“なんとなく営業”をやめよう 既存顧客の見える化が会社を変える

“なんとなく営業”をやめよう    新しい顧客を追いかけることも大切ですが、会社の安定を支えているのは「今いるお客さま」です。取引履歴や関係性を見える化することで、思わぬ発見や成長のヒントが見えてきます。今回は「既存のお客さまをちゃんと見ていますか?」について、お話ししたいと思います。

 当社の来期のテーマはずばり、「既存のお客さまをもっと大事にする」です。正直にいうと、私はずっと“攻め型”の社長で、新規開拓ばかりに力を入れてきました。新しいお客さまと出会って話をするのは楽しいですし、成果もわかりやすい。でもその一方で、長くお付き合いしてくださっているお客さまへのフォローが、つい後回しになっていたんです。

 そこで今年の途中からは、方針をガラッと変えました。新規よりも、まずは既存のお客さまに向き合うことにしました。理由はとてもシンプル。売上や利益を積み重ねていくには、LTV(ライフタイムバリュー=顧客生涯価値)を上げることが欠かせないからです。

 LTVとは、1人(1社)のお客さまが取引を始めてから終えるまでに、自社にもたらす利益の合計。一度きりの取引ではなく、「関係がどれだけ長く続くか」で会社の安定度が決まります。

 どうやってLTVを上げていくのか──私たちが今やっているのは、既存のお客さまを1社ずつ“棚卸し”することです。過去3年分くらいを振り返って、「いつ・どんな商品を買っていただいたか」「年間いくらくらいの売上・粗利があるか」「最近の関係性はどうか」といった内容を1つずつ整理しています。

 すると、思わぬ発見があるんです。「安定していると思っていたお客さまが、実はここ2年ほとんど注文がなかった」とか、「単発だと思っていたお客さまが、毎年同じ時期にちゃんと発注してくれていた」とか。感覚で見ているとわからなかったことが、数字で見ると一気に明らかになります。

 そこから、私たちは行動計画を立てます。「A社には来春の展示会前に新しい提案をしよう」「B社は別カテゴリの商品を提案してLTVを上げよう」という具合に、次の一手を決めていく。これを積み重ねるだけでも、営業の精度がかなり上がります。

 営業って、つい「話しやすい会社」「近くにある会社」に偏りがちですよね。でも、それでは本当に必要としてくれているお客さまを、取りこぼしてしまいます。やっぱり大事なのは、数字を見て戦略的に動くこと。つまり、「分析→仮説→行動」というサイクルをしっかり回すことです。

 新規のお客さまを増やすことも大切ですが、実は“成長のヒント”は既存顧客のなかにあります。その関係を深めてLTVを上げていけば、会社の土台は確実に強くなります。数字と向き合い、顧客と向き合う。その積み重ねこそが、長く続く会社をつくるコツだと感じています。

 2025年も残りわずか。「来年はどこを深掘りしていくか?」を考えるにはちょうど良い時期です。ぜひ一度、自社の既存顧客を見直してみてください。思わぬ気づきが、きっとあるはずです。それでは、また次回のコラムでお会いしましょう。来年も引き続き、“人を、街を、モリアゲる。”を胸に走り続けます!


<プロフィール>
山本啓一

(やまもと・けいいち)
1973年生まれ。大学に5年在学し中退。フリーターを1年経験後、福岡で2年ほど芸人生活を送る。漫才・コントを学び舞台や数回テレビに出るがまったく売れずに引退。27歳で初就職し、過酷な飛び込み営業を経験。努力の末、入社3年後には社内トップとなる売上高1億円を達成。2004年、31歳でエンドライン(株)を創業。わずか2年半で年商1億2,000万円の会社に成長させる。「エッジの効いたアナログ販促」と「成果が見えるメディアサービス」でリアル店舗をモリアゲる「モリアゲアドバイザー」として、福岡を中心として全国にサービス展開中。

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