2024年05月05日( 日 )

てるみくらぶ破綻に見る、格安旅行会社のリスクとは

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 Net-IB Newsでも既報の通り、格安海外旅行に特化した旅行代理店(株)てるみくらぶが経営破綻し、3月27日に破産手続開始決定となった。すでに旅行代金などを払い込んだ顧客は8万人以上、旅行代金の債務は99億円とされている。同社から航空会社やホテルなどへの払い込みは行われていない場合がほとんどのため、「渡航しないことを強く勧める」(山田千賀子社長)とのこと。同社はすでに渡航した2,000人を超える客については「なんとか自力で帰国してほしい」とも話しており、まことに無責任というほかない。

 さて、今回の破綻については、てるみくらぶ自体の経営に問題があったことはもちろんだが、海外をターゲットにする格安旅行というビジネスモデルがさまざまな外部要因に左右される、脆弱な業態だったことは指摘しておかなければならない。

 超大型旅客機の就航により、一便当たりの座席数は増えたものの、搭乗率が低下してしまう。このジレンマを埋めたのが、小ロットで座席を取り扱う格安旅行会社だった。ネット経由でコストをかけずに座席を販売し、低価格化に成功したわけだ。しかしLCCの登場によって近距離路線は小型機で運航するケースが増え、搭乗率は上がり余剰の座席は少なくなる。大手航空会社もLCCとの共同運航や自社系列LCCの設立で追随し、座席の仕入れコストは向上を余儀なくされた。そこに、2016年に2,000万人を超えた訪日観光客の急増と円安が直撃した格好だ。いわば「期間限定の隙間産業」でしかなかった格安海外旅行にほぼすべての売上を依存していた同社としては、経営が行き詰まるのは当然だろう。

 業界団体の日本旅行業協会(JATA)には弁済業務保証金制度があるが、今回のケースでは1億2,000万円が返金総額の上限となるという。99億円の債務を1億2,000万円で弁済するとして、はたして顧客1人当たりいくら戻ってくるというのだろうか。安かろう悪かろう、ではないが、安い旅行会社にはこのような危険があるということは多くの人々が自覚したことだろう。今後の海外旅行は高い料金を覚悟して大手旅行代理店に任せるか、自力で航空便とホテルの手配をするかの2つの選択肢に分かれるのではないだろうか。「安さ」と「安心」の両取り、というわけにはいかないようだ。

【深水 央】

 

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