2024年04月20日( 土 )

城ガールが巡る日本の名城~信長「天下統一」の拠点・岐阜城(後)

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金華山から眺める

 ロープウェイはカップルや外国人観光客で賑わっていた。ぼーっと景色を眺めていると、制服を着たガイドのお姉さんによるアナウンスが始まる。岐阜城の歴史についての説明を聞きながら、ゆっくりとロープウェイが昇っていく。このお姉さん、話し口調が丁寧かつ聞き取りやすく、アナウンスが終わるタイミングも完璧だった。「プロの仕事だ・・」とお姉さんに感動している間に頂上へ着いた。

mon 頂上といっても、天守までは少し距離がある。「天下第一の門」をくぐり、木々に囲まれた階段を登っていく。“最低10分くらいかな?”と考えつつ神社を通り過ぎていくと、途中、登山用のステッキを持った人たちとすれ違う。その顔は晴れ晴れとしていて、なんだろう?と思いながら進むと、少し開けた場所に着いた。木々の間から岐阜城の天守、そして下に目を向けると、岐阜の街並みを見渡すことができた。苦労して登った人が見たら、この景色は格別だろうなーと先ほど見た笑顔を思い出す。

 しかし、天守を見ても、脳がお城モードに移行しない。なんだかワクワク感がないのだ。自分にとってのお城は、自身の足で歩いて辿り着く場所なのだと再確認する。以前別のお城で、「よし!城を攻めるぞ!攻略するぞ!」と意気込み向かった先で「ようこそー!」と歓迎ムードで迎え入れられ、「いや、ちょっと待って!」と戸惑った感覚に近いような気がした。
 もちろん今回利用したロープウェイに罪は無く、悪いのは時間配分を誤った自分なのだ。岐阜への到着を遅らせる要因となったかき氷を思い出す。“おのれかき氷、とてもかわいかった・・”。

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歴史を通してみる景色

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 1997(平成9)年に大改修が行われた天守は、近くで見てもかなり整えられた印象を受ける。その内部には信長にまつわる展示物が並べられていた。
 天井はコンクリートの柱の形(木造で言うところの梁)がむき出しになっており、“そこはもっと誤魔化して!”と心の中でツッコミを入れつつ、展示物を見て回る。
 最上階へ続く階段の横、プレートに書かれた「この上は見晴らしの良い展望台です」の文字。まるで観光地にあるような文言に“何だかなぁ・・”と切ない気持ちになる。

 天守最上階からの見晴らしは流石としか言いようがない。「天下布武」を掲げた信長は、何を思ってこの景色を眺めたのだろうか。この景色は、見る人の知識の深さによって味わいが変わるだろう。私は、ただ眺めることしかできなかった。

 屋根の一部に「平成9年改修」と彫られたものを見つけた。“なるほど、美しいはずだ”と、改めて納得すると同時に、この景色とは対照的に冷たく無機質な城内部の造りを思い出し一人嘆く。沈む夕日が美しい。岐阜城はパノラマ夜景が見所の一つだと聞いていたが、そういう気分にはなれなかったので、次回へ持ち越すことにする。

kesiki2 “これで短い岐阜の旅は終わりかぁー”と意外と強い風にさらされていると、ふと何かを忘れていることに気づく。“何だっただろうか?”と望楼をぐるぐる回る。そのヒントは、ずっと手に握りしめていた岐阜城天守の入場券にあった。チケット右に「資料館入場券」の文字。“これだ、完全に忘れていた”。

 天守の東側にひっそりとあるこの岐阜城資料館は、1975(昭和50)年に復元されたもの。かつてこの場所には、米や味噌といった食料を蓄えるための蔵と、弓矢を備えた倉が建っていたそうだ。入場券は岐阜城天守と共通となっているが、資料館で券の販売は行っていないので注意。私のようにうっかり忘れないようにも注意。

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難攻不落の城?

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 資料館を離れ、ロープウェイ乗り場へ向かう。せっかくなので、行きと別の道を選ぶ。静かな山にはカラスの鳴き声が響き、魔物(信長的にいえば魔王?)が住んでいそうな不気味な雰囲気が漂う。進むにつれ道が狭まり、すぐ横には大岩が連なっている。まるでこの金華山の「山」としての険しさを表しているようだ。

 このような大岩を見ていると、岐阜城が地に守られた難攻不落の城のように感じられる。しかし、実際は5回落城している。いかにも“天然の要塞です!”と言わんばかりの岩が点在しているのに・・。
 天守内の展示資料で「落城5回」の文字を見たときは本当に驚いたが、同時に、ただ険しいだけじゃ城は成り立たない。山城にも色々あるのだよ、と教えられた気がした。

 そうして私は、カラスの鳴き声にびびりつつ、次の目的地・滋賀県へと向かった。

(了)
【城野 円】

 
(前)
(小谷城編)

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