弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(2)
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リノベーションという手法
「東京R不動産」は、従来の広さや築年数などによって評価される不動産市場の古い基準を変えて、「眺望GOOD」や「レトロな味わい」などの感情的アイコンを織り交ぜて物件紹介する不動産サイトだ。東京都心の特徴ある物件を紹介・仲介するだけでなく、「福岡R不動産」をはじめとして全国各地で同様のサービスを現地企業と提携し、まったく新しい評価軸で不動産市場を活性化している。「弱み」である“古い”というイメージを、借り手のアイデアで自由に変えられるという「強み」に変える、リノベーションという手法だ。
人気ある古い市場を行政や不動産デベロッパーが再開発した結果、どこにでもあるような居酒屋チェーンビルができあがり、結果として人が寄り付かないビルとなる事例がある。理論上、平屋よりも5階建てのビルに建て替えて、地元テナントよりも東京資本のチェーン店に1棟借りしてもらえたほうが、ビジネスとしては“美味しい”。自治体としても土地の高度利用ができ、経済も局所的には伸ばせるだろう。しかし、都市全体を俯瞰して見た場合には、地域の独自性が失われていくリスクがあることも知っておかねばならない。かつて福岡市が伝統的な屋台を残したように、古いビルや店舗を残していくことがむしろ、都市独自の競争力になることもあるのだ。
内部の設備機能を更新し、建物の外観を変え、そして人の流れが変わる。規模は大きくなく、やや古めかしさを感じる拠点がぽつぽつと現れてくると、地域エリアに変化が生まれる。そんな都市に注目が集まっている。床面積が広すぎず、坪単価の高すぎない個性的で魅力に溢れたビルは、若い経営者が新しいコンセプトの飲食店や小売店を出店しやすく、再開発ビルなどにない地域独自の多様性を生み出すきっかけにもなっていく。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
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