• このエントリーをはてなブックマークに追加
2016年08月03日 07:05

天才投資家ジョージ・ソロスと冒険投資家ジム・ロジャーズの中国分析から何を学ぶか(1) 未来トレンド分析シリーズ 

国際政治経済学者 浜田 和幸 氏

 このところ、“ヘッジファンドの雄”と異名をとるジョージ・ソロスが注目しているのが、中国の動きである。というのも、日本で広がる「中国崩壊説」や「中国脅威論」と違い、同氏の見立てによれば、「中国は遅かれ早かれアメリカを抜き、世界経済の新たな牽引車として君臨するだろう」と目されるからだ。「中国の夢」を掲げ、アジアインフラ投資銀行(AIIB)をテコに、世界のインフラ整備に邁進する中国の習近平国家主席。金融面でも中国は人民元の取引市場をロンドンとニューヨークに開設すると2016年6月に発表した。
 しかし、14年以降、ソロスは「中国と日本を含むアメリカの同盟国との間で、第3次世界大戦が起こる可能性が高まっている」との衝撃的な発言を繰り返すようになった。南シナ海での岩礁埋め立てや中国によるものと思われるアメリカ政府機関へのサイバー攻撃などが顕在化している動きに加え、中国内部の「奥ノ院」からの独自情報に基づく判断のようだ。

china-min 中国と周辺国との軋轢は、「沸点に達している」とソロスが指摘するように、激化する一方であり、そうした目に見えるかたちで深刻化する事態を危惧してのことであろう。とくに、アメリカの大統領選挙戦における候補者の中国敵視的発言に、中国は相当神経を尖らせているようだ。同氏の警告を待つまでもなく、こうした緊張状態が続けば、一触即発の事態もあり得る。

 当然のことながら、係わる分野が政治、経済、文化を問わず、中国とアメリカ、日本との間で軍事的な衝突が起こることも念頭に置き、冷静な情勢判断のレーダーを磨いておく必要がある。その点、中国内部に情報パイプを持つソロスの予測には無視できないものがある。我々もソロスの経験知から大いに学ぶことがあるはずだ。
 ソロスに言わせれば、万が一そのような事態になれば、「危機はアジアにとどまらず、中東、ヨーロッパ、そしてアフリカにまで広がる可能性が高い。なぜならアメリカの力が急速に衰えており、有効な歯止めをかけることができなくなっているからだ」。

 こうした事態を回避するためには、中国を国際的な金融および安全保障のなかに、いかに組み込むかという国際政治上の知恵が求められる。
 実は、ソロスの「オープン・ソサエティー」は中国においても、さまざまな活動を展開してきている。中国国内の民主化や自由主義経済を推進することを目指しているようだが、中国政府はそうした動きを警戒し、さまざまな介入や嫌がらせを続けているという。

 かつてはロシアのプーチン大統領も、「ソロスがグルジア(現・ジョージア)やウクライナで政府の転覆計画を進めているのではないか」と疑っていたようだが、それと同様の警戒心が中国政府当局にも見られるというのである。ソロスは、こうしたロシアや中国の見方は「誤解と偏見に基づくもの」と一笑に伏している。
 それどころか、中国政府から要請があれば、中国の抱える環境問題やエネルギー問題などの解決はもちろん、このところ緊張状態に陥っている節の見られる北朝鮮との関係においても、「打開策に必要な資金援助も惜しまない」とまで発言している。

 とはいえ、ソロス自身がいまだに中国当局からは要注意人物と見なされているため、東欧や中南米で実現してきたような革命的変革を進めることは当面、中国では難しいとの認識である。とりあえず、ソロスが描いているのは、「第3次世界大戦を回避するためにも、中国との金融戦争を回避する方策を考えるべき」ということのようだ。
 人民元の国際化への動きはあるものの、まだ国際的な信認は得られていない。IMFのSDRを中国に与えることも、中国を国際的な仕組みのなかに組み込むうえで検討に値するとの考えを広めつつ、水面下で中国ビジネスのサバイバル環境を整えているのではなかろうか。実際、IMFはそうした決断を2015年末に下した。こうした流れを受けてのロンドンとニューヨークの人民元取引所の開設である。

