間近に迫るウクライナのゼレンスキー大統領の辞任(前)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏

 ウクライナとロシアの戦争には終わりが見えません。死者や負傷者の数はウクライナ側が多く、すでに70万人を超える兵士が死亡しているようです。また、80万人もが身体に障害を受け、路上で物乞い生活を余儀なくされている模様です。ウクライナ政府もロシア政府も情報をコントロールしているため、正確な人的被害の実態は不明のままですが、ゼレンスキー大統領の動向について不穏な情報が飛び交っています。

不動産爆買いとゼレンスキーの「裏の顔」

 7月10~11日にローマで「ウクライナ復興会議」が開催されました。約70カ国の代表が参加し、支援総額100億ユーロ(約1兆7,000億円)で合意しました。しかし、世界銀行の推計によれば、今後10年間で必要な資金は5,240億ドル(約77兆円)とのこと。戦争がどのようなかたちで終結するのか見通せない状況下で、日本を含め世界各国がどこまで本気で資金を提供するのか疑わしい限りです。

 ところで、元アメリカの海兵隊員で国連の調査員としてイラク国内で活動してきたリッター氏によれば、ゼレンスキー大統領は自らが設立した投資会社のトップに妻を据え、巨万の富を海外のタックスヘイブンに隠ぺいしているとのこと。これまでも、これからも海外からの支援や投資を自分の懐に入れることを最優先しているわけで、そうした腐敗体質を払しょくしなければウクライナの復興も絵に描いたモチに終わりかねません。

 実は、欧米の投資会社が提供した多額の裏金を使って、ゼレンスキー大統領はアメリカのマイアミに3,400万ドルの別荘を購入したのを皮切りに、イスラエル、エジプト、イタリア、イギリス、ギリシャ、グルジアなど、世界各地の不動産を買い漁っているようです。もちろん自国内のクリミアの物件はロシアに収奪されてしまっています。

 また、ケイマン諸島には莫大な隠し財産を保持していることも指摘されています。そうしたゼレンスキー大統領に関する「不都合な真実」はトランプ大統領も把握しているはずです。それゆえ、ゼレンスキー大統領に対して「鉱物資源や穀物資源を差し出せ」と強圧的な姿勢を見せているものと思われます。

 日本では無視されていますが、欧米の投資ファンドはゼレンスキー氏を篭絡するため、第1段階として4,100万ドルの賄賂を提供したとされます。そうした腐敗体質はゼレンスキー大統領に限りません。多くの政府高官や軍の幹部も汚職に手を染めているとの告発が後を絶ちません。

 何しろ、これまでヨーロッパ最悪の腐敗国家という悪評に包まれてきたのがウクライナですから。欧米諸国はそうしたウクライナの実態に見て見ぬふりを決め込んでいるようです。ウクライナはEUやNATOへの加盟を希望していますが、現状の腐敗体質が克服されない限り、難しいと言わざるを得ません。

国民は苦境 政権は安泰の矛盾

 いずれにせよ、ウクライナの現状は悪化の一途をたどっています。多くのウクライナの国民が住む場所を失い、海外へ脱出し、ドイツの売春ビジネスで働く女性の大半はウクライナからの避難民と言われているほどです。それだけ、国家存亡の危機に直面しているにもかかわらず、ゼレンスキー大統領とその家族や取り巻きは「この世の春」を謳歌しています。

 これまで自分に反対する国内の野党を解散させ、メディアにも厳しい報道規制を課してきたゼレンスキー政権ですが、国民の間での不信感は加速を続け、政権交代を求めるデモも発生するようになりました。ゼレンスキー大統領はそうした国民の動きを無理やり押さえてきたのですが、もはや限界状態です。そのため、イギリスやアメリカの政府は水面下で「ゼレンスキー交代」工作に着手し始めたとの指摘も出始めています。

 具体的にいえば、ウクライナのゼレンスキー大統領の側近と米英の外交官がスイスで極秘の会合を重ねていることが判明しました。というのも、ゼレンスキー大統領が保身のためでしょうが、反腐敗防止法の骨抜きに動いていることが公然の秘密となってしまったためです。

 7月22日には汚職の捜査や起訴を専門で行う2つの政府機関の権限を弱めるような法律を成立させたのがゼレンスキー大統領です。しかし、この法律は国内外からの猛反発を受け、ゼレンスキー大統領も7月31日には汚職対策機関の独立性を確保する新たな法案を認めざるを得なくなりました。

 それやこれやで、現在、ウクライナの駐英国大使の任にあるザルジニー元ウクライナ軍総司令官がやむにやまれず、ゼレンスキー交代のシナリオを具体化する先頭に立ったようです。もともと、ザルジニー将軍は軍のトップであり、腐敗取り締まりにも辣腕(らつわん)を発揮していました。

 軍の内部からも国民の間でも期待する声が大きく、逆にゼレンスキー大統領からは疎まれ、駐英大使として国外追放された経緯がありました。しかし、ゼレンスキー大統領の腐敗体質に歯止めをかけるためには、新たなリーダーが不可欠との判断から、ワシントンやロンドンの政治指導者からはザルジニー将軍を担ぎ出そうとする動きが活発化してきたようです。

 注目すべきは、こうした会合にはゼレンスキー大統領府のイェルマーク長官も参加していること。要は、最側近の間でも、「ゼレンスキー交代」が深く静かに進んでいるというわけです。となれば、ゼレンスキー大統領自身もそうした身内や欧米の動きに気付いていないとは思えません。

(つづく)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

関連記事