日本最大級のコンビナート事業を核に国産木材のシェア拡大に挑む

(株)伊万里木材市場 代表取締役 伊東貴樹 氏

(株)伊万里木材市場
代表取締役 伊東貴樹 氏

 日本最大級の木材コンビナートを運営する(株)伊万里木材市場。コンビナート事業を中核に、木材産業の川上(林業など)から川中(製材など)、川下(建設業など最終需要者)をつなぎ、国産材の活用拡大に早くから貢献してきた、九州を代表する企業だ。事業を通じて、現在の木材産業の在り方について、どのような見方をしているのだろうか。同社代表取締役・伊東貴樹氏に聞いた。

調達、製材、加工、流通までを一貫体制で

 ──御社の事業内容について、教えてください。

西九州木材事業協同組合の大径林工場
西九州木材事業協同組合の大径林工場

 伊東 当社では、「森林整備事業」「素材生産事業」「原木安定供給販売事業」「コンビナート事業」「素材・製品 市売り・プレカット事業」「輸出事業」「バイオマス燃料事業」などを展開しています。このうち、中核と位置づけられるのが木材コンビナート事業で、日本最大級の規模を誇ります。本社のある佐賀県伊万里市は木材産業集積地で、敷地内では当社が原木の調達・集荷、西九州木材事業(協)が加工、中国木材(株)が製品化・出荷を担当しています。主な製品は、国産材の建築用集成材・構造材とハイブリッド(ベイマツと国産材)集成材です。

西九州木材事業協同組合の工場内の様子
西九州木材事業協同組合の工場内の様子

 一般的な木材サプライチェーンでは、各事業者が各地に散在するため輸送コストなどさまざまなロスが発生しやすいのですが、当社では1カ所で調達から製品生産までを安定的に一貫して行えるため、効率的な事業体制を構築しているのが特徴です。具体的には、①素材生産・調達から製品化までのタイムラグが少なく高品質な製品を製造しやすい、②事業情報を関係者全体で共有しやすい、③価格の乱高下が少ない、という大きく3つの強みを有しています。当社ではこの仕組みを「システム販売」と称しています。

1カ所に集結し、木材を最大限に活用

伊万里市木材コンビナート

 2004年3月に稼働を開始。場内では伊万里木材市場が原木を集荷・搬入、西九州木材事業(協)が原木をラミナ材(挽き板や小角材など)に製材、中国木材が集成材に加工し、全国各地に流通させている。25年の原木供給量は14万8,961m3、製材量は16万8,033m3、集成材生産量は6万6,821m3。合計敷地面積は約35万9,000㎡で、敷地内にはバイオマス発電所もあり、発電で生じた熱は隣接する食品工場で利用されるなど、原木を最大限に利用している。

コンビナートの全景
コンビナートの全景

安定供給のカギとなる森林整備事業

 ──森林整備事業では、どのような取り組みをしているのでしょうか。

 伊東 製品の安定供給には、原料となる原木の安定的な調達が何より重要です。それを可能にするのが森林整備事業。九州各地の森林所有者(国の森林管理署や林業公社、森林組合、個人など)と協定を結び、立木の購入から伐採、その後の再造林(地拵えや植林、下刈など)も当社が担い、原木を常に調達できる体制を構築しています。各地域に適した森林経営計画の提案・作成にも携わっており、再造林森林整備事業地は九州内で715カ所(協定面積:1,122ha)にのぼります。

 たとえば、従来のスギより1.5倍速く成長し、花粉の量が少ないといった特徴がある「サガンスギ」などの苗生産に取り組んでいます。また、人手不足への対応のため、ドローンやレーザースキャナによる山林測量、高性能作業機器などの導入などのスマート林業も、積極的に推進しています。このほか、当社が森林を買い取り直営する「素材(原木)生産事業」にも取り組み、九州各地で常時約20組(1組=4人)の素材生産班および造林班が活動中です。このように、森林所有者との安定供給協定に基づき、価格や数量、期間を決めて伐採し、コンビナートに供給する仕組みを構築しています。なかでも購入する原木価格の安定化は大切で、それにより山側(山林所有者)へ利益を還元することを重要視しています。

 ──このほかの事業については、いかがですか。

 伊東 輸出事業については、国内商社を通じて中国や韓国、台湾、ベトナム、インド、米国などに供給しています。このうち中国では、棺桶の材料などとして需要があります。韓国向けは内装材として利用され、ベトナム向けでは現地で当社の原木を加工し、それを日本に逆輸入して家具製造に使われています。また、当社の子会社に2×4住宅向けの部材を生産する(株)さつまファインウッド(鹿児島県霧島市)がありますが、この会社では米国向けにフェンス材を輸出しています。バイオマス燃料事業は、森林整備事業と素材生産事業などから発生する未利用材、林地残材、低質材を各地から集め、発電施設やチップ工場へ供給するものです。コンビナート内の発電所を含め、九州にある13カ所のバイオマス発電所(5,000kW以上)に供給しています。

