総務省は、住民基本台帳人口移動報告2025年(令和7年)結果を公表した。それによると、2025年の人口移動は、都道府県間の国内移動者数が前年を下回り、移動規模そのものは縮小傾向が続いた。一方で、東京圏を中心とする三大都市圏への集中構造は依然として維持されており、東京一極集中が「緩やかに鈍化」しつつも、地方圏からの人口流出が続く構図が浮かび上がった。
こうしたなか、出生・死亡を除いた「社会増減数」(※)で見ると、全国では引き続き社会増の傾向が続いている。その主因は、国外からの転入が国外への転出を大きく上回っている点にある。25年の国外からの転入者数は78万2,165人だったのに対し、国外への転出者数は40万9,592人にとどまり、差し引きで37万人を超える転入超過となった。
国外からの転入には日本人の帰国者も含まれるが、この大幅な転入超過が全国の社会増を下支えしていることは明らかだ。国内移動が停滞する一方で、国外との人口移動が、日本の人口動態において占める比重は着実に高まりつつある。
※社会増減とは、出生・死亡による自然増減を除き、国内外の転入・転出など移動にともなう人口の増減を合算した指標を指す。
表の緑マークは、年間1万人以上の社会増がある都道府県を示している。首都圏以外では、大阪府、愛知県、福岡県の3府県にとどまった。
九州各県の状況
九州各県の人口移動を見ると、福岡県への集中と、それ以外の県における社会減少という構図がより明確になっている。社会増となった県は限られ、県ごとの差が拡大している点が特徴だ。
福岡県:九州で唯一、明確な社会増
福岡県の25年の社会増減数は2万254人の社会増となった。九州内で最も大きく、全国的に見ても社会増加県の一角を占める。福岡県が九州ブロックにおける人口移動の主要な受け皿となっている状況が、数字から確認できる。
佐賀県:均衡に近い小幅な社会増
佐賀県は204人の社会増と、ほぼ均衡に近い水準となった。人口吸引力は限定的で、移動の面では大きな変動が見られない。
長崎県:転出超過が続く
長崎県は3,723人の社会減となった。九州北部に位置するものの、転出超過の状態が続いており、人口流出傾向に歯止めはかかっていない。
熊本県:小幅な社会増にとどまる
熊本県は565人の社会増となった。ただし福岡県との差は大きく、人口移動の重心が福岡県側にある構造自体は変わっていない。
大分県:ほぼ均衡だが社会減
大分県は116人の社会減と、増減幅は小さい。人口移動の面では停滞感が強い。
宮崎県:減少幅が拡大
宮崎県は2,155人の社会減となった。前年より社会減少数が拡大しており、人口流出が強まったことが示されている。
鹿児島県:南九州型の社会減が継続
鹿児島県は2,555人の社会減となった。南九州では社会減が常態化しており、厳しい状況が続く。
沖縄県:例外的な社会増
沖縄県は3,037人の社会増となり、福岡県に次いで九州・沖縄地域では数少ない社会増加県となった。九州本土とは異なる人口移動の傾向が表れている。
都市の役割分担が問われる
25年の人口移動は、総量では大きく動かない一方、地域間の差は固定化しつつある。東京一極集中は鈍化しているものの解消には至らず、地方では一部都市圏への集中傾向が一段と鮮明になっている。東北、日本海側、四国、南九州などでは社会減が続き、複数県で減少幅が拡大した。そのなかで福岡都市圏は、東京圏ほどの過度な集中を生まず、大阪圏ほど回復途上でもない、地方中枢都市としての安定的な吸引力をもつ。九州各県からの若年層流入に加え、国外からの転入増も下支えとなっている。
人口移動は単純な「都市対地方」ではなく、「選別的に人を集める都市」と「それ以外の地域」に二分されつつある。今後は、人口移動を前提とした都市・地域の役割分担を、いかに政策的に設計していくかが問われる。
【寺村朋輝】









