2024年04月26日( 金 )

元「鉄人」衣笠氏が斬る!~好調カープ

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 4月を終えてカープは、昨年と同じように快調にペナントレースを走っている。昨年のオフに、黒田投手という精神的にも技術的にも完成品に近い選手の引退を迎えて、「今年は投手陣に大きなダメージが出るのではないだろうか」「若い投手陣を誰がリードしていくのだろうか」など、キャンプ時からオープン戦にかけては、皆の関心はここに集中していたと思う。

 幸い、野村投手やジョンソン投手の調整が順調に進み、大瀬良投手や岡田投手、九里投手も昨年よりも力をつけてきた。ドラフト1位の加藤投手も初登板の4月7日、地元でのヤクルト戦で、あわや「ノーヒットノーラン達成か?」という快投を見せ、8回の3分の1まではノーヒットに抑え、周りの雰囲気は完全に「記録達成」というところまで来ていたが、さすがにバレンティン選手にフォークボールを狙われてレフト前ヒットを許し、記録にはならなかったが、素晴らしい投球だった。
 これで、心配していた投手ローテーションは計算できるものとなり、開幕早々にジョンソン投手が咽頭炎で登録を抹消されたのだが、目立った影響が出ることなく、試合を進めることができている。

 勝ち星は昨年のように恵まれていないが、5月2日現在、7試合に登板して2勝1敗、防御率2.45という数字を残して、堂々とカープのエースの座を自分のものにしている野村投手は、立派の一言に尽きる。
 そして、昨年から力のあるところは見えていたが、今年に入り本物だということを見せて来た2年目の岡田投手。5試合に登板し3勝1敗、2.55というこれも堂々とした数字を残して頑張っている。何よりストレートに力があるところが頼もしい。ここを大切にしてほしい。

 今年の日南キャンプのブルペンで見ていて、「今年は何とかなるかな?」と感じさせた九里投手。出足はまずまずだろう。問題は、少しマウンドで悩みが出そうになってきているところ。2勝をあげて、ここからだ。勝ったときのビデオをもう一度しっかりと見て、「何が良かったか?」「どんな攻め方をしていたか?」「マウンドでの気持ちはどうだったか?」などを、しっかりと検証してほしいものだ。現実として勝ったのだから、また勝てるのだ。

 そして、なかなか勝てない大瀬良投手が勝った。持っている力からいうと、もっともっと勝っていても不思議でない投手だ。おそらく、この投手の持っている潜在能力の高さが邪魔をしているのだろう。「もっとできるはずだ!」「もっといいところに行くはずだ」「投げなければいけない」など、完璧さを求める才能が邪魔をしているように見えて仕方がない。多くの成功した投手たちも、初めは同じように悩んだと思うが、何かの折に投球術に気がつき、勝つほどに自分のボールを信じられるようになっていくと思う。防御率1.67の投手が1勝では、どう考えてもおかしいだろう。

 そして先日、無心の境地で會澤捕手のミット目がけて投げ込んでいた中村祐太投手が、見事勝利を手にした。この次が楽しみになる投球だった。また福井投手も、巨人戦で勝ち星を手にした。

 次から次に、若い投手がマウンドに現れている、あれほど心配していた先発投手陣だが、まったく心配がいらなくなり、むしろ1人ひとりの投手にとって、先発枠は狭き門となってきた。

 そして、中継ぎにも中田投手の復活、一岡投手の活躍、何より薮田投手の活躍は、監督の計算以上のことだろう。
 ジャクソン投手も昨年同様に頑張っている、ここに来て今村投手が、少し抑えの役割に慣れてきて、安定してきた。中崎投手の早期の復活も待ち遠しいが、ここはしっかり治して中盤から後半に備えたいものだ。

 私の見方だが、この投手陣を成長させたのは、やはり打線の力だろう。私はよく言うのだが、「投手の最高のエネルギーは勝ち星です」と。その勝ち星を、逆転で多くの投手にもたらしているカープ打線、今年も本当によく頑張っている。

 今年も1番の田中選手から3番の丸選手までの安定感は、他球団にはない脅威だろう。菊池選手が少し出遅れたが、固め打ちという彼独特の技を見せて存在感を出している。エルドレッド選手、新井選手が、監督の意図するように上手く休養をとりながら、勝負どころで力を発揮し、勝ち星につなげてチームの勝利に貢献。一方、若い鈴木選手が4番というチームの柱になるテストを受けている。今年、来年をどのように乗り切るか。本物の4番打者になることができるか。一時的なことでなく、時間をかけて育てたいものだ。

 その周りをしっかりと埋めるべく安倍選手、小窪選手、石原捕手、會澤捕手、少し怪我をしたが松山選手など、今のところ打線に関しては不安な要素は見当たらない。

 打線は、素晴らしい投手にかかれば打てない。そんなものだ。1点を取ることに大変苦しむ。だけどその間、投手が頑張ってくれていると、打線の出番が出てくるのである。相手の投手も、人間が投げている以上、精神的にも肉体的にも、疲れも出てくる。ここでの連携が、昨年からのカープは素晴らしい展開を見せている。今年もこの展開を見せて、安定した戦いを続けていると思う。

 問題は、これから初めて経験する選手が、投手に多いということではないかと思う。1軍の試合に出るということは「結果」を求められる。結果を出すために頑張るということは、疲れが知らず知らずのうちに身体に溜まるものだ。そうした経験を、若い投手たちがどのようにして乗り越えることができるか。
 5月を乗り越え、6月も梅雨の湿度とどう戦い、体力の消耗をどんな方法で乗り切るか。長いペナントレース期間、調子の悪い時期も乗り越えなくてはならない。その意味では、今年はまだまだ見どころや、頑張りどころが出てくることだろう。

 まずは5月の戦い方をしっかりと見せてもらいながら、交流戦につなげたいものである。

2017年5月5日
衣笠 祥雄

 

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