2024年04月20日( 土 )

韓国経済ウォッチ~進化を続けているヘルスケア産業(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

doctor サムスン電子は昨年12月29日、数種類の生体信号を収集し、処理する機能を1つのチップにしたバイオプロセッサーの量産を開始したと発表した。この製品は、サムスンにとって初めてのバイオプロセッサーで、サムスン電子がヘルスケア半導体市場に本格参入することを意味する。
 「バイオプロセッサー」とは、心拍数、体温、心電図など、生体が発する信号を収集する半導体チップである。これは病院の医療機器だけでなく、簡単な生体信号の測定と分析機能があるウェアラブル機器、スマホなどに必要な部品である。
 ヘルスケア向けの半導体市場規模は2015年で13億5,300万ドルであり、これが19年には25億1,000万ドルになると予測されている。4年間で2倍の成長が予想されているわけだ。この市場に最も先に参入したのは、半導体の最大手であるインテルである。インテルは、11年にGEとヘルスケア分野の合弁会社であるケアイノベーションズを設立し、ヘルスケア向け半導体市場に参入した。
 また、同じく半導体企業のクアルコムも、同年にクアルコムライフという子会社を設立し、ヘルスケア半導体市場に参入している。クアルコムライフは、医療機器用データ管理ソリューションを提供するベンチャー企業のカプセル・テックを買収するなど、ヘルスケア事業に向けて積極的に投資をしている。

 そうしたなか、サムスン電子はヘルスケア市場に参入するのに遅れているが、圧倒的な製造競争力を武器に、市場を取っていくという戦略を立てている。
 既存のバイオプロセッサーは、いろいろな生体信号のなかで1つのしか収集できなかったし、処理には別途のチップが必要であったのが実情であった。一方、サムスンのバイオプロセッサーは1つのチップで、体脂肪、心拍数、心電図、皮膚温度、ストレス反応など5つの生体信号を測定できるようになっている。それに、心拍数と心電図を組み合わせて血圧を測定できるなど、2つ以上の情報を分析して新しいデータをつくることもできる。
 さらに、マイクロコントローラ(MCU)、デジタル信号処理(DSP)、フラッシュメモリなどの機能が一緒に入っていることも、大きな特徴の1つである。それはすなわち、生体信号の分析からデジタル情報への変換が、1つのチップで完結できるということである。これは、別々のチップで処理したときに比べると、スペースを4分1しかとらなくなり、小型化がどうしても必要なウェアラブル機器にはうってつけである。16年上半期には、このチップを活用したヘルスケア機器の出荷も予定している。

 これ以外にも、ヘルスケア市場ではいろいろな動きが展開されている。日本のロームは微量血液検査システム「バナリスト」という製品を08年に製品化している。これは指先などから微量の血液を採血し、それを検査チップに注入して測定装置に装填するだけで、健康状態がわかるという製品である。
 また、神戸にあるマイテックという企業では、1滴の血液とたった3分という短時間で、ガンに罹っているかどうかを簡単に検査できる方法を開発している。今までの画像検査だけでは見つからなかったガンを、チップに血液を垂らすだけで、簡単に判別することができるようになったわけだ。

 このように、ヘルスケア機器での半導体やIT技術との融合が進み、ヘルスケア産業では大きな変革が進行中である。

(了)

 
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