ウクライナの復興ビジネスで大儲けを目論むトランプ大統領(後)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸

 ウクライナ戦争が始まる前から、ロシアもアメリカも、そして中国もウクライナの鉱物資源に狙いを定めていました。世界が必要とするグラファイト、リチウム、チタニウム、ベリリウム、ウラニウムなど鉱物資源がウクライナには大量に眠っているからです。

 アメリカのグラハム上院議員曰く「ヨーロッパで最大のレアアースを保有するのはウクライナだ。7兆ドル分に達する。またアフリカに輸出されている穀物の50%はウクライナ産に他ならない」。こうしたウクライナ産の鉱物や食糧資源を確保しようというのがトランプ大統領とその取り巻きの投資ファンドの意向です。

 欧米の投資ファンドや近場のチェコやポーランドの建設会社は「ウクライナの復興ビジネスで大儲けできそうだ」と、虎視眈々とゼレンスキー政権に食い込んでいます。実は、ウクライナ政府の公式ウェブサイトを見ると、「ウクライナには豊富な地下資源や木材、塩など天然資源が存在しています。投資大歓迎です」と宣伝文句が並んでいるほどです。

 しかし、主な鉱物資源はすでにロシアが占領しているウクライナ東部に集中しています。そのため、トランプ大統領はプーチン大統領と手を握り、「資源開発と積み出しはアメリカ企業に任せてくれ」と水面下で交渉を進めている模様です。表向き、プーチン大統領に愛想を尽かしたと述べているトランプ大統領ですが、裏ではしっかりと手を結んでいると思われます。何しろ、こうした鉱物や食糧の資源価値は26兆ドルと推定されているからです。

 このところ、ウクライナ政府の要人が相次いで日本を訪れています。彼らが口をそろえていうのは「日本の戦後復興や原発事故からの立ち直りで見せた経験や技術を学びたい」という“日本礼賛”です。その裏には、復興に必要な資金は日本に提供させようという強かな計算があるに違いありません。

 世界最大の金融ファンド「ブラックロック」や「JPモルガン・チェース」はゼレンスキー政権とすでに交渉を重ね、100兆円を超える復興資金を世界銀行や日本から調達する動きを加速させています。日本は相変わらず、欧米ファンドの食い物になっているとしか言いようがありません。

 ゼレンスキー大統領の要請を受け、NATO軍は対ロシア戦線を拡大する動きを見せ始めました。そのため、対抗上、プーチン大統領はオレシュニク準中距離超音速弾道ミサイルの配備を進めています。このマッハ10を超える最新鋭ミサイルは多弾頭で、ウクライナのキーウはもとより、ヨーロッパ主要国の首都を同時に数分以内に攻撃、破壊できるとのこと。ヨーロッパの現状は「言葉のミサイル」が飛び交っているだけですが、いつ、本物のミサイルが発射されることになるのか予断を許しません。

 トランプ大統領も危機感を募らせているフリをしていますが、「ヨーロッパのことはヨーロッパが対応すればよい」と、あくまで「アメリカ・ファースト」路線を貫いています。

 しかし、このままではヨーロッパにおける戦線が拡大し、死傷者の数がうなぎ上りで増えるはずで、いつ第3次世界大戦に発展するかもしれません。

 このところトランプ大統領は「関税」大砲を敵味方関係なくぶっ放していますが、自国民からも悪評が絶えません。アメリカでは1ドルショップなどの安売り店で値上げラッシュが起きています。中国やベトナムなどアジアからの衣料品や医薬品への高関税が課せられた影響で、物価高とインフレの津波が押し寄せているからです。トランプ大統領は外国からの輸入品に高関税を課すことで、アメリカ国内に製造業や雇用を呼び戻すと訴えています。

 しかし、自由貿易の原則を踏みにじるような一方的な関税措置は国家関係に悪影響をもたらし、歴史を紐解くまでもなく、最悪の場合には戦争を引き起こすこともあり得る話です。とくに、アメリカと中国の間では「言葉のミサイル」が飛び交っています。

ウクライナ ロシア イメージ    そんな折、アメリカでは衛星画像の分析を専門とする研究機関から衝撃的な報告がありました。何かといえば、世界史上、最大規模と目される地下の軍事司令基地が北京郊外に建造中であるというのです。何しろ、敷地面積は1,000エーカーを超えています。

 経済力や軍事力でアメリカに追いつき、追い抜こうとする中国ですが、1980年代から米中対決に備える目的で主要都市に地下壕や地下都市の建設を進めてきていました。しかし、それらと比べ規模がけた外れに大きいため、「世界の軍事バランスを塗り替える意図が秘められているに違いない」とアメリカの軍事専門家の間では関心を呼んでいます。

 ただでさえ、関税戦争の影響で、中国はアメリカの軍需産業の命綱とも見なされているレアアースなど鉱物資源の対米輸出をストップしています。このままでは、アメリカが必要とするミサイルやドローン、ステルス戦闘機の製造に支障が出ることは避けられそうにありません。

 困ったアメリカはウクライナと交渉し、必要な鉱物資源の入手ルートを確保しようと動いていますが、レアアースなど主な資源はロシアが押さえているウクライナ東部に集中しているため、アメリカの思うようには行かないので、水面下でのプーチン大統領との交渉に望みを託しているに違いありません。

 終わりの見えないウクライナ戦争をいいことに、トランプ政権からは日本の防衛力強化や予算拡充の要求が相次いでいます。日本の政府内では「2027年までにGDP2%の目標では少な過ぎる」との受け止め方も出てきました。なぜなら、現状では自力での日本防衛も米国との共同軍事作戦の展開も心もとないと思われるからです。とはいえ、参議院選挙で劣勢が伝えられる石破政権とすれば、防衛費の増額はタブー視せざるを得ません。

 注目すべきは、トランプ大統領には国家とか主権意識が希薄で、モンロー主義に戻ろうとしているように見えることです。同大統領の関心はビジネス中心であり、すでに述べたように、ウクライナに関していえば、ウクライナの穀物資源や地下に眠る鉱物資源の利権の獲得に置かれています。いうまでもなく、トランプ大統領もゼレンスキー大統領も「戦争ほど儲かるビジネスはない」との発想の持ち主であるため、プーチン大統領が語るように「この戦争はまだ5年は続く」といった厳しい近未来を覚悟する必要があります。

(了)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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