高島市政の16年間で人口が20万人以上増えた福岡市。冠婚葬祭事業者にとっても、人が集まる都市は恵まれた市場だった。しかし、葬儀の現場では小規模化が進み、寺や墓との付き合いも薄れている。都市の成長とは対照的に変化してきた葬儀や供養への意識を、市内の冠婚葬祭事業者A氏の話から探る。
人口増がもたらした恵まれた市場環境
福岡市の人口は、高島宗一郎市長が就任した2010年の146万3,743人から、15年には153万8,681人、20年には161万2,392人と増加。26年10月1日現在では167万1,323人に達した。各年10月1日で比較すると、この16年間で20万7,580人、14.2%増加したことになる。
「福岡は元気のいい町」。市内の冠婚葬祭会社で代表を務めるA氏は、若い世代が転入し、高齢者も暮らす福岡の市場環境をこう評価する。家族で移り住む人が多く、周辺にも春日市や大野城市など人口を抱える自治体がある。
ただ、人口の増加により、葬祭事業者がその恩恵を純粋に受けられるわけではなかった。葬儀の現場では、故郷の寺や墓との付き合いが次の世代に伝わらず、供養の習慣が家庭から遠ざかっているという。
若い世代の流入と薄れる供養の習慣
人口増加を支える一因が、若い世代の流入だ。福岡市の資料によると、20~24歳の転入超過数は、2010年の3,073人から23年には6,413人に増えている。転入超過数は、転入者数から転出者数を差し引いた人数である。
こうした若い世代の流入は、葬儀や供養の在り方にも関係しているのだろうか。A氏が指摘するのは、故郷を離れて福岡で暮らすうちに、徐々に寺や墓との付き合いが途絶え、供養そのものへの意識も薄れつつあることだ。
地方の実家には仏壇があっても、福岡に移り住んだ子ども世代の家庭にはない。そのような家庭で育った子どもは、墓参りや寺を訪ねる習慣に触れる機会が少なくなる。供養に触れる機会が少ないまま育ち、葬儀の際、自分の家と付き合いのある寺がどこなのか分からない例もあるという。
人口の増加に反比例して小規模化する葬儀
葬儀では、近親者を中心とした家族葬に加え、通夜を行わず、葬儀・告別式を一日で済ませる「一日葬」も選ばれるようになった。参列者が減る背景には、友人や知人がすでに亡くなっていたり、身体的な負担から出席できなかったりする高齢化の事情もある。
また、A氏が経験した親族の葬儀では、遺族は墓参りをしたことがなく、家には仏壇もなかった。そこでA氏が寺を紹介し、葬儀の後は納骨堂を利用することになったという。葬儀に集まる人数だけでなく、寺や墓との関係を家族がどこまで知っているかも、現場で向き合う問題となっている。
墓の在り方も変わりつつある。故郷にある先祖代々の墓を引き払い、現在暮らしている地域で納骨先を探す家族もいる。A氏は、一族で墓を守るかたちから、夫婦や家族単位で納骨するかたちへと移行していくとみている。
もちろん、若い世代の流入が供養の意識を薄れさせたと、統計だけで判断することはできないが、人口が増え続けた福岡で、故郷の寺や墓との関係を引き継がない家庭があることもまた事実だ。都市の成長を示す人口の数字と、A氏が葬儀の現場で見てきた変化は、必ずしも比例していない。
【松下森音】










