2024年03月29日( 金 )

アンチエイジングの切り札、脂肪由来幹細胞とは(後)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 成体幹細胞の供給源は大きくわけて3つある。1つは骨髄から取れる幹細胞、それから脂肪から取れる幹細胞、最後に臍帯血から取れる幹細胞である。骨髄から採取できる幹細胞は、採取する過程で患者に大きな痛みがともなうことで負担をかけ、取れる量も少量である。そのため、投与するためには培養する過程が必要になる。一方、脂肪から取れる幹細胞はどうだろうか。肥満の原因であるとして敬遠されていた脂肪組織から幹細胞が採取できることがわかったのは2000年である。UCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)のDr.Hedrickは、腹部皮下脂肪に大量の幹細胞が含まれていることを発見したのだ。脂肪由来幹細胞は、採取時の人体にかかる負担が少ないうえに、低コストで安全性が高いため、良く利用されている。脂肪由来の幹細胞は、それ以外にも、傷の修復を促進したり、炎症を抑えたりする効果などが報告され、ますます治療剤としての期待が高まっている。最後に、臍帯血から取れる幹細胞は、保管しておいた臍帯血から幹細胞を抽出し、培養して投与することになる。

 このなかでも脂肪由来の幹細胞がとくに注目を集め、かなり進化を続けている。とくに、美容、整形外科業界を中心にかなり利用が進んでいる。

 なぜなら、改善効果が目に見えるだけでなく、既存の整形手術とは違って、その効果がナチュラルだからである。1980年代の後半から乳房手術などにシリコンが良く使われていたのは周知の通りである。乳房のサイズを大きくしたり、手術などでへこんでしまった乳房にシリコンを注入したりしていた。シリコンを体に注入すると、異物であるため、体に良くないし、途中で崩れるなどいろいろな問題を起こすようだ。そのような悩みを一気に解決してくれる方法が登場したわけだ。自分のお腹や太ももから取った脂肪から幹細胞を抽出し、培養して自分の脂肪と一緒に入れると、生着してへこみなどが回復することが報告されている。手術で乳房などを抉られた人にとってはどれほど朗報であるかわからない。脂肪細胞と脂肪由来の幹細胞の比率を旨く調整したり、均一に入れるようにするなり、それなりのノウハウと経験が要るようなのだ。

 それだけではない。今までしわをなくすために、顔にボトックスを注射したりしたが、これからは脂肪由来幹細胞で自然な美と若さを確保できるようになった。もちろん、培養の過程で細胞が汚染されたり、異物が混ぜたりするような安全性の問題は徹底的に検証される必要はある。脂肪由来の幹細胞は美容、成形だけでなく、いろいろな用途で利用が進められていて、その期待は高まるばかりである。

 韓国は今まで成形大国といわれ、成形手術においては実績と腕を自慢にしていたが、その状況は様代わりするかもしれない。日本の大学を始め、製薬会社などを中心に、脂肪由来の幹細胞の研究は盛んである。日本の医療は世界的にもトップレベルで、最近中国、東南アジアから医療ツーリズムで来日する人が増えているようだが、それに脂肪由来の幹細胞が一役を買いそうだ。美しくなりたいのは人間の本能であるが、まさにその本能を実現してくれる道が開かれようとしている。今後アンチエイジングの主役は脂肪由来の幹細胞で、その可能性に大きく注目する必要があるだろう。

(了)

 
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