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2016年08月03日 14:27

流通業界の行く末――流通記者対談(前)

流通コンサルタント 神戸 彲  氏
流通ライター    宗像 三郎 氏

 全国各地で流通企業、スーパーマーケット企業の淘汰、再編が進行している。九州で先日起こった熊本地震が、再編を加速させる方向に影響することも予想される。勢力図は今後、どのような形になっていくのか。寿屋出店で(株)ハイマートの代表取締役社長を務めるなど、スーパー業界に長年携わってきた神戸彲氏と九州流通業界に精通するライター・宗像三郎氏の対談を開いた。

 ――今後の流通業界について、まずどのように予測していますか。

 神戸 スーパーマーケットというのは、市場環境に沿った形にならざるを得ない。淘汰、再編は自然な流れ。それと別に、少子高齢化や震災といった問題で経営が厳しくなっている側面がある。オーナー企業が経営を手放す状況が、ますます顕著になってくるだろう。
 以前のスーパーは苦しんでも経営を続けていたが、それは「明るい明日」が見えていたからこそ。僕らの頃は売上や給料が毎年必ず伸びていた。今は労務や調達上など諸々の問題でスーパーの経営は2世、3世の経営者にとって楽しくない。ならば、売れるうちに会社を売ってしまおうと考える。資産運用や売却差益であとは悠々自適に暮らそうと、経営を手放すオーナーは増えていくだろう。そのなかで、どこが強い存在感を示して勝ち残っていくかということになる。

supermarket1-min 宗像 神戸さんがはじめに言われたように、スーパーの再編は経済原理が働いている。プレーヤーの数が多すぎる。売上も給料も右肩上がりに増える時代であれば、同業者が増えたところでパイを分け合っていくこともできた。
 しかし、少子高齢化で中高年が増えると食も細る。人口減で市場規模も縮小する。さらに世界的なデフレで物の値段が上がらない。当然競争は激しくなる。
 最近特に多いのは、オーナー経営者が息子が会社を継ぎそうにないから売ってしまうというケース。2011年に、香川県を本拠地として四国や岡山に店舗を展開していたマルナカがイオン傘下に入った。外から見れば儲かっているし、売却する理由が見当たらないが、恐らく経営者がスーパー事業に未来がないと判断したのだと思う。去年の9月にはイズミがユアーズを買収した。オーナーは、もしかしたらまだやりたかったのかもしれないが、いずれにしても見切りをつけてスーパー事業から撤退していこうという流れは今後も強まっていくだろう。

 ――これまでスーパー業界に再編の動きはそれほどなく、平穏なものでした。

 神戸 今はオーバーストア化が進行している。30年前のスーパー、日本型GMSの坪当たり販売額は、年間400万円だった。それが今や160万円ほど。約4割にまで落ち込んだ。経費が同じであれば、売上が減った分、経費率が高くなってしまう。経費を落とせばサービスが下がり、ますます客が来なくなる。
 プレーヤーが多すぎる場合、適正な数字まで落ち込んでいくしか対策のしようがない。適正な数字に落ち着いたとしても、違う業態が乗り込んでくる。変革する以外に生きていく道はない。
 例えば、成城石井やハローデイのようなクオリティ型の店舗。このような業態にするには経営者の勇気がいる。誰もがやらないことをやるというのは、サラリーマン経営者、いや普通のオーナー経営者が真似しようと思ってできるものではない。こういう企業はそれなりに生きていける。ただし、それでも価格の競争から逃れられない。
 価格が高くても、品質や快適さで優っているなら買い物するという消費者は、全体の5%程度。つまり、市場はない。アメリカのホールフーズ・マーケットやフェアウェイマーケットも店舗網を拡大した途端、前年割れが始まった。それほどクオリティ型店舗の展開は難しい。

(つづく)
【吉井 陸人】

<プロフィール>
101104_kanbe神戸 彲(かんべ・みずち)
1947年生まれ。宮崎県出身。74年に寿屋入社。えじまやの社長、ハローの専務を経て2003年にハローデイに入社。取締役、常務を経て10年に(株)ハイマート(現・(株)フードウェイ)の顧問に就任。同年に同社の代表取締役に就任し、翌年健康上の理由で退任。

<プロフィール>
宗像 三郎(むなかた・さぶろう)
1950年生まれ。福岡県出身。気鋭の流通ライターとして、九州流通業界の原稿を中心に執筆。


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