弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(2)
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制御システムをもつ都市
象徴的な転機がもう1つ。1976年の「第四次福岡市総合計画」に盛り込まれた「制御システムをもつ都市」(成長を自立・自制する仕組み)というキーワードだ。
適正な人口規模、良好な自然環境、居住環境を保全するという理念が踏まえられ、闇雲な開発はしないことを決定している。拡大こそ成長の原動力として、各都市が市街地拡大を可能な限り進めているなか、「コンパクトな都市づくりを目指す」という方針は、先見の明があったと言わざるを得ないだろう。
都市成長期にあえて拡大抑制することは当時、福岡市の経済成長の機会損失を招いたことに違いはないだろうが、急成長による拡大を追い求めなかったことは、周辺地域の地元経済が守られた側面もある。郊外の宅地を安く大量に提供して人口を取り込み、中心部の容積率を拡大して商業床面積を増やしていたら、それだけ周辺の自治体の人口や商業は大きなダメージを受けていただろう。
ちなみに、都市の拡張を意識的に制御して成功したと言われているのが、アメリカ・ポートランドだ。都市部と農地や森林などの土地利用を区分する「都市成長境界線」を1970年代に設定し、そこから先には拡大しないと決めて、それを遵守してきた。開発を認める都市部と認めない郊外を分け、農地や森林を保全すると同時に、都市部では機能がコンパクトに集中した効率的な生活を営めるようにしたのだ。境界線の外では農業が盛んに行われ、農家は都市部に住む住民や企業に向けて新鮮な農産物を届けることで共存している。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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