既存政党が淘汰される時代(8)国民・市民が国を潰す

相互扶助を忘れた日本人

 筆者はいつも感謝する。福岡市をうろつくインバウンドの方々に「お金を落としてくれてありがとう」と心のなかで叫んでいるのである。だから年3回は海外へ行く予定にしている。訪日外客数・出国数を参照されたし。たとえば2024年の場合の数値をピックアップする。訪日外客数が3,686万9,900人、出国日本人数1,300万7,300人である。訪日外客数の方が2.8倍程度ということになる。

 いかに円が安くて海外志向が薄れたことを勘案しても、情けない現実が横たわっているのだ。ひと昔前の日本人の行動パターンは「我々も海外旅行に行って恩返ししよう」と決断して行動に移していたものである。ところが大半の日本人がこの感謝の気持ちを忘却の彼方へ追いやった。本当に日本魂を失ってしまった。

 結婚10年のある女性に質問してみた。旅行は大好きだ。国内旅行は結構楽しんでいるのである。「独身時代は年2回、海外へ出かけていた。結婚してからは3回かな?円安で海外へ出る予定を立てても費用が以前よりも倍以上になっている。老後の貯えを考えれば慎重になる」と手控えの結論を明かした。日本人の経済転落の一光景だ。8年弱続いた「アベノミクス」経済政策が日本人を貧困にさせたことに起因している。

豊かさが人々を億劫な性格に仕上げる

 かつての第二次世界大戦で国内のインフラは壊滅的打撃を受けた。だから1945年8月以降の日本再生はマイナスからのスタートであった。国民はまず生きていくために必死で蠢いた。また政治家・官僚・経営者も必死で部署ごとに踏ん張った。経済回復の軌道に乗るのが1955年、この時期までは日本の良き風習、生活環境、伝統的な思考は残っていた。

 シリーズ④で語ったが、日本の黄金時代が65年から95年の30年間続いた。貧困から脱却し、豊かな生活を得るためには人間という存在は必死で奮闘する遺伝子をもっている(韓国でも中国でも同様の傾向が続いた)。ところが経済的に豊かになってくると人間は我武者羅(ガムシャラ)な努力を怠るようになる。一番の危険要素は「この豊かさは永遠に持続するものである」と思い込み、大半の人間が億劫な動物に転落してしまうことだ。同時に支配者層=政治家・官僚・経営者の多数も同様の億劫人種に転落するから、過去のように頼れる指導能力が衰退してしまっている。だから自ずと国力も弱体化していくのだ。

 「日本文化と日本人」を一生懸命に研究してきた大嶋仁先生は「植民地化の80年間に国民大半は意識・価値観・行動様式まで完全にアメリカナイズしてしまった。日本の未来は真っ暗闇である」と断言する。

億劫な人間は子孫繁栄の崇高な使命も拒絶する

 このシリーズ⑧の冒頭で「相互扶助=感謝の意を表す」ことを忘れた日本人と記述した。「我が勝手、周囲無関心、感動心ゼロ」の人種がのさばり闊歩すれば人類存続にとって憂うべき問題である。最悪コースを想定してみる。「出生60万人、旅立つ方(死亡者)180万人」となれば自然減年間120万人となる。

 純日本人が1億人を割ることは15年以内であることはほぼ間違いない。「日本人ファースト」を叫ぶ政党があるが、この党は「日本人増」の政策をまったく唱えていない。どうするんだ!!人口増政策を打ち出してほしい。

子どもたちと接すると大いに和み頑張り心が湧く

 筆者は孫たちとひと月1回、会食する。現在、6歳と4歳である(孫は4名)。1カ月確実に成長しているのがわかる。こちらは毎月、老化していることを意識しているのだが――
 博多座の横にリバレインのビルがある。5階にアンパンマンコーナーがあり、3~4歳までの幼児たちが押し寄せてくるのだ。意外と一人っ子は珍しい。子ども2人、3人連れのほうが多い。子どもたちを見ながら我が孫たちと比較しながら「この子は3歳と半年かな?」と推察する。尋ねてみるとほぼ正解に近いのだ。「いやー孫と向かい合える」この幸せを人生末期にようやく悟った。

子孫存続の儚さ

 まず我が故郷の惨状から報告しよう。小学校が分校を含めて3校あった。ところが子どもが減り3校が統合された。昔3校合わせて150人いた。現在、この小学校の一学年の生徒数は30名しかいないのである。20%の生徒数である。我が故郷は山のなかではない。国道10号沿い日向灘に面しているのだ。

 幼稚園から高校まで同じであった幼馴染12名(男7名、女5名)と最近同窓会を行った。12名とも結婚している。子ども総勢25名になる。つまり一組の夫婦で子ども平均2名を育てた。ところが孫の総数は16名しかいないのである。原因は女の子たちが結婚しないからである。友人2人は「もう孫と接することはあきらめた」と寂しい声で唸っていた。

 田舎ばかりではない。筆者が住む西区のある団地。親しくしている隣人10所帯では孫たちは8名しかいない。男女問わず未婚の子どもたちが多いからである。10所帯構成メンバー所帯主夫婦の9割は残り10年生き残れる者は僅かであろう。10年後にはこの地区が廃墟と化す可能性は濃厚である。

自立・自覚・自己責任の風土を固める

 アメリカ被れが影響しているのではなかろうが、この子孫増の使命を忘れた国民、市民の方々へ警告を発する。国力が衰退すれば国は皆さんの面倒をみられない。1人ひとりが自立・自覚・自己責任の風土を強固にしようや!!でないと日本の明日はない!!あなたの安心生活は必ず吹き飛ばされる。

(了)

< 前の記事
(7)

関連キーワード

関連記事