武雄市が、4月に開学した武雄アジア大学を運営する(学)旭学園(佐賀市、溝上泰弘理事長)に交付した補助金をめぐり、武雄市民らが7月10日、武雄市監査委員に住民監査請求を提出した。
画像提供:武雄市を守る会
請求書を提出したのは、近藤憲治氏(「武雄市を守る会」共同代表)を請求⼈代表とする武雄市民3人。
請求では、武雄市を通じて旭学園に交付された武雄市大学施設等整備事業費補助金19億4,809万円について、支出の判断過程が著しく合理性を欠き、裁量権の逸脱・濫用にあたる違法・不当な支出だったとして、市長および財務会計責任者に対し、旭学園へ補助金返還を求めるよう勧告することなどを求めている。
補助金19億4,809万6,000円は、武雄市負担分12億9,873万円と佐賀県補助分6億4,936万6,000円を合わせたもの。大学施設等の整備を目的とする補助金として支出された。
請求側「問うのは行政の判断過程」
今回の請求の中心にあるのは、補助金支出そのものの是非だけでなく、武雄市が巨額の補助金支出を決めるにあたり、学校法人の財務基盤、学生確保の見通し、経済効果、補助金額の算定根拠をどこまで具体的に検証していたのかという点だ。
請求側は、旭学園が市などの財政支援を前提に大学設置計画を進めていたこと、開学後の収支計画でも一定期間の赤字が見込まれていたことなどを挙げ、武雄市が法人の財務的な継続可能性について十分な検証を行わないまま補助金支出を決めたと主張している。
また、武雄アジア大学の入学定員が1学年140名であるのに対し、初年度の入学者は37名にとどまった。請求側は、学生確保をめぐって市議会などで疑問が示されていたにもかかわらず、市が十分な精査を行わず、実現可能性の検証が不十分な見通しに依拠して補助金交付を決定したとしている。
さらに、大学開学による経済効果についても、学生の市内移住・定住などを前提とする試算が実態と大きく乖離していると指摘。19億円を超える補助金額についても、市の負担額や費用対効果の検討過程が明確ではないとして、補助金支出の判断過程の妥当性を問うている。
代表請求人の近藤憲治氏は、住民監査請求をこの時期に提出した理由について、「初年度入学者37名という事実が4月に判明し、旭学園の2025年度決算が7月初頭に公表されたことで、学生確保と法人財務の両面から請求を裏づける資料がそろったため」と説明した。また、補助金支出が議会の議決を経ていることについては、「それをもって支出判断の適法性・妥当性が当然に担保されるわけではない」としつつ、「議会判断の前提となった学生確保の見通し、法人の収支計画、経済効果試算、補助金額の算定根拠が十分に検証されていたのかという点が問われるべきだ」と請求の意義を説明した。
武雄アジア大学は、4月に開学しすでに37名の学生が入学している。この点について近藤氏は、「学生らに責任はなく、学生の学びは守られるべきだ」としたうえで、「今回問うているのは、19億円を超える公金支出を決めた行政の判断過程だ」とした。
設置申請段階から見えていたリスク
武雄アジア大学をめぐっては、開学初年度から大幅な定員割れとなったことで、大学の事業継続性や市の財政支援の妥当性が市議会などでも議論されてきた。今回の住民監査請求により、大学誘致政策の評価に加え、補助金支出という財務会計行為としての適法性・妥当性が、監査委員の判断対象となる。
ただし、こうした論点は、開学後に初めて浮上したものではない。筆者は、武雄アジア大学が文部科学省に認可申請中だった2025年5月の記事で、旭学園と武雄市の関係を「大学誘致を実現させた市長と学長の同床異夢」として分析した。
詳しくは、既報『【特集】地方の学校法人の生き残り戦略~武雄アジア大学構想の状況レポート』(25年5月15日掲載)をご覧いただきたいが、事前に市が見るべきだったのは、大学誘致という夢だけではなく、旭学園が大学を長期にわたり維持できる法人なのか、学生を継続的に確保できる計画なのか、補助金支出に見合う公益性が現実に担保されるのかという点であった。
初年度入学者37名という結果は、大学開学後に明らかになった問題である。だが、学生確保の困難さ自体は、認可申請段階から様々な方面から指摘されていた。今回の住民監査請求は、開学後の定員割れを理由に大学誘致を後追いで批判するものにとどまらない。むしろ、巨額の補助金支出を決めた時点で、武雄市がどこまで現実的なリスク検証を行っていたのかを問うものといえる。
今後の焦点
今後は、監査委員が請求内容や提出資料を確認し、武雄市側の説明も踏まえて監査を進める。監査結果によっては、補助金返還請求の要否、市長や関係職員の責任、関連施策や武雄市と旭学園との関係の在り方などをめぐる議論にも影響を与える可能性がある。
住民監査請求について
住民監査請求は、地方自治法第242条に基づく制度で、地方公共団体の住民が、首長や職員などによる違法または不当な公金支出、契約、財産管理などの財務会計行為について、監査委員に監査を求めることができるものだ。請求が受理された場合、監査委員は請求人からの陳述、関係書類の確認、関係職員からの事情聴取などを行い、原則として請求があった日から60日以内に監査結果をまとめる。
監査結果には、請求に理由があるとして市長などに必要な措置を勧告する場合と、請求に理由がないとして棄却する場合がある。形式要件を満たさないと判断される場合は却下される。勧告が行われた場合、市長などの執行機関は必要な措置を講じ、その内容を監査委員に通知する。監査委員はその内容を請求人に通知し、公表することになる。請求人が監査結果や勧告内容、または勧告後の措置に不服がある場合は、地方自治法に基づき住民訴訟を提起することもできる。
【寺村朋輝】








