「観光都市・北九州」の確立へ 多様な交流を通じた都市のアップデート（後）

（株）HOA 代表取締役 岡 秀樹 氏

生まれた価値をかたちに、DXで一味違った観光を 

    ──現在推し進めている事業について教えてください。 

　岡　現在、メタバースやXR（※）を駆使した「デジタル観光」の実現に努めています。わかりやすくいうと、仮想空間のガイドさんのようなものです。国内外に旅行に行く際、新しい土地だともちろんガイドブックを買ったり、ネットで検索したりすると思います。しかし、そこで得た情報が、観光客のニーズに本当に合っているかはわかりません。デジタル観光がかたちになれば、それぞれの顧客に合うパーソナライズされた情報が、的確に提供されるようになることでスムーズに観光ができるようになります。

　しかし、私が当初考えていたスマートグラスなどのウェアラブル端末が実際に提供に至るまでには、まだ3年から5年の期間を要すると思います。まずは、スマートフォンなどに対応するアプリやブラウザで案内ができる「バーチャルキオスク」を完成させ、徐々にサービス拡充を図っていきたいと考えています。 

※XR：クロスリアリティ。VR（仮想現実）、AR（拡張現実）、MR（複合現実）など、先端技術の総称を指す。 ^

　──将来展望について、お聞かせください。 

　岡　コロナ禍ではメタバースを活用したバーチャル観光が注目を浴びていますが、私はあくまで観光の主軸は現地を訪れることにあると思っています。現地でしか体験できない魅力を、メタバース空間を脇役として体験価値を上げる方法を考えています。たとえば歴史に興味がある方が小倉城を訪れた際に、歴史の知識についてデジタルを駆使して効率良く吸収できるような、これまでとは違う視点の観光も開発していきたいと思っています。

　このようなXR、メタバースなどの技術については、当社の2店舗目となるコワーキングスペース「DISCOVERY coworking」（22年2月開業）で研究開発が行われています。私たちが開発するデジタル観光技術は全国的に受け入れられるようなものであると考えていて、将来的にはほかの都市にも提供できるようなコンテンツに成長させていきたいと考えています。 

　北九州市は、魅力的なスポットは多数あるにもかかわらず、まだまだ多くの人にその魅力を伝えきれていないことが課題としてあります。北九州市が観光都市として認知され、さらに理解を深めていただけるよう、コワーキングから集結したまちの専門家集団として観光都市・北九州をアップデートしていきます。

（了）

【立野　夏海】

＜COMPANY INFORMATION＞
代　表：岡　秀樹
所在地：北九州市小倉北区京町2-2-19
設　立：2016年7月
ＵＲＬ：https://hoa.co.jp

＜プロフィール＞
岡　秀樹（おか・ひでき）
1976年生まれ、北九州市出身。学生時代ロンドンにおいてシェアリングビジネスで起業する。2014年、コワーキングスペース秘密基地を設立。65社を創業させ、新規事業開発をサポート。北九州市公式SNSのコンサルティング、小倉城のマーケティング戦略を担当。北九州地域DMO候補法人（Destination Marketing Organization）となる。企業の規模にかかわらず、デジタルマーケティング活用方法を指南。講演・コンサルティングを行っている。（株）HOA 代表取締役／（株）BIRDS 代表取締役／（一社）まちはチームだ代表理事。