2024年04月18日( 木 )

【熊本】“バス王国”熊本市で共同経営や市街地の循環バス

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 熊本市で公共交通機関の担い手、バスに焦点を当てた試みが相次いでいる。バス会社5社が4月1日、路線バスの便数や時間帯を調整する全国初の共同経営に着手。3日には熊本市の主導で、市内の拠点3カ所を回る循環バスの社会実験が始まった。

 バス会社5社による路線バスの共同経営は、経営難のバス事業者救済を目的にする独禁特例法適用の全国第1号。九州産交バス、産交バス、熊本電気鉄道、熊本バス、熊本都市バスが、熊本市と近郊市町を結ぶ路線のうち2社が競合する4区間を対象に、事前調整で需要に見合った便数に減便。ダイヤを5分から20分の等間隔にして効率運行を目指す。

 共同経営は、国交省の認可を得ており、期間は4月1日から2024年3月31日までの3年間。計画では、サービス水準を低下させずに3年間で4区間合わせて約9,100万円の収支改善効果を見込む。運転手や車両にも“余裕”が生まれて、別の路線に回すことも可能になるという。

 さらに熊本市内を走る市電との競合区間でも、バス会社と同市交通局が共同経営を検討している。市電はバスと違って街のシンボル的な存在。バス会社同士の協議より難航しそうだが、同市交通政策課は「何とか話し合いをまとめて、次のステップに進みたい」と意欲的だ。

 一方、熊本市内の3拠点を走る循環バス「まちなかループバス」は、市が音頭を取った1年間の社会実験。九州産交バスと熊本電気鉄道の2社が協力する。土・日・祝日に限定して、バス5台で午前9時半から午後6時半まで15分間隔で運行する。市は約2,000万円の運行補助金を21年度当初予算で手当てした。

 コースは熊本駅前発→桜町バスターミナル→通町筋→熊本駅前着。1週する時間は30分程度。料金は均一150円(小児80円)。

 循環バス導入の背景には、熊本市の拠点が増えたことがある。九州新幹線の全線開業、その後の鹿児島・豊肥線の高架化。併せて熊本駅周辺の市街地再開発も進み、JR九州が熊本駅ビルの増改築をはじめ、ホテル併設の商業ビル、オフィスビル、分譲マンションなどを相次ぎ建設。熊本駅と周辺エリアが一大拠点になった。

 熊本地震の復興と合わせた市街地再開発が19年9月に完成した熊本城近くの「桜町地区」、随一の繁華街「通町筋」と合わせると拠点は3つ。このうち熊本駅エリアは、市外から人の流入が見込める半面、通町筋との距離は2.5kmとやや離れている。循環バスは、3つの拠点の回遊性を高めて熊本駅エリアの流入客を通町筋や桜町地区に引き込む狙いがある。

 熊本市は、「バス王国」だった半面、バスの使い方が決してうまくはなかった。それが、競合するバス会社による路線バスの共同経営や市街地の循環バス運行といった新たなバスの使用法を模索する。公共交通機関としてのバスの維持は、全国の地方都市共通の悩み。熊本の試みは、バス再生への1つの道筋を示している。

熊本市が社会実験として始めた循環バス「まちなかループバス」の運行ルート=熊本市HPを抜粋
熊本市が社会実験として始めた循環バス「まちなかループバス」の運行ルート=熊本市HPを抜粋

【南里 秀之】

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