自民・調氏の福岡市長選、推薦見送りは党内の反対や県議会問題が影響~「市民党」でのガチンコ対決へ
事務所開き
任期満了にともなう福岡市長選の告示(11月1日告示、15日投開票)が迫るなか、自民党は、新人で前自民市議の調崇史氏の推薦を見送ることを決定した。これにより自主投票となった。推薦が見送られたのは、高市早苗首相に近い井上貴博前首相補佐官(福岡1区・衆議院議員)が調氏の推薦に反対したことや福岡県議会における金銭授受疑惑などの影響を受け、市長選で敗北することを警戒したためとみられる。
現職の高島宗一郎市長に対しては、2010年の市長選で自民党市議団が擁立に動いた経緯もあり自民・公明が支援した。14年の市長選では自民・公明が推薦。18年は、自民は高島氏を支持し、22年の市長選で高島氏は会見で「推薦は依頼しない」と表明したが、自民党市議団や自民党新福岡、公明党などの与党会派から「支援」を受けた。
井上貴博氏の頑強な反対
29日、自民党本部で西村康稔選対委員長と福岡県連会長の古賀篤衆議院議員(福岡3区)が面会した。面会後、古賀氏は「推薦という形ではなく市民党として戦う方が望ましいという結論になった」と説明した。
しかし、この説明は表向きの話で、今月4日の事務所開きの時点で足並みの乱れが露呈していた。事務所開きに、福岡市を選挙区とする5人の衆議院議員のうち、古賀氏、鬼木誠氏(福岡2区)、宮内秀樹氏(福岡4区)、栗原渉氏(同5区)の4人は出席し、為書きも掲示されていたが、井上氏は欠席し、為書きもなかった。
事務所開き後、当社を含む記者団の取材に応じた調氏の選対本部長・鬼木誠衆議院議員は「自民党としての候補者を立てずに不戦敗というわけにはいかない」と述べた一方、推薦願を提出していない支部の存在を明かしたうえで「党本部の推薦をいただけるか難しい」との見方を示していた。
井上氏が反対した理由は、調氏が市議時代に高島市長に批判的な立場を取っていたためであり、17日の県連会合でも推薦に反対した。調氏は市長選立候補表明の会見においては高島市政の4期16年を評価して見せ「福岡市が明るくなった」と述べたものの、その後も周囲に「(高島氏は)辞める人ですから」という趣旨の発言を漏らすなど、本心では高島氏とそりが合わないことが関係者には周知の事実となっていた。
民主系の一部が調氏を支援へ
しかも今回の市長選は、30日時点で辞退を表明した1人を除いた13人が立候補を表明する混戦模様。基礎票となる保守層や組織団体の票も複数の候補に分散する見込みで、仮に政令市である福岡市長選で勝てなかった場合、政権にとって打撃となりかねない。
今月発行の「調たかし通信」は「私たちも共感する仲間です」と鬼木氏など4人の衆議院議員のほか、平畑雅博市議会議長や川上晋平元議長ら17人の自民市議(うち1人は別会派)の名前と顔写真とともに、推薦する業界団体の一覧が掲載されていたが、井上氏や同じ城南区選出の阿部真之介市議の名前と写真はなかった。阿部氏は、調氏と同じ城南区選出で市長選立候補に意欲をもっていたとされる。
別の要因を指摘する声もあった。鬼木選対本部長は25日に公開した自身のYouTube番組で、県議時代に自民党県議団が分裂した話や金銭授受疑惑などを含めた県議会問題を取り上げていたが、一連の福岡県議会をめぐる海外視察や正副議長をめぐる金銭授受疑惑で、自民に対する厳しい視線が向けられていることも市長選で推薦を出すことはマイナスになるとの判断が働いた大きな要因だろう。
調氏自身、当社の取材に「地域の会合で我々も非難を受けている」と認めており、ある程度、党本部の推薦を受けずに戦う覚悟はもっていたとみられる。自民党が一丸となれない体制は調氏にとって苦しい状況だが、過去の高島市長も広範な市民の人気と支持を背景に当選しており、政党の色を強めない方が幅広い支持を得られるメリットがある。
旧民主党系会派(福岡市民クラブ)や立憲民主党が自主投票としたことで民主系の市議が調氏を応援する動きもある。前回選に挑戦した田中慎介氏(中央区)や、市長選に立候補を予定している稲富修二氏の元秘書で立憲県連の役員でもある井上麻衣市議(城南区)は調氏を応援しており、民主系の分裂という側面も見逃せない。
いずれにせよ、調氏が自民の推薦を受けないことで、支持層が被る新村優前市議や稲富氏らとガチンコの対決になる条件が整うことになった。
福岡市長選は11月1日告示、15日に投開票が行われるが、現時点での立候補表明を行っている候補者は次の通り。
【福岡市長選立候補予定者】
渡辺久也氏
荒牧明楽氏
新村優氏
調崇史氏
井上潔氏
阿部秀樹氏
佐々木彩乃氏
森健太郎氏
神野元基氏
片山純子氏
吉富景子氏
稲富修二氏
西脇寛樹氏
【近藤将勝】









