2024年05月20日( 月 )

【屋台問題】福岡市職員がネット監視、批判的な呟きを「誤認」と断定(2)

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 「市の信頼を失墜させた」などとして、福岡市の屋台を題材にした民放のドキュメンタリー番組について抗議を行った福岡市。信頼失墜の証拠としたのは、インターネットの書き込み計108件。それら市井の声をかき集めたのは市職員である。ネット上の発言をチェックし、問題性があると判断すれば、何らかの措置をとる。中国共産党政府が行っているようなネット監視が、日本の地方自治体でも行われていた。自分にとって不都合な報道には、なりふり構わず、対抗措置に打って出る高島市政ならではの行いである。

一方的に「暴行事件」

公募の地図には存在しなかった赤坂の屋台(囲み部分)

 福岡市がBPOに審議・審理の申立てを行った番組は、フジテレビが関東地区で7月23日に放送した「ザ・ノンフィクション~エリナの夜明け 屋台女将の700日~」(以下、「エリナの夜明け」)。福岡市中央区の赤坂地区で屋台を経営する女性(以下、女将)を3年間、密着取材したもの。筆者が実際に視聴したところ、屋台問題だけではなく、屋台を通じて成長した女将の人生、彼女をあたたかく見守ってきた常連客との人間ドラマが描かれており、私見だが、一方的に福岡市を批判する内容ではなかった。今作は昨年1月に放送された第1作(テレビ西日本は同年2月に放送)が好評につき、制作された続編。放送の翌日、視聴者が女将を激励するために県外から訪ねて来るなど、反響の大きさがうかがえた。

 最も反響があったシーンと思われるのが、屋台担当のにぎわい振興課長(以下、屋台課長)と女将のやりとりだ。昨年10月5日、公募の内容について疑問を持った女将が、にぎわい振興課を訪れた。疑問とは、自分が屋台営業をしている場所が、今回の募集エリアから外れていることについてである。

 今回の屋台公募では、天神地区周辺の商業エリア、中洲・長浜の観光スポットエリアの2つに分けて、募集・選定を行い、成績順に場所を選べることになっていた。ところが、営業中の屋台が実在する祇園地区と赤坂地区は、どちらにも入っていない。赤坂地区では、当時営業中の屋台2軒がどちらも「名義貸し」とされていた。つまり、“赤坂地区から屋台が消える”ことが、公募審査の結果に関係なく、募集段階で決まっていたのである。

 なぜ、今の場所で営業を続けることができないのか。女将が、その事実を知ったのは、営業許可期限( 17年3月31日)の半年前。長い間、その場所で営業してきた屋台営業者にしてみれば、当然の疑問だ。

屋台存続のための署名運動も行われていた

 女将の市役所訪問には、夜間の防犯上の観点から屋台の灯は必要と考える地元自治会長が同行した。先だって訪れた路政課の職員は、「公募の内容(場所)については、にぎわい振興課が決めた」という。そこで日を改めて10月5日、にぎわい振興課を訪れることになった。しかし、屋台課長は「募集場所については選定委員会が決めた」と責任逃れ。女将は、場所が外れること(公募で選定されても営業場所を移動しなければならないこと)を営業許可期限の半年前に告げたことについても説明を求めた。

 屋台営業の実態を知らない市職員は、「屋台は移動飲食業。どこでもできる」と考えるのかもしれないが、店舗営業と同様、場所の移動は、売上に直結するほど、大きな問題だ。道路占用許可を得た場所で営業している屋台の客には、周辺に職場や自宅がある人も多い。他所から来る観光客も場所が変われば、訪ねて来ることは困難になる。また、屋台は、営業場所の近くに屋台の置き場(駐車場など)や食材の保管場所を用意しており、それらもすべて一から探すことになる。

 何度も説明を求める女将に対し、「言う必要がありません」と冷たく突き放す屋台課長。その一連の対応に憤りを感じた女将は、立ち上がって屋台課長の襟をつかんだ。すぐに手を離したが、爪で引っ掻き傷ができていた。その後も、再び席につき、話し合いは行われたが、最後まで、女将の求める説明はなされなかったという。その代わりに、別の回答が用意されていた。翌日、市から警察に被害届けが出されていたのだ。「後日、起訴状が届き、驚きました。しかし、手を出したことは事実です。(屋台公募の審査前で)ほかの屋台の方に迷惑をかけてはいけないと思い、罪(公務執行妨害と傷害)を認めて略式起訴で罰金(15万円)を支払いました」(女将)。

(つづく)
【山下 康太】

 
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