弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(3)
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空き家問題
空間供給産業のなかでとても大きな課題に、“空き家問題”がある。2018年に行われた住宅・土地調査(総務省)によると、日本全体の住宅総数は6,241万戸で、うち13.6%に当たる849万戸がすでに空き家となっているという。マンション総戸数も654万7,000戸に上るが、こちらには老朽化という課題もある。世帯数の推移を見ると23年の5,419万世帯がピークで以後は減少し、2040年には5,076万世帯になると予測されており、つまり、今後人口と世帯数の減少により、住宅需要の先行きは頭打ちになるのは明白だということだ。
約6,200万戸の住宅ストックの多くが有効に活用されているならまだしも、7戸に1戸が空き家状態であり、人口減少が加速するなかで同じペースで新築を建て続けているのが日本の現状だ。人口と世帯数の構造変化に対応した住宅政策が、とられてきていないのだ。
欧州では、中古住宅を明白に優遇している。次世代の空間産業をどのように導いていくか、新築はほどほどにして今ある膨大なストックのなかから優良物件を見つけ出す政策など、日本でも新築から中古に舵を切るべきときが来ているのではないだろうか。
日本の住宅政策
広めの賃貸に住むという選択肢が少ない日本の住宅事情のなかで、政府はアパートを振り出しにして、“少し広めの公営などの賃貸”から“マンションへと住み替え”、そして“戸建を中心とした持ち家”がゴールという「住宅スゴロク」のような人生指標を勧めた。住宅購入する中間層への金融支援を政策の軸とし、住宅ローン減税や固定資産税・都市計画税といった地方税の一部減免など新築優遇が行われてきた一方、中古物件ではこのような優遇が新築と比べて限られてきた。また、中古住宅が価値ある「商品」として需要されるためには、住宅の所有者がその価値を維持するようなリノベーションやリフォームを行い、その投資が中古住宅の価値に反映されることも必要だが、そのような建物部分への改修投資が評価されることは少ない。
そもそも日本の消費者には中古物件の資産価値が見えづらく、中古が物件購入の選択肢に入らないことが多い。消費者が中古市場にアクセスしやすい環境に改善するためには、物件情報が消費者に開かれる必要がある。また、ライフステージの変化に対応した物件供給ができていない賃貸市場や、依然として広がる新築向けの宅地造成、住宅ローン減税などの新築優遇税制、その一方で中古住宅市場の不透明さなども影響している。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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