大濠と舞鶴、2つの公園近接エリア（後）

両公園近接地の大手門で開発が活発化

　大濠公園と舞鶴公園を一体的に整備するセントラルパーク構想への期待感が高まるなか、両公園の近接地である大手門エリアでは、早くも開発が活発化している。

　舞鶴公園隣接地で、セントラルパーク構想の対象エリアでもある福岡高等裁判所跡地の徒歩10分圏内では、筑邦産業（株）による「（仮称）大手門一丁目計画」が進む。事務所や店舗が入るテナントビルで、建築物の概要はRC造（一部S造）・地上7階建、延床面積696.78ｍ²。設計を（株）三菱地所設計・九州支店が手がける。そのすぐ側では、旧大成建設（株）・九州支店ビルの解体工事が進められており、動向が注目される。

　再開発が進む旧簀子小学校跡地や長浜エリアにも近い大手門二丁目では、個人による「（仮称）大手門2丁目計画」が進む。建築物の概要は、RC造・地上6階建、延床面積600ｍ²のワンルーム外4戸。設計をYAMASHITA建築設計事務所が手がける。施工は、自社設計の建売住宅や注文住宅を中心に、デザイナーズアパートなども手がけ、住空間を楽しみたいというユーザーから高い評価と支持を集めている、（株）OZ工務店が担う。

　その近くでは、積水ハウス（株）による「グランドメゾン大手門ザ・レジデンス」の建設工事が進む。建築物の概要は、RC造・地上21階建、延床面積8,773.87ｍ²の全69戸。設計を（株）手島建築設計事務所、施工を鉄建建設（株）・九州支店がそれぞれ手がけ、24年1月の竣工を予定している。このほか、大手門三丁目では（株）コミヤによる「（仮称）大手門三丁目マンション」（RC造・地上9階建、延床面積922.12ｍ²のワンルーム32戸）の開発が進んでいる。

　無論、大濠・舞鶴エリアでも開発は盛んだ。大濠一丁目では、NTT都市開発（株）による「（仮称）中央区大濠一丁目共同住宅」（RC造［一部S造］・地上9階建、延床面積1,984.67ｍ²のワンルーム外8戸）が、舞鶴一丁目では（株）モダンプロジェによる「（仮称）modern Palazzo舞鶴」（RC造・地上6階建、延床面積546.52ｍ²のワンルーム外6戸）が計画されており、将来付加されるセントラルパーク至近地というブランディングを見据えた、住まいの供給が勢いづいてきている印象を受ける。

　すでに大手門一丁目では更地も散見されており、セントラルパーク構想の進捗状況に呼応するように、周辺エリアにおける開発計画もその全貌が明らかになっていくのではないだろうか。

天神・博多の再開発とは違った視点で

　福岡市内の再開発プロジェクトといえば、高さ制限と容積率という2つの規制緩和、税制優遇制度などが後押しとなり、活況を呈する天神ビッグバンや博多コネクティッドが想起される。

　一方で、セントラルパーク構想はあくまで大濠公園と舞鶴公園の一体的な整備にすぎず、現状、周辺エリアで開発を計画している事業者に対して、何か特別な支援があるわけではない。ただ、これから20年以上をかけて進められる息の長い計画でもあり、それだけ時勢にも柔軟に対応できるといった利点をもっている。天神ビッグバンと博多コネクティッドの2つの再開発プロジェクトとは性質の異なるまちづくり施策であり、長期的な視座に立って地域全体のブランド力向上に取り組めるということは、多様な意見を取り入れられる余地があるということでもあり、ダイバーシティ福岡の促進にもつながる。

　理想の姿でもある本家NYのセントラルパークを感じさせつつも、福岡らしさに富んだセントラルパークの誕生、そして公園から始まる大濠・舞鶴の天神エリアとは一味違ったまちづくりに期待したい。

（了）

【代　源太朗】