2026年上半期 福岡市の開発動向 市内5区で計画数増加

100戸超の規模は減少

 福岡市内に設置された標識情報を基に、市内における2026年上半期(1~6月)の開発動向を追った。共同住宅(木造を除く)の計画戸数は4,363戸で、25年下半期(7~12月)比で112戸の増加となった。総戸数100戸超の計画は、25年下半期の7棟に対して3棟にとどまったものの、市内7区中5区で計画戸数が増加した。100戸超の計画に関しては、日鉄興和不動産(株)住宅事業本部が博多区で(仮称)千代2丁目マンション(ワンルーム168戸/設計者:(株)テクノ・アート)を計画するほか、九州旅客鉄道(株)・(株)タカラレーベン・三菱地所レジデンス(株)の3社による(仮称)福岡市中央区那の津共同事業計画(ワンルーム外201戸/設計者:(株)INA新建築研究所西日本支社)や、積水ハウス(株)による(仮称)福岡市早良区百道浜2丁目計画(ワンルーム外185戸/設計者:(株)IAO竹田設計)があり、地場企業の計画が目立った25年下半期とは打って変わって、県外企業が存在感を放つ結果となった。

 25年下半期比で計画戸数が増加したのは東区(55戸増)、中央区(71戸増)、南区(206戸増)、城南区(7戸増)、西区(118戸増)の5区で、減少したのは博多区(266戸減)と早良区(79戸減)の2区。ただ、博多区は計画戸数こそ減少したが、依然として計画戸数1,000戸超で推移している。早良区も計画戸数は減少したが、前出の積水ハウスによる100戸超の大型計画があるほか、四箇4丁目で多目的グラウンドを備えた早良運動公園(約4.5ha)の整備も計画されている(【表1】参照)。

表1

 マンション以外で目立つのが、ホテルと事務所。ホテルの計画棟数は25年に49棟が確認され、コロナ禍前を上回ったが、26年上半期の計画棟数はすでに40棟を超えており、年間の計画棟数50棟超えは確実視される。判明した計画のなかで注目されるのが、ファーストコーポレーション(株)(東京都杉並区、東証スタンダード)による(仮称)須崎町ホテル計画(RC造・地上10階建、客室数72室、延床面積3,140m2/営業予定者:(株)Local Design)。(株)フジタ(東京都渋谷区、大和ハウスグループ)西日本開発事業部による(仮称)福岡中洲ホテル(RC造・地上11階建、客室数120室、延床面積2,795m2/営業予定者:未定)。

4_多くの財界人が訪れた老松 2025年10月頃撮影
多くの財界人が訪れた老松 2025年10月頃撮影

 また、博多区中洲中島町で営業していた老舗料亭・老松跡地と隣接ビルを伊藤忠都市開発(株)(伊藤忠グループ)と(株)クラフティア(九州電力グループ)が取得しており、ホテルを含め再開発が計画されている。事務所では、計量機の販売などを手がける関西イシダ(株)(大阪府吹田市)が博多駅南で西日本イシダ(株)社屋新築(S造・地上5階建、延床面積3,650.50m2)を計画するほか、業務用冷蔵庫・冷凍庫の製造などを手がけるフクシマガリレイ(株)(大阪市西淀川区)も博多駅南で(仮称)フクシマガリレイ(株)九州支社(S造・地上4階建、延床面積2,946.18m2)を計画している。老人ホーム単独の計画はゼロとなったが、複合施設へのテナント入居は確認された。延床面積の合計は、25年下半期比で27万3,873.29m2減となった(【表2】参照)。

表2

博多区
計画は1,400戸超で首位

 26年上半期の計画戸数は1,452戸で、25年下半期比で266戸減となった。博多駅南や比恵町など、JR博多駅周辺エリアでの計画はもちろんのこと、古門戸町・神屋町といった博多旧市街エリアや、南区(井尻・五十川)と接する諸岡、下町情緒を残す美野島でも複数棟の計画が確認された。とくに神屋町では、マンションからホテルまで複数の計画が集中しており、今後街並みの更新が加速していくことになる。その他のエリアにおいても計画が散見され、広範囲にわたり企業や投資家の博多エリアに対する投資意欲が高まっていることがうかがえる。

 上半期に明らかとなった計画のなかで注目されるのは、JR博多駅から博多港へとつながる大博通りにも近い場所で計画されている、(仮称)エンクレスト神屋町。建築物の概要はRC造・地上15階建、延床面積3,407.17m2、ワンルーム98戸。建築主は(株)えんホールディングス、設計者は(株)テクノ・アート。そのすぐそばでは(仮称)MODERN ASPIRATION神屋町も計画されている。建築物の概要はRC造・地上10階建、延床面積788.41m2、ワンルーム外9戸。建築主は(株)recens(東京)、設計者は(株)モダンプロジェとなっている。

