元「鉄人」衣笠氏が斬る！～WBCメンバー決定

　WBCメンバーが決まった。故障者が出たために遅れていた最後の１人が、広島の田中選手に決まったという報道があった。これでメンバーが決定した。

　最近の風潮として、マスコミの評価はどうも低いようである。決まったのだから、もう少し応援のメッセージが入るかな？と思っていたのだが、そうではなく、どちらかというと評価していないようにも感じる。
　せっかくの日本代表なのだから、もう少し応援をしてもいいのではないだろうか。むしろ、そうすべきだと思う。
　心の底には勝ってほしい気持ちがあるはずなのだから、負けたことばかり考えるのではなく、「どうすればこのメンバーで勝てるか」「不安があるのならばどうしたら勝てるか？」といったようなアイディアを出し合うべきではないだろうか。そのなかには、次の時代の野球の素晴らしいアイディアがあるかもしれないから、そちらを望みたい。

　とはいうものの、今回のメンバーを見て一番感じることは、目玉は大谷だけで、全体的に「地味になったかな～」――そんな印象が、私が素直な感想である。

　第１回のメンバーを見てみると、メジャーリーグからも多くの選手が参加しており、このWBCという大会にかける思いが伝わってくる。以下、そのときのメンバーを書き出してみる。

第１回大会（2006年）
監督：王　貞治
１番・川崎、２番・西岡、３番・イチロー、４番・松中、５番・多村、６番・里崎、７番・小笠原、８番・今江、９番・青木
投手陣：清水、松坂、上原、薮田、和田、藤川、渡辺、大塚、小林、杉内、石井、馬原

　これが第１回のメンバーで、日本は窮地に追い込まれたのだが、アメリカがクレメンス投手で勝つと思っていたのだが、失敗してメキシコに敗れ、日本が決勝トーナメント出場。そして、福留選手の見事な代打本塁打で、第１回優勝という栄誉に輝いた。

第２回大会（2009年）
監督：原　辰徳
１番・イチロー、２番・中島、３番・青木、４番・城島、５番・小笠原、６番・内川、７番・栗原、８番・岩村、９番・片岡
投手陣：ダルビッシュ、馬原、田中、涌井、松坂、岩田、岩隈、藤川、内海、小松、渡辺、山口、杉内

　日本が２連覇を果たした第２回大会。苦しい試合が多かったのだが、イチローがよくチームをまとめてくれたという印象が残っている。

第３回大会（2013年）
監督：山本　浩二
１番・鳥谷、２番・井端、３番・内川、４番・阿部、５番・坂本、６番・糸井、７番・中田、８番・稲葉、９番・松田
投手陣：涌井、能見、澤村、今村、田中、杉内、前田、森福、内海、大隣、牧田、山口、摂津

　このときは合同練習が足りなかったのだろうか、チームとしての纏まりが足りなかったように感じた。もう少し国内での合同練習を重ねて、チームとしての戦う方向をしっかりと見せてほしかった。

第４回大会（2017年）
監督：小久保　裕紀
１番・秋山、２番・青木、３番・坂本、４番・筒香、５番・内川、６番・中田、７番・松田、８番・嶋、９番・山田（今回のメンバーはまだ修正箇所あり）
投手陣：松井、菅野、秋吉、則本、宮西、大谷、藤浪、増井、石川、岡田、牧田、千賀、平野

　このメンバー構成で気になるのが投手陣で、国際試合の経験者が少ないというところではないだろうか。日本球界は若返りが進んでいることから仕方がない点はあるのだが、気になる点である。

　もう１つが、野手のなかでチームを強引に引っ張れる人材が見えにくい点も、少し気になる。
　いつも元気印のソフトバンク・松田選手も坂本、筒香、山田というセ・リーグの選手たちをどこまで引っ張ることができるか。短期間で性格を把握することは難しく、では青木選手は？そのようなタイプではなく、内川選手も黙々とやるタイプで、筒香選手が大きな声を出している姿は想像できないから、中田選手か？？？違うね。
　ここのところをカバーするのは、どうやらコーチの仕事になりそうだ。とにかくチームの方向性を１つにして、全員で優勝を目指して、油断なきよう、相手をしっかりと研究して、監督は選手を使う場所を見逃さないように。メンバーは皆、たしかに各チームの主力であり、帰ってすぐにペナントレースが始まることもあるが、今回は何としても「優勝」しなくてはならないという強い気持ちを持って、頑張ってほしい。

　今回の攻撃の主力は「脚を使う」ということが、私にはテーマになっていると思う。秋山選手、青木選手、山田選手、坂本選手。時と場合によっては、内川選手も走る能力を持っているだけに、松田選手も負けられないだろう。

　誰かが言っていたが、「強いチームが勝つのではなく、勝ったチームが強いのだ」。

2017年１月29日
衣笠　祥雄