 もちろん、表向き、急成長を遂げる中国に対しては、ソロスは投資家として今後も機会を逃さず、投資の拡大を目指しているとの発言を繰り返す。とはいうものの、中国政府の壁はいまだに厚いようだ。
 一方、中国市場で大きな成功を収めている外国の投資家は数限りない。日本勢の苦戦が続くなか、欧米の投資ファンドや製造業の中国での躍進ぶりが目立つ。

(つづく)

<プロフィール>
hamada_prf浜田 和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鉄、米戦略国際問題研究所、米議会調査局等を経て、現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選を果たした。11年6月、自民党を離党し無所属で総務大臣政務官に就任し、震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。
今年7月にネット出版した原田翔太氏との共著『未来予見〜「未来が見える人」は何をやっているのか?21世紀版知的未来学入門~』(ユナイテッドリンクスジャパン)がアマゾンでベストセラーに。

 
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

     

トップニュース

2021年02月28日 07:00

DXで顧客・従業員満足を実現~食品シェア、まず10%に引き上げ(後)NEW!

 『食品スーパーの出店は、今後も行っていく予定です。業態としては、通常のマックスバリュに加えて、都市型小型のエクスプレス業態も積極的に出店をしていきます。コンビニとの...

2021年02月28日 07:00

本社売却、史上最大の赤字・・・大きく揺れる電通(5)NEW!

 電通グループはビジネスモデルの転換を図る。旧来型代理店ビジネスからの脱却だ。旧来型代理店ビジネスの海外子会社の統廃合を進める...

2021年02月27日 07:00

DXで顧客・従業員満足を実現~食品シェア、まず10%に引き上げ(前)

 おりからの新型コロナウイルス感染拡大で総合スーパーは大きな影響を受けている。新型コロナをどう乗り切り、新たな成長につなげていくか、新会社の方針を柴田祐司社長に書面イ...

2021年02月27日 07:00

本社売却、史上最大の赤字・・・大きく揺れる電通(4)

 電通は2013年3月、英大手広告代理店イージス・グループを約4,000億円で買収した。電通にとって過去最大の買収額だ。電通がイージスを買収したのは、12年2月に仏広...

産学官連携の事業に積極的に取り組み 地域の発展に大きく貢献する

 もうすぐ26周年を迎えるコンダクト(株)は、次の30年に向けた5カ年計画を策定した。その中身は九州大学大学院と共同研究する『まちのコミュニティ×防災・防犯セミナー』...

2021年02月26日 18:08

【総務省接待問題】東北新社 社長辞任、菅部長は異動

 総務省接待問題を受け、東北新社は本日、二宮清隆代表取締役社長の辞任を発表した。また、菅義偉首相の長男の菅正剛統括部長に対しては、就業規則に基づき懲戒処分を行い、メデ...

2021年02月26日 17:35

【新型コロナ変異株】自民党が新型コロナ対策本部感染症ガバナンス小委員会を開催

 自民党は2月24日、新型コロナウイルス対策本部感染症ガバナンス小委員会を党本部で開催した。厚生労働省から新型コロナウイルスの「変異株対策の現状について」の発表が行わ...

2021年02月26日 17:23

コロナ禍で台湾が世界への協力をアピール!~Taiwan Can Help, Taiwan is helping.(1)

 新型コロナウイルス感染症対策で、台湾は世界でトップクラスの優等生である。マスク着用やソーシャルディスタンスなどの衛生管理は徹底されているが、テレワーク、オンライン授...

2021年02月26日 16:53

コロナとトランプの先に潜む新たなデータ覇権争いと人体への影響(前)

 アメリカで行われたバイデン新大統領の就任式は前代未聞であった。なぜなら「影の主役はコロナ」といっても過言ではなく、何から何まで“異例づくめ”の展開となったからだ...

GoTo緊急事態繰り返す菅二階内閣

 菅内閣の基本原則は「後手後手、小出し、右往左往」である。コロナ対策の後手後手対応は安倍内閣から引き継いだもの。昨年1月にコロナ感染が重大視された時点から、対応は後手...

pagetop