2024年04月18日( 木 )

かつての業界盟主も失墜か キューサイ記者座談会(前)

記事を保存する

保存した記事はマイページからいつでも閲覧いただけます。

印刷
お問い合わせ

福岡の通販業界に君臨する5つの企業

キューサイ(株) 本社

 A 福岡の通販企業には、キューサイ(株)、(株)エバーライフ、(株)やずや、新日本製薬(株)、(株)アサヒ緑健というリーディングカンパニーがある。各社それぞれ、今でも20億円程度の税引き前利益は出しており、新日本製薬に至っては、オーナー企業に20億円以上の上納ができている。アサヒ緑健は、売上高は最も低く130~150億円を推移しているものの、これもオーナーに毎年20億円は渡せている。
 そんななかで、会社を手放して創業者一族が金を握ることを選んだのがキューサイだ。買収価格が610億くらいだが、そのうち長谷川常雄氏の一族に渡った金が420億円から440億円あるといわれている。エバーライフは、実質オーナーの井康彦さんが235億円を手にした。

 B 福岡に本社を置く企業で、M&Aの結果これだけの金額をオーナーが得るようなことはほとんどありませんし、毎年20億もの金を吸い上げ切れているような業種はなかなかありませんね。

 C キューサイに至っては、2012年までなら営業利益は60億円近くありました。しかし後発の競争が激しくなって、30億円まで落ちてきているという状況ですね。まあそれでも30億円の利益ですから、いまだに福岡の通販業界に君臨しているといっていいでしょう。

 A だから、オーナーの長谷川一族は相続税の発生しない英国ロンドンに移り住んだわけだ。東京ならいざ知らず、福岡で会社の売却を通じて一族一党が握った金額の記録としてはいまだに破られていない。

 B そして、キューサイを買収した当時のコカ・コーラウエスト(以下コカ社)です。この当時、売上はまだ4,000億円に達していなかった。

 C そうですね、当時は大阪などと合併していませんでしたから。

 A 610億の金を出してキューサイを買収しようという判断には、60億を越える営業利益を生み出す力があるという事実が間違いなく寄与している。さらに上場企業であるコカ社にしてみれば、その当時の年商が3,757億円(10年12月期)に対して、キューサイの売上は252億円(10年10月期)。6.7%ほどを占めるわけだ。だから、コカ社は思い切って決断したわけだ。それに、コカ社が関西や東京のコカ・コーラと合併しても主導権を握れるのは、ケタ違いに強力な財務体質を持っていたからだ。

 B 2010年当時、炭酸飲料市場はもう頭打ちでした。サントリーが猛烈な追い上げを始めていた時期で、コカ・コーラの国内ボトラーがいずれ再編を余儀なくされるという方向は決まっていました。しかし、あくまでもグループ内の再編ですからそこから伸びる要素はない。それを打開するための、キューサイ買収だったと思います。アメリカ本社は難色を示したといいますが、それを押し切っての決断だったと聞いています。

 C サントリーの場合は、すでに「セサミン」など健康食品の通販事業で売上高6~700億はありましたから、コカ社側はそこを見たうえでの買収という考え方もできますね。

 B 社風として、サントリーは幅広いジャンルに手を出していきますが、コカ社は常に炭酸飲料だけを扱っていましたので、せざるを得なかったともいえますね。それを乗り越えてよく健康食品に進出したなと思います。

 C しかし、キューサイ買収後に「自動販売機で青汁を売る」という話が出ていましたが、実現はしていませんね。ミニッツメイドのブランドを使って、青汁を入れたミニ缶のドリンクを出していますが、キューサイとの共同商品ってこの1商品くらいじゃないでしょうか。

 A コカ社社内でも「高買いしたんじゃないか」という雰囲気が常にあったらしいね。「何かあればすぐに切り離せ」という空気が数年続いた。しかしここ数年、市場の風向きが変わってきた。とくに海外では、「炭酸商品は悪」という空気が広がってきて、次の収益商品を探すのは急務になっていた。そんな事情もあって、キューサイの立場が良くなってきた矢先で、今回の日本サプリメントの不祥事が起こった。

(つづく)

 
(中)

関連キーワード

関連記事