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2015年08月04日 07:05

白紙撤回の新国立競技場はどこへいく(中)

 7月、批判が噴出していた新国立競技場を取り巻く状況が一変した。安倍首相の鶴の一声で計画の見直しが決まったからだ。安保法制で落ち込んだ支持率復活という見解もあるが、とにもかくにも前途多難な再スタートを切ることになった。とはいえ、いまだ誰がどう責任をとるのか不明瞭なままだ。建築そして都市計画という2つの視点から、責任の所在について見ていきたい。

東京都都市整備局とJSCの都市計画

第4回目で初めて公開された国立競技場将来構想有識者会議<

第4回目で初めて公開された国立競技場将来構想有識者会議

 7月28日、新国立競技場を担当していた文部科学省スポーツ・青少年局の局長が更迭された。計画の白紙撤回という方針を政府が打ち出し、責任論が噴出していたなかでの出来事だ。これで一件落着、とはいかないだろう。まだまだ責任を取らなければならない人間は残っている。
 官僚責任論の急先鋒となったのは舛添東京都知事だが、実は東京都の責任も重いことをわかっているのだろうか。
新競技場周辺の緑あふれる「神宮外苑」の景観を損ねると批判を浴びた「キールアーチ」。なぜ、こんな巨大すぎるものが許されたのか。理由は、巨大さを制度的に認めた「再開発等促進区」の存在だ。

 これは東京都都市整備局が定めた都市計画制度で、再開発の指針となるもの。容積率緩和で土地の高度利用が可能になる。過去の代表的な事例に、六本木ヒルズや東京ミッドタウンなどがある。
 もともと景観保全のため、「第2種中高層住居専用地域」、「風致地区」など複数の都市計画制度が適用され、建築物の高さ規制は15mだった。高さ70mの新競技場建設が決まると、促進区が後付けで被せられたのだ。

 この「再開発等促進区」を設定するにあたって、陸上競技場として機能はまったく無視されてしまった。
 日本陸上競技連盟は7月29日、遠藤利明五輪相に対し、選手がウォーミングアップするサブトラックの常設を要望した。これも新競技場計画当初から問題視されていた。サブトラックがなければ、世界大会どころか、インターハイも国体もできないからだ。
 実は、サブトラックは常設でなくてもいい、という意見を率先していたのも東京都だった。
 発端は、2012年4月10日の「国立競技場将来構想ワーキンググループ」。新競技場のデザインコンペの基準作りに向けた、有識者と技術者の会合だ。その場で、東京都都市整備局の技監が、こう発言した。
 「大規模な施設が道路ギリギリに配置される計画は、なかなか厳しい。管理棟の上部にサブトラックが描かれているが、今決まっているのは2019年のラグビーワールドカップ。その時にサブトラックはいらない。2020年にオリンピックが来たら、その時にはサブトラックは必要だが、必ずしも恒久的な建設である条件ではないので、サブトラックの場所は決めなくても都市計画を行うことは可能」。
 つまり、競技場の恒久的な機能よりも、巨大さを担保できる目先の「再開発等促進区」の設定による神宮外苑再開発が最優先だったということがわかる。都の技監の発言こそが、アスリートたちが反対の声を上げることになった根源的な要因だ。
 ちなみに、この技監は現在、都市整備局長に昇進。また、再開発等促進区の窓口を担当していた課長も、耐震化推進担当部長に昇進している。東京オリンピックを成功させるために、新競技場の規模ありきの都市計画を推進してきた東京都都市整備局の姿勢も、改めて問わねばなるまい。

(つづく)
【大根田 康介】

 
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