2024年05月03日( 金 )

保守政治家・鬼木誠氏と旧統一教会との関係(1)

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 昨年、安倍元首相銃撃事件で旧統一教会と政治の関係がクローズアップされ、宗教2世の問題などが大きな話題となった。国会において成立した不当寄附勧誘防止法も、多くの旧統一教会の被害者の証言などが世論を動かしたことによるものだ。しかし、法律の施行後、急速に関心が失われたようになり、教団と政治家との関係はうやむやになりつつある。はたしてそれでよいのか。

福岡でも活発な旧統一教会の活動

 国が旧統一教会の宗教法人としての解散命令請求を出すのかどうか、注目が集まっている。文部科学省・文化庁が半年間にわたり、5回質問権を行使したが、旧統一教会側はのらりくらりと対応し、なかなか前進しない。

 国をあざ笑うかのように、5月の連休中、旧統一教会は韓国で大規模な合同結婚式を行い、多数の日本人信者が参加した。「聖地」とされる清平(チョンピョン)では、巨額の資金を投じて「天苑宮」なる豪華宮殿が建設中である。社会通念上、法外な献金が問題となったにもかかわらず、現在も日本人信者の家庭に一世帯あたり183万円もの献金を求めている。あくまでも日本からの献金に依存しているのが旧統一教会なのである。

 福岡は地理的に朝鮮半島に近く、昔から交流が盛んであるが、旧統一教会の活動も活発に行われている。教祖・文鮮明が提唱する「統一原理」を研究する学生サークル「原理研究会(CARP)」は、九州大学や福岡大学にも存在している。

 同教団の霊感商法については、1994年6月に福岡地裁が全国で初めて統一教会の関与と賠償責任を認める判決を出すなど、福岡においてもこれまで多数の被害報告と裁判が行われてきた。2009年には、福岡県警公安1課などが、当時博多区内にあった旧統一教会の信者が経営する販売事業会社に勤務する販売員が1個50万円する水晶玉をあと2個購入しないと地獄に落ちると不安を煽り、売買契約を結ばせたのは特定商取引法違反にあたるとして販売員を逮捕。博多駅近くにあった事業会社と教団施設を家宅捜索している。

 旧統一教会は、解散命令請求が行われた場合、国との訴訟を行うと宣戦布告しており、反省の色はまったくうかがえない。このようなカルトといってよい団体と、自民党などの保守政治家は長年、互いに持ちつ持たれつの関係にあったのである。その代表は安倍晋三元首相であった。

政治の力で警察の摘発を逃れた旧統一教会

    旧統一教会のカルト性や、社会通念上常軌を逸した献金や霊感商法は、警察当局も当然、早くから問題視していた。

 元参議院議員でジャーナリストの有田芳生氏によると、警察庁警備局は1990年代、旧統一教会に対する大規模な捜査と摘発を考えていたという。

 福岡県警で長年公安部門に在籍したあるОBは、「安倍元首相の事件で統一教会の問題が大きく話題になりましたが、我々は長年にわたり、被害者の救済のため統一教会を監視し、実際に摘発も行いました。残念だったのは、いろいろな事情から本丸までいけなかったことです」と語る。

 冷戦終結後、北朝鮮の核開発疑惑があるなかで、反共思想家でもあった文鮮明教祖が金日成と会談するなどの動きを、公安当局は外事犯罪につながる危険な動きと捉えていた。しかし、公安当局は最終的に、教団への捜査を中止した。その後も公安警察による監視、内偵は継続され、前出の2009年の福岡や東京などにおける摘発に至る。

 警察官向けの書籍を多く手掛けている立花書房が発行する月刊誌『治安フォーラム』は、たびたび統一教会問題を取り上げていた。同誌は警察庁警備局の警察官僚がペンネームで執筆しているとされ、公安当局の本音が語られる媒体である。

 問題は、捜査が地方教会レベルにとどまり、教団本部は無傷だったことである。これにより教団は政治との関係強化を目指し、安倍元首相などに接近していったのだ。本部への家宅捜索が行われなかったのは、政治介入があったと指摘する声は多い。

 旧統一教会は日本について、本来許されない国であると規定している。自らが天国に行くためには、慰安婦問題などについて教団内部の用語で「蕩減」と呼ばれる謝罪、贖罪を行い、お金を貢がなければならないと教える教団の教義と、日韓併合などを正当化し、韓国からの謝罪要求に反発する日本の保守政治家とは、どう考えても相容れないものがある。

鬼木 誠 氏
鬼木 誠 氏

    22年9月に公表された自民党の点検調査で、福岡選出の議員も数人名前が挙がっていた。その1人が衆議院福岡2区(福岡市中央区・南区・城南区)選出で、自民党所属の鬼木誠氏である。県議会議員時代は警察委員会委員長も務めていた。

 福岡や東京で開催された教団の関連団体の行事に出席したことや、鬼木氏の妻が関連団体主催の女子留学生日本語弁論大会に参加し、審査員を務めていたことを認めた。一見、正直に申告しており反省しているように見える。しかしその後、自身の主催する勉強会で、旧統一教会に対する社会的批判の高まりを左翼勢力によるプロパガンダであると発言していたことなどが明らかになっている。後編では、このことをより具体的に取り上げたい。

(つづく)

【近藤 将勝】

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