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 recensはこのほかにも神屋町で、(仮称)MODERN ASPIRATION神屋町A棟・B棟を計画している。また、JR博多駅から徒歩15分程度の、博多駅南3丁目のスーパー・マックスバリュエクスプレス博多駅南店側では、ハイグレード賃貸マンション「Axion®(アクシオン)」シリーズを展開する(株)柴田産業が、ホテルや共同住宅(ワンルーム36戸・ワンルーム外3戸)が入る新社屋を計画している。建築物の概要は、RC造・地上14階建の延床面積4,551.76m2(ホテル部分792.61m2)。ホテルの客室数は12室で、営業は(株)BEADが行う。設計者は(株)栄和設計コンサルタント。

 このほかにも、個人による(仮称)吉塚7丁目マンション(RC造・地上9階建/延床面積2,373.58m2/ワンルーム47戸・ワンルーム外16戸/設計者:大東建託(株)福岡支店)や、(株)ウインズビルによる(仮称)中洲4丁目テナントビル(RC造・地上7階建/延床面積590.18m2/(有)I・O設計室)などが計画されている。

東区
人口34万人超を維持

 25年下半期比で55戸増の524戸となった東区。区内の人口は34万2,552人(福岡市推計人口・26年6月1日現在)で市内最多であるほか、出生数も市内最多の213人(福岡市人口動態・26年5月中)。市外からの転入者数は1,507人(同)で、市内7区中では博多区に次いで2番目に多く、市内におけるボリュームゾーンとして存在感を発揮し続けている。また、日本三大八幡宮に数えられる筥崎宮をはじめ、香椎宮や蒙古塚などの歴史的建造物と史跡が残る一方で、九州大学箱崎キャンパス跡地で進む国内最大級のスマートシティ開発などの新たな都市開発が複数エリアで進行する、伝統と先進的な都市機能が共存するエリアとなっている。

 注目されるのは、(株)アライアンスによる(仮称)クラブスタイル箱崎1丁目。福岡市地下鉄箱崎線・箱崎宮前駅まで徒歩10分圏内の現在は駐車場となっている場所で計画されており、建築物の概要はRC造・地上6階建、延床面積1,950.34m2、ワンルーム外18戸。設計は(株)アルシスホームとなっている。また、同駅から徒歩10分程度の馬出御所ノ内公園側では、GLC(株)による(仮称)LIBTH箱崎1丁目_229が計画されている。建築物の概要は、RC造・地上10階建、延床面積1,495.63m2、ワンルーム45戸。設計者はLIBTH DESIGN一級建築士事務所で、9月頃の着工を予定している。

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中央区
計画戸数増加に転じる

 26年上半期の計画戸数は、25年下半期比71戸増の810戸となった。計画戸数が前期比増となるのは、24年下半期以来。牽引役となったのは、前出の(仮称)福岡市中央区那の津共同事業計画。建築物の概要は、RC造(一部S造)・地上18階建、延床面積20,700m2、ワンルーム外201戸。建築主は九州旅客鉄道・タカラレーベン・三菱地所レジデンス、設計者はINA新建築研究所西日本支社で、着工は10月頃を予定している。計画地はボートレース福岡側のガスステーション跡地など。近接地では国内最大級の屋内スケートボード場所・天神ストリートパークも計画されており、同パークは26年10月30日オープン予定となっている。建築主の3社はそれぞれMJR、レーベン、ザ・パークハウスと自社のマンションブランドを有しており、マンション名に何が採用されるのかという点でも注目される。天神やその近接エリア(大名・警固など)では、福岡市も福岡アジア美術館の分館新設(警固公園地下、概算工事費約140億円)を計画するなど、官民双方で積極投資が行われており、結果として開発用地の取得が困難になっている様子がうかがえる。それでも計画戸数は博多区に次いで2番目に多く、商業・ビジネス拠点として高い人気を誇っている。

 注目されるのは、recensによる(仮称)MODERN ASPIRATION警固1丁目(B棟)。建築物の概要はRC造・地上11階建、延床面積876.78m2、ワンルーム外9戸。設計者はサンケンアーキテクツ(株)で、8月頃の着工を予定している。また、タカラレーベンが地下鉄七隈線・薬院大通駅から徒歩3分程度の場所で、(仮称)レーベン薬院を計画。建築物の概要はRC造・地上12階建、延床面積2,818.89m2、ワンルーム外33戸で、設計者は(株)アーキスタイルとなっている。

(仮称)レーベン薬院 6月撮影
(仮称)レーベン薬院 6月撮影

 このほか、天神5丁目でBEADが(仮称)天神5丁目プロジェクト(RC造・地上9階建、延床面積448.26m2、設計者:(株)R.E.D建築設計事務所)を、(株)トリビュートが(仮称)高砂ホテルプロジェクト(S造・地上4階建、延床面積260.80m2、設計者:旭化成ホームズ(株)福岡)を計画するなど、新たなホテルが複数棟誕生予定となっている。

南区
高宮・大橋で計画目立つ

 25年下半期比で、最も計画戸数が増加した南区。計画戸数は674戸で全7区中3位に躍り出た。南区の計画戸数は24年下半期以降増加傾向で推移しており、西鉄天神大牟田線・大橋駅前の複合商業施設・OHASHI HILLのオープンや、ららぽーと福岡の開業にともなう動線変化が、エリア全体の再開発を誘発しているものと考えられる。

