2024年05月05日( 日 )

「困った時はお互い様」~久留米で小石原焼を代理販売

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広がる支援の輪

 久留米市大善寺町の「Yショップ大善寺店」で今月3日から小石原焼(朝倉市東峰村)の代理販売が行われている。小石原焼約100点を展示販売していたが、口コミや新聞報道などで広がり、8日現在、品薄の状況となっていた。

 代理販売を行っているのは、店主の久保田そよ子さん。久保田さんは、20年来の付き合いのある「上鶴窯元」の主人である和田守夫さんが、7月5日に発生した大雨災害により、来店客数が激減して困っていることを知り、代理販売を買って出た。「困った時はお互い様」と、カップや皿などの小石原焼を久留米市の店舗で販売し、その代金は全て和田さんに渡す。店には募金箱も設置した。「お客様の要望もあり、お盆明けには品揃えを増やしたい」(久保田さん)

 朝倉の豪雨災害から1カ月が経過し、被災地の人たち、そして被災した地域の方々、企業、事業者は不便を強いられているが、近隣の久留米でも支援の輪が広がっている。

「自分たちは頑張っています」という姿勢を見せたい

筑前小石原焼 上鶴窯元の和田さん

 小石原には約40の窯元があり、今回数軒の窯に土砂、瓦礫などが流れ込んだが、和田さんの窯は無事だった。今回、久保田さんが代理販売することについて和田さんは、「自分たちが頑張っている姿勢を見せないといけないと思っていたので、本当にありがたい」と語った。和田さんは今から約40年前、24歳の時に小石原に窯を開いた。現在は息子の祐一郎さんらと作品を作っている。和田さんによると、取材した8月2日の時点でメイン通りは1週間前にようやく通れる状態になったという。しかし、安全に通行できないとの理由から、現状、小石原には飯塚・添田方面、日田・夜明ダムの2つのルートのみの通行手段しかない。そのため、来店客が激減する事態となっている。現在も周辺道路は雨が降ると通行止めになるほか、道路が決壊し、片側通行を余儀なくされる所もあり、不便な状況が続いている。

 上鶴窯では、和田さんが飛びかんなや刷毛目に特徴がある伝統的な小石原焼を手掛け、祐一郎さんが若者向けの作品を手がけている。祐一郎さんのドット模様などを用いた今風のテイストを盛り込んだ作品は若い人たちの人気を集めている。

 「今、小石原には20~30代の若者が作品づくりを勉強していて、新旧の作品がたくさんあります。以前のような状況になるのはいつになるか分かりません。久保田さんのような方が代理販売して下さるのは大変ありがたい」(和田さん)

 小石原焼は福岡を代表する焼き物。その伝統と未来を久保田さんのような支援で守っていく。優しい支援の輪が広がっている。

上鶴窯元

上鶴窯元の作品たち。手前は今風のドットを入れて焼き上げた

【矢野 寛之】

<お問い合わせ先>
Yショップ大善寺店
TEL:0942-26-8000
筑前小石原焼上鶴窯
TEL:0946-74-2097

 

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