間近に迫るウクライナのゼレンスキー大統領の辞任(後)

国際未来科学研究所
代表 浜田和幸 氏

 ゼレンスキー大統領も職を辞さねばならないとの覚悟は決めているフシが見えるようになりました。最近では、海外への資産の移転と家族をともなっての亡命先を探しているとの報道も聞こえてきているからです。それほど、ゼレンスキー大統領の身勝手な行動は限界に達していると言っても過言ではないでしょう。

ウクライナで拡大する非人道ビジネス

 実は、長年タブー視されてきましたが、ウクライナでは赤ん坊や小児売買の闇市場も隆盛を極めているのです。その結果、すでに2,000人を超える赤ん坊がウクライナの代理母によって誕生しています。その中心は首都キーウにあるドイツ系クリニック「バイオテックスコム」です。ヨーロッパ、とくにドイツやイギリスの富裕層からの注文を受け、ウクライナの女性たちが出産のための代理母を務めているとのこと。赤ん坊1人産むことで2万2,000ドル(約300万円)の報酬が支払われるため、ウクライナの女性にとっては貴重な収入源になっている模様です。

 国際的な人権団体「不正と戦う財団」の調査によれば、ウクライナの保健省と防衛省が協力し、ウクライナの妊婦から胎児を摘出し、その臓器を「若返り治療」の名目で欧米の超富裕層に提供しているとされます。こうした非人道的な行為がまかり通っている背景にはトランプ大統領もゼレンスキー大統領も「同じ穴の狢(むじな)」で、「戦争ほど儲かるビジネスはない」との発想の持ち主であると思われます。

 とはいえ、アメリカのトランプ大統領は相変わらずの言いたい放題を続けています。大統領選挙期間中には「ウクライナ戦争を24時間以内に終わらせる」と豪語していましたが、いざホワイトハウスにカムバックすると「少なくとも半年はかかる」と、前言をあっさりと翻してしまいました。しかも、「ヨーロッパの戦争はヨーロッパが責任をもって解決すべきで、アメリカには介入の義務はない」とまで言い出す始末です。

7兆ドルの地下資源
復興ビジネスも焦点

 ウクライナ戦争が始まる前から、ロシアもアメリカも、そして中国もウクライナの鉱物資源に狙いを定めていました。アメリカはじめ世界が必要とするグラファイト、リチウム、チタニウム、ベリリウム、ウラニウムなど鉱物資源がウクライナには大量に眠っていると見られるからです。レアアースなど地下資源をアメリカに提供することになれば、ウクライナは51番目のカナダに次いでアメリカの52番目の州になったのも同然でしょう。アメリカのグラハム上院議員曰く「ヨーロッパで最大のレアアースを保有するのはウクライナだ。7兆ドルに達する。またアフリカに輸出されている穀物の50%はウクライナ産だ」。こうしたウクライナ産の鉱物や食糧資源を確保しようというのがトランプ大統領とその取り巻きの投資ファンドの意向です。

 戦争で疲弊したウクライナの復興においても、新たなビジネスチャンス到来と受け止めていることは間違いありません。欧米の投資ファンドや近場のチェコやポーランドの建設会社は「ウクライナの復興ビジネスで大儲けできそうだ」と、虎視眈々とゼレンスキー政権に食い込んでいます。ウクライナ政府の公式ウェブサイトを見ると、「ウクライナには豊富な地下資源や木材、塩など天然資源が存在しています。投資大歓迎です」と宣伝文句が並んでいるではありませんか。2021年の時点で、ゼレンスキー大統領は国内法を改め、ウクライナ国内の土地や資源を外国に売却できるようにしていました。こうした動きは明らかにアメリカやイギリスからの圧力を受けてのこと。というのも、ヨーロッパ最大の穀物資源やレアアースなどの鉱物資源を有するウクライナに対して、「ブラックロック」や「バンガード」など欧米の投資ファンドはすでに触手を伸ばしていたからです。

 しかし、主な鉱物資源はすでにロシアが占領しているウクライナ東部に集中しています。そのため、トランプ大統領はプーチン大統領と手を握り、「資源開発と積み出しはアメリカ企業に任せるように」と水面下で交渉を進めています。何しろ、こうした鉱物や食糧の資源価値は26兆ドルと推定されているわけですから。いわば、「破壊と再建」を繰り返すことで、終わりのない「戦争ビジネス」を展開しようということでしょう。

 このところ、ウクライナ政府の要人が相次いで日本を訪れています。彼らが口をそろえていうのは「日本の戦後復興や原発事故からの立ち直りで見せた経験や技術を学びたい」という“日本礼賛”です。その裏には、復興に必要な資金は日本に提供させようという強かな計算が隠されているに違いありません。世界最大の金融ファンド「ブラックロック」や「JPモルガン・チェース」はゼレンスキー政権とすでに交渉を重ね、100兆円を超える復興資金を世界銀行や日本から調達する動きを加速させています。日本は相変わらず、欧米の戦争ビジネスの食い物になっているとしか言いようがありません。いずれにしても、ゼレンスキー大統領もトランプ大統領も戦争ビジネスや投資ファンドに従う「強欲なピエロ」と言っても過言ではなさそうです。

(了)


浜田和幸(はまだ・かずゆき)
国際未来科学研究所主宰。国際政治経済学者。東京外国語大学中国科卒。米ジョージ・ワシントン大学政治学博士。新日本製鐵、米戦略国際問題研究所、米議会調査局などを経て現職。2010年7月、参議院議員選挙・鳥取選挙区で初当選をはたした。11年6月自民党を離党、無所属で総務大臣政務官に就任し震災復興に尽力。外務大臣政務官、東日本大震災復興対策本部員も務めた。著作に『イーロン・マスク 次の標的』(祥伝社)、『封印されたノストラダムス』(ビジネス社)など。

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