 注目されるのは、(株)ネストによる(仮称)高宮マンション。建築物の概要はRC造・地上5階建、延床面積730.74m2、ワンルーム外10戸。設計者は(株)大塚建築計画設計事務所となっている。このほか、GLCの(仮称)LIBTH大橋2丁目_233(RC造・地上7階建、延床面積876.94m2、ワンルーム24戸、設計者:LIBTH DESIGN一級建築士事務所)や、個人による(仮称)高宮1丁目ビル(RC造・地上4階建、延床面積783.53m2、ワンルーム外10戸、設計者:照栄建設(株))も計画されており、高宮・大橋エリアでの計画が目立つ結果となった。

(仮称)高宮マンション 6月撮影
(仮称)高宮マンション 6月撮影

西区
姪浜駅周辺が活況

 計画戸数は379戸で、25年下半期比で118戸増となった西区。マンション開発はJR九大学研都市駅周辺エリアでの計画に加えて、西の玄関口・姪浜エリアでも活況を呈している。とくに地下鉄空港線・JR姪浜駅周辺での計画が目立ち、都心部である天神・博多までの交通利便性が後押しになっているものと考えられる。

 注目されるのは、姪浜駅まで徒歩10分程度の場所で計画されている、(仮称)グランフォーレ姪の浜六丁目。建築物の概要はRC造・地上14階建、延床面積4,279.55m2、ワンルーム外52戸で、建築主は(株)コーセーアールイー、設計者は(株)JIN建築設計となっている。姪の浜6丁目では、大英産業(株)も(仮称)サンパーク姪浜駅北(RC造・地上11階建、延床面積1,806.89m2、ワンルーム外20戸、設計者:(株)サンユニオン)を計画。このほか、姪浜駅まで徒歩13分程度の場所で営業していたレジャーホテル・tabasa サンレモが解体工事中であり、同駅周辺における開発機運は依然高まり続けている。

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 ほかに、九大学研都市駅から徒歩10分程度の、ディスカウントストア・ダイレックス伊都店側では、セントラル総合開発(株)九州支店が(仮称)九大学研都市Ⅲプロジェクトを計画。建築物の概要は、RC造・地上8階建、延床面積2,389.67m2、ワンルーム外27戸。設計者は(株)ATOM建築設計室で、7月頃の着工を予定している。

城南区・早良区
県内外企業が早良区で計画

 城南区・早良区の26年上半期における計画戸数はそれぞれ149戸・375戸で、城南区は25年下半期に続いて100戸超えとなった。早良区は減少となったものの、積水ハウス(株)や西日本鉄道(株)、辰巳開発(株)など、福岡県内外の企業による計画が見受けられ、前出の早良運動公園整備計画も含め、今後のまちづくりが注目される結果となった。城南区では別府や梅林など、地下鉄七隈線沿線エリアでの計画が目立った。一方、早良区では従来から一定の開発需要があった地下鉄空港線沿線エリアからは少し離れた、荒江や祖原といった落ち着いた雰囲気の住宅街での開発が目立った。

 城南区で注目されるのは、地下鉄七隈線・七隈駅から徒歩10分圏内のロワールマンション城南側で計画されている、七隈六丁目RCアパート。建築物の概要はRC造・地上6階建、延床面積1,136.28m2、ワンルーム25戸・ワンルーム外4戸。建築主は(株)カミケン、設計者はみのわ建築DESIGN一級建築士事務所となっている。

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 早良区で注目されるのは、空港線・藤崎駅から徒歩16分程度の、マルショク昭代店側で計画されている(仮称)荒江三丁目マンションⅡ。建築物の概要はRC造・地上8階建、延床面積5,554.13m2、ワンルーム外57戸。建築主は九電不動産(株)、設計者は(株)エヌプラスアーキテクトデザインオフィスで、9月頃の着工を予定している。

区内全域に広がる民間投資

 26年上半期は、福岡市内7区中5区で計画戸数が増加するなど、市内における投資対象地域に広がりが見られる結果となった。博多区は引き続き高い開発需要を維持し、中央区では那の津など天神近接地で大規模開発が進行。南区でも大橋駅周辺を中心に再開発機運が高まっているほか、西区でも都心部への交通利便性を背景に、姪浜や九大学研都市駅周辺でマンション開発が再び活発化している。マリノアシティ福岡跡地では「(仮称)三井アウトレットパーク 福岡」が27年春開業予定で、約200店舗を擁する九州最大規模の商業拠点として計画されており、西区のシーサイドエリア・小戸の賑わい創出を後押しする存在として注目されている。マンション以外でも、ホテルや事務所、市による文化施設への投資も旺盛であり、住宅・観光・ビジネス・公共空間が一体となってまちづくりが進んでいる。成長都市として発展を続けられるのか、副首都構想の動向と合わせて、福岡市の将来性に対する期待感が高まっている。

【代源太朗】

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