(左)森林整備地 (右)伐採作業の様子
(左)森林整備地 (右)伐採作業の様子

法整備進むが山側には課題も

 ──ところで、近年になって木材産業の活性化に向けて、国や自治体などがさまざまな取り組みをしていますが、現状についてどのように考えていますか。

 伊東 2010年に「公共建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(木材利用促進法)、21年には「脱炭素社会の実現に資する等のための建築物等における木材の利用の促進に関する法律」(都市(まち)の木造化推進法)が施行。建築基準法も改正され、中大規模の建築物(非住宅)を木造で建設しやすくすることで、木材活用を促進する動きが強まっています。このほか、脱炭素化に向けた「Jクレジット制度(※)」なども導入されるようになり、木材をめぐる社会の注目度はかつてと比べ大きく改善しています。とくに、ウッドショックを境に、その傾向が強まった印象です。

※建築物を構成する各部材・設備の製造・施工・使用・解体に至るまでの建築物のライフサイクル全体において発生するカーボン(CO₂)を算定・評価するもの。28年度をメドに建築物LCAの実施を促す制度の開始を目指すこととなっている

 ただ、建築物の木造化を推進することは、法整備を経ても容易ではありません。山側の体制が整っておらず、安定供給が難しいためです。川上の現場では人員が限られており、川下の需要が増したとしても、急には生産量を上げることができないからです。林業はそもそも厳冬期には作業が難しいため、年間を通じて原木の伐採ができるわけでもありません。再造林を行って、山林を健全に保つことも大切です。

コンビナート内にある土場。虫害防止のために様々な対応をしている
コンビナート内にある土場。
虫害防止のために様々な対応をしている

    「日本は山林がどこにでもあり、資源が豊富だ」などと言われ、すぐにでも木材が供給されると考えられがちですが、決してそうではないのです。近年、安定供給を阻害する懸念材料として、害虫被害(虫が原木の内部に孔を開ける被害)が深刻化しています。伐採から搬出、製品化の過程で、原木は土場(保管場所)で、しばらくの間自然乾燥を施します。通常梅雨の時期に虫が発生しますが、近年は気候温暖化の影響から害虫被害が3月から11月にまで拡大しています。被害が大きくなれば、品質が低下し価格が大きく下がることになり、安定供給の阻害要因になっているのです。

バイオマス燃料向けのチップ
バイオマス燃料向けのチップ

    川上の課題はこのほかにもあります。その1つが山林の集約化です。小規模な山林を集約化することで、作業の効率向上が図られ収益性が高まるほか、管理がしやすくなり山林がもつかん養(保水)性など多様な機能を維持しやすくなります。ただ、集約化には地籍問題が横たわっています。伐採には土地の位置や境界、面積などを明確にすることが求められ、これを疎かにすると、山林所有者とのトラブルの原因となります。このため、所有者を1人ひとり確認する必要があり、なかには調査を完了するのに100年くらいかかるという自治体もあります。なお、地籍調査の進捗率は全国平均が約53%(山林に関しては47%)、佐賀県は99%で全国1位です。

タマゴが先かニワトリが先か

 ──建築物の木造化という出口だけでなく、入り口である山側の状況も改善すべきということですね。

 伊東 どちらも大切で、「タマゴが先かニワトリが先か」の議論になってしまいますが、入り口の状況の改善が今後の木材産業の活性化に向けて不可欠なのはたしかです。とはいえ出口についても、SDGsに代表される持続可能性への関心の高まりがある一方で、多くの住宅企業ではいまだに輸入材への依存度が高いなど、国産材の活用促進はまだまだスピード感が乏しい状況です。当社は九州で事業を展開しており、ネットワークは全国におよび、国や自治体、全国展開するハウスメーカーや商社などとのつながりもあります。そうした強みを生かし、川上の現状を広く伝えること、さらにコンビナート事業を中核にしたシステム販売により安定的な収益を上げ、利益を川上に還元する仕組みを継続することで、国産材活用の拡大に貢献していきたいと考えています。

【田中直輝】


<COMPANY INFORMATION>
代 表:伊東貴樹
所在地:佐賀県伊万里市山代町楠久津145-30
設 立:1960年11月
資本金:1,000万円
TEL:0955-20-2183
FAX:0955-28-2855
URL:https://www.imarimokuzai.co.jp/

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