弱みを生かした福岡の都市づくり再考「遅い開発」と中古市場の親和性(2)
-
「遅い開発」で地域を拡大しない
伸び代があっても開発を進めすぎないという「遅い開発」という手法は、周辺都市を含む広域都市圏全体の“持続的な成長”の可能性を高めるかもしれない。都市経営戦略では、「歴史」「文化」などの強みから成長戦略を描くのではなく、弱みをどのようにして強みに変えるか、そのベクトルを考え出すほうに力を注ぐことが効果的なのかもしれない。少なくとも福岡市は、「遅い開発」と独自の弱みを武器に変える戦略で、都市成長を加速させてきたのだ。
神戸市の取り組みを紹介する。神戸市は20年7月から、中心部の三ノ宮駅周辺の22haで新築を禁止した。元町駅や神戸駅周辺の292haでは、新たに建設する住宅部分の容積率を400%に抑え、実質的にタワーマンションの建設を禁止する条例を制定した。「人口減少で他の都市を出し抜くとか奪い合いをする発想で都市経営はすべきではない」(神戸市長)。タワーマンション開発によって人口増著しい川崎市に、神戸市は人口で抜かれたが、同様の人口競争を続けることから方向転換し、新築抑制の動きを見せている。
福岡市の都市経営
社会が成熟するなかで、都市は工業で稼ぐところではなくなり、より安全で健康に暮らすところへとシフトしていっている。日本の地方活性化政策では、郊外モール開発や都市部の再開発事業によって、新たな商業施設を積極的に推進している。しかし、出店するテナントは地域外資本ばかりで、地元資本のシェアは下がる一方だ。地域活性化のために行ったはずの事業が、実は地元消費を東京や海外企業へ流しているだけだったというのは、よくある話。気が付けばどこにでもある商業施設になり、そのまちへ訪れる理由を失うことにもなる。
チェーン店の売上は、仕入れや雇用や再投資などで利益が地元に落ちるのは3~4割程度だが、地元店舗なら6~7割が地元に落ちるといわれている。店舗での雇用は地元民が採用されることはあるものの、本社業務のような都市経済を支えるものはそこに実在せず、大きなお金が地域に落ちない。都市経済で大切なのは地元資本企業が生産性を高め、独自のサービスで地域消費を回すこと。そして余力を活用して地域外への輸出で稼ぐサイクルをつくっていくことだ。そのときに有効になる手段として、「リノベーション」を紹介したい。
<プロフィール>
松岡 秀樹(まつおか・ひでき)
インテリアデザイナー/ディレクター
1978年、山口県生まれ。大学の建築学科を卒業後、店舗設計・商品開発・ブランディングを通して商業デザインを学ぶ。大手内装設計施工会社で全国の商業施設の店舗デザインを手がけ、現在は住空間デザインを中心に福岡市で活動中。メインテーマは「教育」「デザイン」「ビジネス」。21年12月には丹青社が主催する「次世代アイデアコンテスト2021」で最優秀賞を受賞した。月刊誌 I・Bまちづくりに記事を書きませんか?
福岡のまちに関すること、再開発に関すること、建設・不動産業界に関することなどをテーマにオリジナル記事を執筆いただける方を募集しております。
記事の内容は、インタビュー、エリア紹介、業界の課題、統計情報の分析などです。詳しくは掲載実績をご参照ください。
企画から取材、写真撮影、執筆までできる方を募集しております。また、こちらから内容をオーダーすることもございます。報酬は1記事1万円程度から。現在、業界に身を置いている方や趣味で再開発に興味がある方なども大歓迎です。
ご応募いただける場合は、こちらまで。その際、あらかじめ執筆した記事を添付いただけるとスムーズです。不明点ございましたらお気軽にお問い合わせください。(返信にお時間いただく可能性がございます)関連キーワード
関連記事
2024年5月5日 06:002024年5月2日 15:452024年5月2日 11:302024年5月2日 18:002024年5月2日 17:502024年5月1日 15:002024年4月25日 14:00
最近の人気記事
まちかど風景
- 優良企業を集めた求人サイト
-
Premium Search 求人を探す
- 業界注目!特集
-
産廃処理最前線
サステナブルな社会を目指す
- MAX WORLD監修
-
パーム油やPKSの情報を発信
パームエナジーニュース