2024年04月26日( 金 )

ミャンマー軍事クーデター、日本政府が沈黙する陰に日本企業と軍の深いつながり(6)

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(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーン理事長
CMCオフィス(株)代表取締役 大谷 賢二 氏

 2月1日のミャンマー国軍によるクーデターは、昨年のミャンマー連邦議会の総選挙で、アウンサン・スーチー氏が率いる国民民主連盟(NLD)が改選議席の8割以上を得たことに恐れをなした国軍が、憲法で保障された権限を発動したものだ。
 国連や欧米各国は、ミャンマー軍に対して、市民の殺りく停止、スーチー女史などの逮捕者の即時釈放、民主化の回復を求めて厳しい対応をしているが、日本は毅然とした態度をみせていない。そのような対応しかできない背景には、日本企業とミャンマー軍との深いつながりがあった。

(5)ミャンマー郵電公社と共同事業を行うKDDI、住友商事

ミャンマーで事業を行う住友商事、KDDI(大谷氏提供)
ミャンマーで事業を行う住友商事、KDDI(大谷氏提供)

 MPT(通信・情報技術省ミャンマー郵電公社)は130年以上もの間、ミャンマーの電気通信産業の発展を勝ち取っているリーディングカンパニーであり、固定電話や携帯電話サービスを個人、企業向けに提供している。

 KDDIと住友商事は、MPTと共同で通信事業を行ってきた。両者が設立したKDDI Summit Global Myanmar Co.,Ltd.(KSGMミャンマー法人)とMPTが、14年7月に共同事業に関する契約を締結している。MPTはクーデター以前から政府による検閲に加担していることが問題視されていたが、クーデター以降のミャンマー国軍によるインターネットや通信に関する遮断命令が表現の自由など基本的人権を侵害するものとして、企業としての責任が問われている。

ミャンマーで事業を行う住友商事、KDDIへの抗議活動(大谷氏提供)
ミャンマーで事業を行う住友商事、KDDIへの抗議活動(大谷氏提供)

ミャンマー政府、国軍による通信の制限

 クーデター以前のミャンマー政府による検閲International Media Support(IMS)によれば、ミャンマー政府は20年3月に電気通信会社に対して221のウェブページをブロックすることを命じた。政府はこのような方針を公にしておらず、またどのサイトが対象となったのかというリストも公開されていない。

 同年3月26日および27日のMyanmar NowやFrontierによる発表では、4つの電気通信企業が同月21日時点で、同じ方針を受け取っていた。同月30日には、Telenor Myanmarは運輸通信省の方針に従って221のウェブサイトがブロックされたと発表した。BNIによれば、ラカイン州に拠点を置く通信社NarinjaraとDevelopment Media Group(Dmg)はMPTやMytelにアクセスができなくなっている。また、地方通信社のKaren Newsもその後、アクセスができなくなった。

 IMSは、政府による上記の施策は法的基盤を欠き、国際人権法の侵害に当たると主張していた。とりわけ、「自由権規約」一般的意見3458が定める同規約19条3項によって表現の自由に一定の制限を課すための条件である(1)制限が法律によって明確に定められること、(2)制限の目的が正当であること、(3)制限がその目的達成のために必要かつ相当であること、という3つの要件を充足していないことに懸念を表している。また、ウェブサイト全体へのアクセス制限は、極端で行き過ぎたものであると明確に言及している。

 ミャンマー国軍による通信の制限について、今年2月1日のクーデター発生後、3日にはフェイスブック、5日にはツイッターやインスタグラムといったソーシャルメディアへの遮断命令が運輸通信省を通じて発表され、6日から7日にかけてインターネット接続は終日遮断された。

 15日以降も、午前1時から9時までインターネットは遮断、3月14日の戒厳令以降、15日午前からは全土で携帯電話のデータ通信が遮断、18日にはモバイルWi-Fiも遮断され、現在は光ファイバー回線のみであり、加えて午前1時から9時までの遮断は継続している。

(つづく)


<プロフィール>
大谷 賢二
(おおたに・けんじ)
 1951年福岡市生まれ。福岡県立福岡高校、九州大学法学部卒。98年5月にNGOカンボジア地雷撤去キャンペーン結成。2008年12月にアジア人権基金より「アジア人権賞」を日本人として初受賞。11年4月に(一財)カンボジア地雷撤去キャンペーンを設立、理事長に就任。

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