小田が決めた！アビスパ2年連続ベスト4　福岡2-0 FC東京

　サッカーJ1リーグのアビスパ福岡は10日、ホームのベスト電器スタジアムにFC東京を迎えてルヴァンカップ準々決勝・第2戦の試合を行った。

　この日のベスト電器スタジアムは、そのすべてがFW佐藤凌我に捧げられていた。佐藤凌我は福岡市出身、1999年2月生まれの24歳。東福岡高校から明治大学を経て、2021年に東京ヴェルディでプロ入りをはたす。21年、22年と2シーズン連続13ゴールを挙げ、23年に地元・アビスパ福岡に加入した。

　シーズン当初はJ1の壁に苦しみ得点を挙げられずにいたが、夏を迎えるとついにストライカーの実力が開花。8月12日・横浜FC戦の1試合2ゴールを含め、ここまで4ゴールを挙げていた。

　だが、6日に行われたFC東京とのルヴァンカップ準決勝第1戦で、元日本代表DF長友佑都のタックルを受けて左ひざを負傷。左ひざ前十字靭帯損傷・外側半月板損傷で、全治8カ月と診断された。今シーズンはもちろん、来シーズンの大半をも棒に振りかねない重傷だ。

　攻守にわたって手を抜かない献身的なプレーでアビスパサポーターから愛されていた佐藤の負傷離脱を受け、クラブとサポーターは「凌我と共に国立へ行こう」を合言葉に一致団結。試合開始前、選手たちは佐藤の背番号27をつけたTシャツを身にまとい、サポーターたちは「27」のコレオボードを掲げて思いを1つにした。

　第1戦ではFC東京が1-0で勝利。アビスパにとっては、2-0以上で勝てば準決勝進出、1-0なら延長戦、そして引き分け以下なら敗退が決まる状況。何よりもまず、ゴールが必要だ。

　試合はゆったりしたペースでボールを握り、リードを保った状況でしのぎたいFC東京に対し、迫力のあるサイド攻撃で一気にゴールを奪いたいアビスパがガツガツと仕掛ける、迫力ある立ち上がりとなった。

　この日躍動したのが、佐藤とは「同期の桜」にあたるアビスパDF小田逸稀だった。佐賀県唐津市出身の小田は1998年7月生まれ。サガン鳥栖の下部組織から東福岡高校を経て、2017年に鹿島アントラーズでプロ入りし、23年からアビスパ福岡に加入している。佐藤凌我とは東福岡の同期で、全国高校総体と高校選手権の二冠を達成した「赤い彗星」のメンバー同士だ。

　無尽蔵のスタミナとヘディングの強さが特徴で、アビスパでもレギュラーの座をつかむのは時間の問題と思われた。しかし5月に自身のタックルで広島FW満田誠に右ひざ前十字靭帯部分損傷の重傷を負わせてしまって以来、どこか相手に厳しく当たり切れない場面が目立つようになり、スタメンからも遠ざかってしまう。

　だがこの日の小田は違った。38分、右サイドでボールをもったアビスパDF井上聖也が、対角線に長いパスを送る。このボールを、小田が高い身体能力を見せて空中で胸トラップ。これが走りこんできたエースFW山岸祐也にとって絶好のパスとなり、ダイレクトで左足を振り抜くとうれしい先制ゴールとなった。

　そして前半アディショナルタイムにも、小田のヘディングの強さが光るプレーが生まれる。MF前寛之が蹴ったコーナーキックはゴールに向かって曲がりながら落ちていき、ここに走りこんできたのが小田だった。ヘディングで叩きつけたボールはいったんは東京GKヤクブ・スウォビィクがセーブしたように見えたが、VAR（ビデオ・アシスタント・レフェリー）の検証の結果、ゴールラインを割っていたと判定。ゴールが認められ、小田は1ゴール1アシストの大活躍となった。

　試合はそのままアビスパが勝利を収め、2年連続の準決勝進出をはたした。試合後ヒーローインタビューを受ける小田のもとに、佐藤凌我が登場。2人は熱く抱擁を交わした。試合後の記者会見では、長谷部茂利監督が「（佐藤凌我の）大親友が一番いい仕事をする。でき過ぎなのかもしれませんが、これがスポーツのすばらしいところだと思います」と笑顔でコメントしていた。さらに「ファン、サポーターも大いに盛り上げてくれて。これが佐藤凌我の心に残って、地元福岡でスターになっていくんだろう、そしてそれを小田がサポートしていくんだろうと思います。……小田がスターにはならないと思いますが（笑）」と2人の将来についても饒舌に語ってくれた。

　ルヴァンカップに加えて天皇杯でもベスト4に残り、リーグ戦では8位。「J1定着」という目標に向けて、確かな一歩を積み上げていくアビスパ福岡にとって、地元で育った選手たちが熱い思いとともに活躍していくことは、大きな意味をもっているのは間違いない。

【深水　央】