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2017年02月09日 11:52

第10回日本国際漫画賞~キーワードは「命がけ」!

55の国・地域から296の応募作品

受賞者を囲んで(左端は里中満智子氏、右端は小田原潔外務大臣政務官)

受賞者を囲んで
(左端は里中満智子氏、右端は小田原潔外務大臣政務官)

 2月6日(月)の午後5時30分より、東京都の明治大学駿河台キャンパス「グローバルフロント」のグローバルホールで、第10回「日本国際漫画賞」(実行委員長:岸田文雄外務大臣)の授賞式が行われた。第10回を迎える今回は55の国・地域から296作品の応募があり、応募国・地域と作品数ともに過去最多となった。厳格な審査の結果、最優秀賞1作品、優秀賞3作品を含む入賞14作品が選ばれた。入賞作品の出版国・地域別内訳は、ベルギー2、中国2、タイ2、インドネシア2、ベトナム1、アメリカ1、フランス1、台湾1、韓国1、ポーランド1作品であった。

 最優秀作品に選ばれたのは、ベルギーの『The Master of Arms(剣の師)』(作者:ジョエル・パルノット、原作者:グザビエ・ドリゾン)である。優秀賞の3作品は中国の『scavengers(スカベンジャー)』(作者:韓祖政)、ベルギーの『THE HEART OF DARKNESS(闇の心)』(作者・原作者:ローラ・イオリオ、作者:ロベルト・リッチ、原作者:マルコ・コズィモ・ダミコ)、ベトナムの『Gateway to Underworld(地獄門)』(作者:カン・ティエウ・ヒー)であった。

見ごたえのある素晴らしい作品が多かった

 応募作品の選考にあたったマンガ家の里中満智子審査委員長は「見ごたえのある素晴らしい作品が多く順位をつけるのに苦労しました、続きを読みたい作品も多くありました」と講評した。そのうえで、最優秀賞、優秀賞に共通するキーワードに「命がけ」(人間が刻んできた歴史の証として)を挙げた。

最優秀賞と優秀賞3作品

最優秀賞と優秀賞3作品

日本マンガの表現形式は際立って個性的だ

 今回の「日本国際漫画賞」では、栄えある10回を記念して、授賞式に先駆けて初めて記念シンポジウム(午後3時~午後5時)を開催した。

 第一部は、「日本国際漫画賞の歩み」と題して、漫画家の里中満智子氏((公社)日本漫画家協会常務理事、日本国際漫画賞審査委員長)が基調講演を行った。
 里中氏は26の国・地域しか応募がなかった第1回目の運営苦労話などを含めて、1回から10回までの歩みおよび最優秀賞作品について解説した。
 そして、「日本マンガの表現形式は世界のマンガのなかでも際立って個性的です」と述べ、「しかし、気がつけば、その日本マンガは1940年から60年代にその基礎がしっかりでき、70年代にはマンガブーム、その後のアニメブームも手伝って市場は大きく拡大し今に至っています」と続けた。最後に、「マンガには国境がなく、描く人も、読む人も世界基準でものごとを考えています。人間同士が分かち合うには、先ず同じ感動を共有したうえで、意見の違いを考えていくことが必要です。そのために日本マンガそして日本国際漫画賞は大きな役割を果たすことができます」と締めくくった。

世界は大きく3つのマンガ文化圏に分かれる

 第二部は、藤本由香里氏(明治大学国際日本学部教授)をコーディネーターに、「日本国際漫画賞が目指すもの~世界の中でMANGAとは?」というテーマで、倉田よしみ氏(マンガ家、日本国際漫画賞審査委員)、フレデリック・ショット氏(作家・漫画評論家、翻訳家)、吉田さおり氏((株)KADOKAWA 海外事業局)3名によるパネルディスカッションが行われた(パネラーとして予定していたケン・ニイムラ氏(マンガ家。第5回国際漫画賞最優秀受賞者)はインフルエンザのため欠席)。

 漫画に国境はないが、世界にはいろいろなマンガのスタイルがあり、大きくは(1)日本・アジアを中心とした「日本マンガ(MANGA)」、(2)北米を中心とした「アメコミ(COMICS)」、ベルギー・フランスを中心とした「バンド・デシネ(B.D.)」の3つに分かれる。この共通認識のもとで、ショット氏は北米事情について、吉田氏は中国・香港・台湾などアジア事情について、倉田氏はフランスやアメリカ、モンゴルなど世界各地でマンガワークショップを行った経験を中心に、ディスカッションが行われた。

雑誌からネット配信へ急速に変化した中国

 注目したいのは、近未来のアジアのマンガ市場を想起できるかも知れない中国の動きである。吉田氏は、アジアの状況において、「日本のものがそのまま発売できる地域では95%が日本の作品で、現地のオリジナル作品は育っていない。一方で、中国本土では出版規制が厳しく、日本のマンガはそのままではほとんど発売できない、そこで逆に現地のマンガ家が育ち、人気が出てきている」と述べた。そのうえで、「中国本土のマンガはここ数年で、媒体が急速に紙雑誌からネット配信へとドラスティックに変化した。70歳のお爺さんもスマホで小説、ニュースを読んでいる」と述べた。

 中国はもともと国土が広大過ぎて、紙雑誌媒体の流通は地方都市まで及んでいなかった。今はやりの言葉に社会包摂(ソーシャル・インクルージョン)という言葉がある。社会から孤立している人たちを、もう一度社会の構成員としてきちんと取り込むための制度や環境づくりを行う活動のことである。この中国のマンガの例は、同じ環境にある東南アジアの多くの発展途上国につながる可能性が高い。現在、スマホは発展途上国の生活に当たり前のものになりつつあるからである。

北米では紙媒体への復活があるかも知れない

 その一方で、アメリカ人のショット氏は北米では「紙雑誌媒体の復活があるかも知れない?」と語っている。事実北米では、一時は絶滅も間近と思われていたアナログレコード(LPなど)の売り上げが2005年から13年までの8年間で6倍以上に増えたという話も聞く。

 記念シンポジウム~授賞式終了後は、場所を「グローバルフロント」から「紫紺館」に移し、和気あいあいのレセプションが行われた。

受賞者を囲んで(後ろに並んでいるのは、漫画家の先生たち)

受賞者を囲んで(後ろに並んでいるのは、漫画家の先生たち)

【金木 亮憲】

【国際漫画賞】麻生太郎現副総理が外務大臣在任中の2006年4月「今や世界各国に現れつつある若き漫画の旗手たちに、漫画の本家本元である日本から、権威のある賞、いわば漫画のノーベル賞のようなものをあげたい。日本との絆を、それによって意識していただきたい」と発言したことで、外務省内で検討、07年5月22日に正式に設立された。歴代の実行委員長は外務大臣。

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