2024年03月29日( 金 )

激動する社会に求められる地域医療支援病院(前)

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(医)雪の聖母会 聖マリア病院

カトリックの愛による保健・医療・教育の実践

maria_s 雪の聖母会聖マリア病院の発祥は、1915年に設立された井手内科医院の設立に遡る。院長の井手用蔵氏は熱心なカトリック信者で、貧しく医療に恵まれない人々を長年支援してきた。その後、父・用蔵氏の志を継いだ井手一郎医師により、53年に聖マリア病院は創設された。スタート時は小学校の宿舎を病棟にして、当時国民病であった結核の治療を行った。病院名は聖母マリアに捧げる意味で、法人名を雪の聖母会と命名。その基本方針を、カトリックの愛の精神に基づく医療と教育の普及とした。

 現在は、福岡市にあった聖堂「カトリック大名町教会 旧聖堂」を本院敷地内に移築し、地上17階・地下1階、免震構造の地域医療支援棟を有する。また屋上には、緊急・災害時に備えてヘリポートが設置されている。41の診療科を標榜し、1日の入院・外来患者数は各々約1,000名、救急患者は1日約160名の大型救急総合病院として、地域医療に貢献している。運営方針としては、安全で質の高い医療を提供し、医療サービスを通じ、患者幸福を実現する。また、救命救急医療を通じ、断らない医療を推進する。地域医療においては、ほかの医療機関と連携し、地域完結型医療を実現するとしている。さらに、保健・医療を通して、国際社会貢献にも注力。県指定の拠点病院として、役割の実践と機能向上を目指している。

質の高い医療と働く環境整備

 2014年の診療報酬改定で、短期滞在手術が評価される様になり、同院でも短期滞在手術センターの整備を行い、昨秋から稼働している。質の高い医療を目指すためには、常に良いものを使って治療成績を高めることに取り組んでいる。たとえば、全国でも数少ない「バイプレーン血管造影装置」(ハイブリッド手術室)も設置している。これにより、手術と血管造影が同時に行え、頭部動脈瘤や心筋梗塞時にステントを入れることなど、2Dではわかりにくい治療も3Dで的確に判断しながら進めることができる。最新画像機器は多くの領域に適応でき、発見しやすく、即、手術に移ることも可能で、効率の良い手術を行うことが可能だ。

 とはいえ、高質の医療を提供するためには、スタッフ教育が最も大切な要素である。単に部屋の改修や手術器具の導入だけでは話にならない。そのため、同院では全職員への継続的な教育を実践。医療の機能を高めることで無駄な入院を減らし、患者さんをいち早く社会復帰させることを使命としている。

薬剤師の登用と活用に尽力

 医師は、大学側からの派遣が主なため、こちらの都合では採用を増やせない。2017年度から実施される新専門医制度でも、症例あたり何人の医師、というように制限がついており、どれだけの人材を確保できるかは、その病院での医療内容に左右される。一方の看護師は、九州一円のみならず、四国や中国、沖縄まで行って人を集めた結果、現在はほぼ充足している。

 不足しているのは薬剤師だ。同院ではその対策として、薬剤師の部門に関する仕事の内容を見直し、物流部門を設立。薬剤師以外でも、薬の在庫管理が可能な体制にし、薬剤師には専門的な業務を徹底的に行えるようにした。今後は全病棟に薬剤師を配置して、服薬指導を行えるような体制をつくる計画だ。

 質の高い医療を提供するためには、働く環境を整えることが重要になる。環境づくりで大切にしているのは、院内スタッフすべての質を高めること。それには、売店員や清掃員といったスタッフの質も高くないと実現できない。同院では、職場環境の改善を進めており、その結果、看護師の離職率が減少している。医療の質は、キャリアアップした人たちが残らないと高まらない。自信を持って仕事ができる環境をつくることが、職場を魅力的にする。そのため今後も、スタッフの働きやすさを追求していく。

(つづく)

<INFORMATION>
理事長:井手 義雄
病院長:島 弘志
所在地:福岡県久留米市津福本町422
設 立:1953年
総病床数:1,097床(一般931床、療養100床、精神60床、感染6床)
TEL:0942-35-3322
URL:http://www.st-mary-med.or.jp

<プロフィール>
sima_pr島 弘志
山口大学医学部卒。久留米大学病院勤務を経て、1985年から聖マリア病院勤務。2009年4月から病院長。日本外科学会、日本救急医学会など多くの学会に所属。

 
(後)

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