2024年04月20日( 土 )

子会社の相次ぐ行政処分で業績減~キューサイ(前)

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 青汁販売のパイオニアとして知られるキューサイ(株)。昨今は特定保健用食品や機能性表示食品、化粧品などのアイテム拡充のほか、原料生産や受託分析、M&Aなどで事業拡大を進め、株式上場をするまでに成長した。しかし、2010年ごろから業績は下降。昨年2月、子会社の日本サプリメント(株)が景品表示法違反を受け、さらに9月、特定保健用食品(トクホ)の許可を取り消されたことが低迷に拍車をかけている。

青汁事業で成長

 キューサイ(株)は、創業者の長谷川常雄氏が1965年に菓子製造販売業の長老製菓(株)を創業したのが始まり。67年に商号を長谷川製菓(株)に変更した2年後の69年に、(株)ニチレイの協力工場として、冷凍食品の製造をしていた。79年に長谷川氏が病気で倒れ、その後遺症で悩まされていた時に野菜を搾った汁を飲むという健康法を知り、実践したところ快方に向かったという体験から、82年に栄養価を豊富に含む無農薬ケールを使用した青汁の販売を開始。八名信夫氏をキャラクターとし、「うーんまずい、もう1杯!」のキャッチフレーズによるテレビCMが話題になったことで増収増益を続け、売上高は約400億円まで拡大した。

 99年に東京証券取引所第二部と福岡証券取引所に上場。2000年には有機・無添加野菜宅配業の環ネットワーク(株)(現・らでぃっしゅぼーや(株))、03年には受託分析・試験業の(株)キューサイ分析研究所を設立したほか、06年には日本合成化学工業(株)の機能性食品事業を買収し日本サプリメント(株)を設立、子会社化するなど、事業を拡大。同年12月、TOB(株式公開買付け)により、当時、大和証券グループ本社と三井住友銀行が合弁で出資していた投資ファンドのエヌ・アイ・エフ食品スーパーBCベンチャーズ(株)(現在は合弁契約解消)の関連であるグリーンパートナーズB(株)ら投資会社に全株式を売却した。売却金額は約450~600億円といわれており、創業者の長谷川氏は全株式売却により退任。藤野孝氏が代表取締役に就任している。07年3月には完全子会社化。その後10年には、全株式をコカ・コーラウエスト(株)(現・コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(株))が約360億円で取得し、子会社化している。

相次ぐ品質問題 行政処分で前社長辞任

 急成長の裏側で、同社商品の品質に関するトラブルが起きている。1999年9月、台風18号が熊本県に上陸したことで主原料のケール畑が甚大な被害を受け、深刻な原料不足となった。同社は原料確保に向け熊本県八代郡にある農事組合法人にケール2,000tを2億円で出荷する契約を結んだものの、収穫量が確保できず販促用の無料サンプルを中止。それでも足りなかったことを農事組合法人が同社に伝えず、原種となるキャベツ(計215t)を加えていた。同社は、この農事組合法人の事務局長を務めていた男性に対し、詐欺の疑いで熊本地検に告訴。農事組合側も男性を解雇し、横領の疑いで告訴している。

 問題はその後。2000年6月、同社が「ケール100%」をうたいながら原料にキャベツを使用していたことが発覚した。翌7月には各マスコミに報じられ、すでに混入した青汁は約650t以上製造され、40万以上の世帯に販売されていたことが明らかになった。同社は農事組合法人が独自で行った行為だとして、混入を一切知らなかったと発表したが、公正取引委員会から排除命令が下されている。

 さらに業界をも揺るがす、前例のない事件が起きた。16年の「トクホ取り消し」である。子会社の日本サプリメント(株)が販売していたトクホで、豆鼓エキスを関与成分とする「豆鼓エキスつぶタイプ」、かつお節オリゴペプチドを関与成分とする「ペプチド茶」など6件について自主検査で関与成分の含有量が、規格値を下回っていることが発覚。消費者庁は「ペプチドシリーズ5商品の各商品については、遅くとも11年8月以降、品質管理として、包装後の製品における関与成分についての試験検査が行われておらず、また14年9月に関与成分の特定ができないことが判明しており、健康増進法第26条第1項の規定に基づく特定保健用食品の許可などの要件を満たしていないものであった」とし、健康増進法違反として許可を取り消した。

(つづく)
【小山 仁】

<COMPANY INFORMATION>
代 表:神戸 聡
所在地:福岡市中央区草香江1-7-16
設 立:1965年10月
資本金:3億4,900万円
業 種:健康食品、化粧品の通信販売
売上高:(16/12)280億円

 
(後)

法人名

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