【BIS論壇№494】躍進のインド、SCO

 NetIB-Newsでは、日本ビジネスインテリジェンス協会理事長・中川十郎氏の「BIS論壇」を掲載している。
 今回は9月1日の記事を紹介する。

デリー イメージ    インド政府が8月29日発表の4~6月期の実質GDP(国内総生産)は前年同期比7.8%増と驚異的な伸びを示し、インド経済の好調ぶりを際立たせている。

  8月29日から訪日したインドのモディ首相は30日、石破首相と宮城県を訪問。半導体製造装置大手の東京エレクトロンの工場を視察。韓国サムスンなども参入を目指し、「半導体立国」を目指すインド・グジャラート州との協力を強化する狙いだ。

 日本はすでにデリー~ムンバイ高速輸送鉄道建設にも協力。さらにグジャラート州500㎞の高速鉄道計画(最高時速320キロ)に日本のE10系車両を提供すべく交渉中だ。

 8月20~22日、横浜で開催の「TICAD 9」でも日本企業のインド企業との連携によるアフリカ市場攻略について各企業が積極的に協力することが同意され、日印協力を強化することが検討された。ポスト・チャイナとして今後、インドとの日印連携が動きだす。

 インドはネルー首相時代以来、戦後長年にわたってロシアとの連携を強化してきており、筆者が商社ニューデリー支店駐在時代の1970年代から、ロシアのミグ戦闘機のインドでの国産化や水力発電所建設などでロシアの支援を受けていた。従って、インド―ロシアの関係は、パキスタン―米国との関係に劣らぬほどの親密な関係にある。かかる印露の歴史的関係もあり、インドがロシアの原油を輸入していることを理由に、米トランプ政権はインドへの懲罰的な50%の高関税をかけ、両国の間で、貿易紛争が勃発している。一方、トランプ政権はBRICSの有力国、グローバルサウスの南米有力国ブラジルにも50%の関税をかけ、ブラジルとの間でも貿易紛争が生じつつある。

 かかる環境下、中国・習近平国家主席の招待で8月31日から、中国天津で上海協力機構(SCO)首脳会議が開催される。天津は北京に近い重要港湾都市である。2018年10月、BISでは20名の天津ミッションを派遣。貿易、医療関係者との日中協力について会議を開催した経緯もあり、天津はBISとも関係が深い。 SCOは01年の上海での発足時は、中国、ロシアが主導、タジキスタン、キルギス、カザフスタン、ウズべキスタンの6カ国であった。だが、現在は10カ国となり、今回は中国・習近平主席が主導。ロシア・プーチン大統領、インド・モディ首相、イラン・ぺゼシュキアン大統領、ベラルーシ・ルカシェンコ大統領などを含め、主に途上国20カ国首脳が参加。有力発展途上国のBRICSと並びグローバルサウスの発展途上国の有力国の会合となる。米国トランプ政権の高関税政策への対抗措置などが打ち合わせされるものとみられ、その動向には十二分の注意が肝要だ。

 グローバルサウスの雄、上海協力機構は近年存在感を高めており、加盟10カ国の人口は24年34億人(世界比率42%)、22年GDP22兆ドル(25%)、貿易額、23年8兆ドル(18%)と躍進しつつあり、その動きには十分な注目が肝要だ。


<プロフィール>
中川十郎(なかがわ・ じゅうろう)

 鹿児島ラサール高等学校卒。東京外国語大学イタリア学科・国際関係専修課程卒業後、ニチメン(現:双日)入社。海外駐在20年。業務本部米州部長補佐、米国ニチメン・ニューヨーク開発担当副社長、愛知学院大学商学部教授、東京経済大学経営学部教授、同大学院教授、国際貿易、ビジネスコミュニケーション論、グローバルマーケティング研究。2006年4月より日本大学国際関係学部講師(国際マーケティング論、国際経営論入門、経営学原論)、2007年4月より日本大学大学院グローバルビジネス研究科講師(競争と情報、テクノロジーインテリジェンス)。

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