2024年05月15日( 水 )

【衆院選2021】麻生氏問題発言への徹底追及 立民・枝野代表も北海道入り

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■立民・枝野代表は戸別所得補償制度にも言及

立民・枝野代表も北海道入りで麻生発言を徹底追及

 総選挙最終盤で野党が、麻生太郎副総裁の“温暖化で北海道産米が美味しくなった” 発言の徹底追及を始めた。立憲民主党の蓮舫代表代行は10月27日に麻生発言が飛び出した北海道四区を訪れ、野党統一候補の大築紅葉氏の応援演説し、29日には枝野幸男代表も札幌入り。大築氏の隣で、麻生発言を次のように批判したのだ。

 「私も東京で(麻生発言を)聞いてびっくりしました。『温暖化のおかげで北海道の米が美味(うま)くなった』。冗談じゃないですよね。北海道の皆さんの努力でいろいろな品種改良をして、寒さにも強く、おいしいお米をつくった。そして温暖化のせいで水産業も、獲れる魚が変わってしまって苦労されている。農家の皆さんだって、気候が変われば、ご苦労をされる。まったく国民の暮らしなんか見ていない。温暖化によって地球が危ないという危機感をもっていないとんでもない発言でした」

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 枝野代表は批判だけでなく政策提言もしていた。「(自民党政治を)変えるために具体的な提案もしています」と切り出し、こう説明したのだ。

 「私たちはもう一度、(民主党政権時代に進めた)戸別所得補償制度を復活させたいと思っています。農業も水産業も林業も単なる金儲けではない。水や緑や空気を守る。災害を防ぐ役割もあったりもする。水産業は国境や陣地を守ってくれてもいる。にもかかわらず、気候が変動すれば、天候によって獲れたり獲れなかったりする。そして今回のように米の値段が暴落することもある。そういうことがあった時でも最低限の暮らしは保障しましょう。なぜなら、農業を営んでいる、林業を営んでいる、水産業を営んでいる。営んでくれているだけで、社会全体に役立つ仕事をしていただいている。そうした皆さんに最低限の生活を保障するのは当たり前でしょう」

石川香織候補
(北海道11区の前衆院議員)

 枝野代表の狙いはすぐに理解できた。戸別所得補償制度という目玉政策を掲げながら、麻生発言で愚弄された農家を含む農林水産業関係者(一次産業従事者)への支持を広げようというものだ。麻生発言に不快感を抱くのは、コメ農家だけではない。温暖化の影響に苦しんでいる水産業関係者も同じに違いない。麻生発言について立民の石川香織候補(北海道11区の前衆院議員)が、「これを小樽で言うセンスに強烈な違和感。温暖化の影響が大いにあるといわれる近年の不漁魚についてはどうコメントするのでしょうか」とツイートすると、すぐに北海道4区の大築氏がリツイート(引用)したのはこのためだ。

 温暖化による赤潮発生で北海道の水産業が大打撃を受けている真っ最中に、麻生副総裁は「温暖化にはいいこともある」と発言、地元漁業関係者が怒り心頭に発してもまったく不思議ではないのだ。

■安倍元首相は年金問題での自慢話に終始

 一次産業関係者を敵に回しかねない問題発言なのに、自民党の危機感は乏しい。岸田首相は26日夜の民放番組で「適切ではなかったのかなと思う。申し訳ないと思います」と述べたものの、当の麻生副総裁自身が謝罪したという報道はいまだにない。

いまやキングメーカーの安倍元首相

 麻生氏と並ぶ党内実力者(キングメーカー)である安倍晋三元首相も10月28日、麻生発言を隣で聞いていた中村裕之・前衆院議員(北海道四区の自民党公認候補)への応援演説を札幌市でしたが、麻生発言に対する釈明はなかった。先に街宣をした中村氏がツイッター(前記事で紹介)と同主旨の訂正と謝罪をしたのに、安倍元首相は年金問題に関する自慢話で「(中村氏から)さっき話が出た麻生さんなんかは81歳ですよ」とさらりと触れただけで事足りたのだ。

 そこで応援演説後、聴衆とのグータッチを終えようとしていた安倍元首相に向かって「安倍さん、麻生さんの発言について一言。温暖化について。温暖化でコメ(が美味くなった)」と声をかけたが、「ちょっと静かに」と言って指を口の前に立てた。

 その後、車に乗り込んで出発するときに再び、「安倍さん、麻生さんの発言について一言、お願いします」と叫んだが、安倍元首相は私の問いかけには答えないまま、手を振りながら走り去って行った。

 安倍元首相と麻生副総裁は今回の総裁選に大きな影響力を与えたとされる長老コンビ(党内実力者)だが、麻生発言については2人とも重要視していないようだった。野党の徹底追及をする麻生発言が、農業や水産業を含む第一次産業関係者の投票行動にどの程度、影響を与えるのか。北海道だけに止まるのか、それとも全国各地にまで広がるのか。総選挙の結果が注目される。

【ジャーナリスト/横田 一】

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