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2017年08月29日 15:16

中国経済新聞に学ぶ~「中国トップ富豪」王健林氏の墜落 チャイナビジネス最前線 

 王健林は中国トップの大富豪である。2015年10月に胡潤研究所により公開された中国百大富豪ランキングにおいて、62歳の王健林は2,200億元(3兆6,100億円)の財産をもって、アリババ総裁の馬雲を抜いて2度目のトップに立った。彼の財産は前年に比べ52%増加している。
 そして2年後の2017年7月、王健林の有する万達グループが13の文化旅行施設および76のホテルを緊急売却し、632億元(1兆380億円)の資金を集めることが発表された。
 この突然の変化は人々に強い驚きを与えた。

不動産資産の緊急売却

 8月10日王健林の指揮する万達グループの公式Wechatにおいて、万達グループが不動産から完全に撤退し、アセットライトに舵を切ることが発表された。不動産から始まった万達グループが不動産を捨てることになったのだ。いったい王健林に何があったのか?
 万達グループの2017年の年次総会において、2020年以降の万達商業は原則としてアセットヘビーを行わず、アセットライトのみに注力することを王健林は宣言していた。
 王健林はさらにこのような皮肉も言っている。万達商業はもう不動産会社ではない、2017年の年末か2018年には「商業地産」の企業名も変えてしまおう、「商業投資管理サービスグループ」と名乗って、もう不動産会社ではなくなるだろう。
 中国の不動産市場で30年近く奮闘してきた王健林は、おそらく「高みにいればその寒さに耐えられない」という言葉を最も強く実感しているだろう。ここ数カ月、人々の目をくらませ驚かせるような一連の資本運営によって、王健林は総額1,109億元(約1兆7,745億円)にものぼる資産の大移動を完了させている。
 なぜ王健林はこれほど急いで資産を投げ売りしているのか?一つの大きな原因として、習近平が最近、中国不動産市場における高止まりの問題について「部屋は住むものであって、転がすものではない」と語り、不動産市場の投資需要を厳しく抑制するよう求めたことが挙げられる。
 この指示によって、中国の大銀行は万達グループに対する貸し付け、特に万達が海外企業を買収するための資金的支援を全面的に停止した。

海外買収による外貨資本の流出

 澎湃新聞の不完全な統計によれば、2012年に海外で最初の買収――アメリカ第二の映画館企業AMCを26億ドルで買収した――を行ってから、現在までに万達の海外投資総額は2,451億人民元(4兆270億円)に達している。
 これには王健林がかつて宣言した、万達がそれぞれマレーシアおよびインドネシアで行う二つの百億ドル級プロジェクトは含まれていない。
 かつて王健林は2017年1月の冬季ダボス・ディベートにおいて、万達は毎年50~100億ドルの海外投資を行っており、投資はエンターテインメントおよびスポーツ産業に重点を置き、さらにアメリカを最優先、次点をヨーロッパとして投資していると語った。
 3年間で買収したのはホテル、遊覧船、エンターテインメント、スポーツなど広義のエンタメ企業である。
 政府側から見れば、このような資産は明らかに国家が必要とするものではなく、また国家産業規格における「高級、精密、先端」産業にも合致しない。
 政府側にとって、海外買収による外貨貯蓄の安定を脅かしており、それにより人民元レートの安定性をも揺るがせている。
 2015年および2016年の海外買収ピークの時期に、中国の外貨貯蓄が2年間で1兆億ドルと大幅に下降し、人民元の下落に確実に影響を及ぼしており、これは管理層にとって許容できないことである。
 王健林はかつて「自分が苦労して稼いだ金だから、投資したいところに投資する」と語っている。王健林が稼いだ金は、本当に苦労して稼いだ金なのだろうか?
 万達グループの土地調達コストは非常に低い。王健林は「政府に近く、政治に遠く」と語ったが、聞くところによると万達には専門の政府研究所があり、百人単位の研究員が配置されているという。どんなプロジェクトを行う際にも官僚に対し非常に細かい考察を行い、顧客に対するように官僚に接しており、官僚個人に注目しているという。
 つまり、万達は土地取得の過程において、各地の官僚への贈り物を否定せず、それにより一種の利益関係を築いているということだ。
 そのため、万達グループの低コストでの土地調達および急速な拡大の背景は、政商関係が非常に大きいということだ。
 短期間で2,500億元近い海外買収及び海外投資が行われた、その資金はどこへ行ったのか?どこから来ているのか?何を買ったのか?本当に万達の業務と密接に関係しているのか?万達には本当にこれほどの現金があるのか?
 中国高層にとって王健林率いる万達グループは、形を変えた海外への資産移しというだけでなく、中国人の金を使って外国人の雇用機会を作っていると見られている。

「トップ富豪」から「トップ負け組」に

 王健林は中国生協委員(参議院議員に相当)であり、彼は中国政府から仕置きの息遣いを感じ取ったようだ。
 7月下旬、イギリス・フィナンシャルタイムズのインタビューを受けた際、改めて中国国内市場に重点を置くと語った。「もちろん中国の発展は重要な仕事だ。なぜならエンターテインメント、旅行、スポーツ市場は始まったばかりで、この面は重点的に発展させる必要があるからだ。」
「自分が苦労して稼いだ金だから、投資したいところに投資する」と語った王健林は、その舌の根も乾かぬうちに態度を変え、「国家の呼びかけに積極的に答え、国内で主要な投資を行っていく」と表明した。これは王健林が金融面の打撃を受けたというだけでなく、むしろ政治による仕置きに直面しているということだろう。
 国家が行政の力を使って金融システムのリスク整理を開始すると、王健林はすぐに機先を逃し、さらにその指標的意義から仕置きを受けた典型例となってしまった。
 中央銀行金融安定局局長・陸磊の分析によれば、現在、中国の体系的な金融リスクは全体として制御できているが、不良資産のリスク、流動性のリスク、シャドーバンキングのリスク、外部からの打撃リスク、不動産バブルのリスク、政府政務のリスク、インターネット金融のリスクなどが積み重なっており、金融市場に混乱が発生している。利食いが横行し、深刻なファイナンシャル・トンネリングが発生し、重要案件が絶えず発生している。
 このような背景のもとで、世界の資産買収の急先鋒である万達グループが標的になることは疑いようもなく、かつて通用していた政商による庇護も突然焼失し、それどころか反対の作用を持つようになってしまった。
 この悪夢から抜け出すために、王健林は資産売却によって生存を図り、目前に迫った債務のストレスを和らげようとしており、また同時に態度表明を強化し、主に国内で投資を行っていくことを決定することで、損失を最低限にとどめ、許しを得ようとしている。
 富豪たちがある表明によって何らかのサインを送ることは意外ではない。山一重工グループ総裁・梁隠根やアリババ総裁・馬雲も、かつてすべての資産を国へ献じてもよいと合法に表明している。今後、王健林もさらに豪放な表明を行っていく可能性がある――彼は「中国トップ富豪」から「中国トップ負け組」になるという悲劇を回避しなければならないのだ。ただし、戦いが始まってしまっている以上、リスクは態度表明によって回避されないことがしばしばある。
 もしかしたら、王健林の行動は現在の市場情勢に基づく理性的な行動であるのかもしれない。20年近い繁栄を経て、中国の不動産市場は確実に重要な局面を迎えている――部屋のために悩み苦しんでいる新都市人は、不動産の長期的なメカニズムが徐々に実行されているのを見ている。中国の不動産産業は、徹底的な整理を必要とする時期に来ているのだ。


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