2024年04月28日( 日 )

【福岡IR特別連載105】長崎IRをめぐる日米安保への懸念~ニューズウィーク

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佐世保基地 イメージ    早速、筆者が前回指摘していたことがまた起こった。『ニューズウィーク(日本版)』(9/6付)がハウステンボス(HTB)売却転売問題に関わる「日米安全保障」について指摘・懸念し、真正面からこれを強く非難した。海外発の記事はさすがに鋭く尖っている。平和ボケに陥った我が国のマスコミ報道とは大きな違いである。

 同様に、長崎県知事と佐世保市長が「所有者が中国企業に代わっても、長崎IRに一切の影響はない……」と公に発言したが、これも何とも愚かなことである。

 なにしろ、ニューズウィークの当該記事では、買収した中国・香港に本社を置く不動産ファンド「PAG」のオーナー経営者・単偉建(シャン・ウェイジャン/Waijian Shan)は、中国共産党員で習近平政権との関係が深く、中国政府のスパイとしては良く知られている人物だとして、詳しく解説しているのだ。

 同記事によると、会長兼CEOの単氏は北京生まれ、北京大学出身。文化大革命後に再開された中国人留学生派遣第一陣の1人として米国の大学院に留学した後、中国鉄鋼大手の宝山鋼鉄(現・宝武鉄鋼)や中国銀行の経営にも携わってきた。同記事は、このような経歴から、単氏は共産党員である可能性は非常に高く、また中国共産党幹部の子弟である「太子党」の1人だろうとしている。

世界中の軍事基地を狙う中国習近平政権のスパイ活動

 長崎県佐世保市には、我が国にとって非常に重要な東シナ海などへ西方海上の防衛の要となる米国海軍ならびに海上自衛隊の基地、海上保安庁の基地がある。

 地元自治体である佐世保市の行政や議会、さらに長崎IRを管轄する長崎県行政や議会は、台湾有事が日々憂慮され、各マスコミが連日のごとく報じている現在の環境をどう認識しているのか。「中国企業によるハウステンボス買収は、一切影響しない」との大石県知事および朝長市長の発言は、いったい何を根拠にしているのか。

 『ニューズウィーク』の記事では、中国習近平政権とつながりを持つ企業(つながりをもたない企業などあり得ないが)が、世界中の軍事基地周辺の土地等の買収を実行していて、中国が得意とする民間人への潜入なども含めた高度なスパイ活動を実行していることについても詳しく解説している。

 日本も遅ればせながら、日米安全保障の観点から、政府が今期、当月施行の「重要土地利用規制法」を実行しているのだ……とわかりやすく説明している。当然、これらは西側諸国では常識的な危機管理の流れである。唯一「平和ボケ」の我が国が、米国などからの圧力と、近年の中国企業の各地の動きを懸念した民間から要請で、2016年にようやく立法・可決し、施行することになったのである。

 すでに筆者が解説しているように、SNS上では「HISの澤田は売国奴」などの投稿が日々炎上寸前になっている。長崎県行政と彼ら関係者全員も、結果的には中国企業によるハウステンボス買収問題の「片棒を担いでいる」と言っても過言ではない。

 今後、他のマスコミがこの『ニューズウィーク』の記事を後追いし、インターネットを中心にさらに拡散されるのは間違いないだろう。大石県知事や朝長市長が自らの責任回避を優先し、責任を国に転嫁しようとするなら、それは政治的に自らの首を絞めることになるだろう。

 長崎新聞を筆頭にした地元マスコミ各社も、長崎県行政と県知事、長崎市長に忖度している場合ではない。所有者が中華系企業となったハウステンボスを候補地とするIRに対し、国が今後承認する可能性は絶対になく、事実上崩壊している。「報道機関の使命とは何ぞや」と、自らの姿勢を問うべきである。

 ちなみに、今月福岡IRの誘致促進プロモーション動画がYouTubeにアップされ、誰でも観ることができる。民間企業だからこそ可能になった、非常に優れたものだ。大阪(オリックス)を除く各地行政機関によるIR誘致が、このことを逆説的に証明している。興味ある方はぜひみていただきたい。

 また、米国Bally's記者会見の模様もYouTubeにアップされているので、こちらもあわせてご覧いただきたい。この会見は3月に行われたのだが、当時のマスコミ報道は長崎IR関係者に忖度し、全体の構成を恣意的に改変している。たとえば、在福岡米国領事館首席領事が積極的かつ情熱をもって挨拶した内容などは一切報じられていない。

 近いうちに、岸田政権によるIR区域認定申請の再募集(二次募集)が発表されることになるだろう。いよいよ福岡IRの出番を期待したい。筆者は当初から、東京都中心の関東都市圏、大阪中心の関西都市圏、福岡中心の北部九州都市圏の3カ所しかIRの採算は合わないと主張している。所詮、都市圏人口の裏付けがない地方都市では最初から無理なのだ。

【青木 義彦】

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