上、本稿では、菅内閣が行おうとしている経済政策が国民を窮状から救い出すためのものというよりむしろ、大企業の利益を優先したものである内容となっていることを述べた。誠に遺憾な状況であるが、今の菅内閣の姿勢はさておき、本来必要なものが何なのかを最後に明らかにしておこう。

 今行うべき最優先事項は、2019年10月に10%に増税された消費税を一時的に凍結することだ。そのうえで、コロナ不況が収束するまで、国民に対して欧米並の給付金を支給することである。GoToトラベルやGoToイートといった小規模の補助だけで日本国民の困窮化を食い止めることなど不可能であることは明らかだ。

 そして最後に、これらを実現せしめるために絶対的に不可欠なのが、財政規律の一時凍結だ。すなわち、日本政府が今掲げている25年度におけるプライマリーバランス黒字化目標を一端停止することである。菅政権がこれを実現する可能性は、筆者個人は極めて低いと感じているが、仮にそれを実現するというのなら、筆者はもちろん大いに支持したい。一方で、やはり遺憾ながら「やらない」というのであれば、政権の担い手が、国民を救うために必要な経済政策を行う政治家たちに変わることを企図しなければならなくなる。

 いずれにせよ、もはや事ここに至れば、日本を救う政治が展開される近未来の実現をあらゆる可能性を探りながら企図するほかに、我々日本国民の生き残る道は残されてはいないのである。それほどに今、日本経済は文字通りの「崖っぷち」に立っている。

(了)


<PROFILE>
藤井 聡

1968年生まれ、奈良県生駒市出身。京都大学工学部土木工学科卒。93年京都大学大学院工学研究科修士課程土木工学専攻修了。93年京都大学工学部助手、98年に京都大学博士(工学)取得。2000年京都大学大学院工学研究科助教授、02年東京工業大学大学院理工学研究科助教授、06年東京工業大学大学院理工学研究科教授を経て、09年に京都大学大学院工学研究科(都市社会工学専攻)教授に就任した。11年京都大学レジリエンス研究ユニット長、12年に京都大学理事補、内閣官房参与を歴任。『表現者クライテリオン』編集長。

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