2024年04月21日( 日 )

韓国造船業界にチャンス再到来(前)

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日韓ビジネスコンサルタント 劉明鎬(在日経歴20年)

 韓国の造船産業の歴史は短い。欧米はいうまでもなく、アジア国家である日本と比べても、韓国の造船産業の歴史は浅く、韓国の造船産業のスタートは、日本より100年も遅れている。
 韓国は近代の一時期に鎖国政策を採用していたため、造船産業への参入がかなり遅れることになった。しかし、韓国政府は、重化学工業育成の一環として、韓国政府は造船産業の育成に目を向けるようになる。1972年に韓国初の本格的な造船会社である現代重工業が設立され、現代重工業は後に世界最大の造船会社になる。

 その後、1980年代には大宇造船とサムスン重工業が設立され、すでにあった韓進重工業とともに韓国の造船産業を担うことになる。韓国の造船産業は1990年中盤までは日本に追いつき追い越せで成長していくが、1990年代末に韓国の造船産業は、ついに日本を追い抜いて、造船の世界一となる。しかし、韓国もその後、同じく中国の追い上げを受け、2006年には中国に造船産業世界1位の座を明け渡すことになる。

 その後、2008年には世界金融危機が発生し、世界の造船産業は2008年をピークに景気が失速し、船舶の新規発注が急激に減少しただけでなく、船価も大幅に下がり、安い価格を武器に市場に食い込んでくる中国を相手に、韓国の造船産業は苦戦を強いられていた。
 韓国の造船会社はその打開策として、骨を削るような構造調整に取り組んだだけでなく、LNG船などの付加価値の高い分野に注力するとともに、海洋プラントなど中国と競争しない領域に事業をシフトしていった。
 その結果、LNG船では一定の成果を上げ、現在韓国はLNG船分野で世界最強になっている。ところが、海洋プラント事業では、技術の蓄積がまだできていないせいか、納期の遅延などで多額の損失が発生し、造船会社の首を絞めている。
 今現在、韓国の輸出を牽引しているのは半導体産業であるが、以前は造船産業が韓国の輸出のなかで一番大きな比重を占めていた。造船産業は、複合エンジニアリング産業で、海運、鉄鋼など関連産業への波及効果も大きいため、今でもとても重要な産業であることには間違いない。

 造船産業の歴史を紐解いてみると、造船産業の世界覇権は、時代とともに変遷している。最初の造船王国はアメリカである。昔の船は帆船で、木材で作っていたため、木材が豊富なアメリカで造船業が発達した。その後、造船業の覇権は海洋国家で、産業革命を起こし、世界を支配していたイギリスに移る。
 イギリスが造船産業の覇権を持っていた時代の工法はリベット工法であった。すなわちリベットを使って板を繋いでいたのだ。ところが、日本はリベットを使わずに、溶接で船をつくる新しい工法と、いくつかのブロックをまずつくり、それを溶接するブロック工法を採用し、日本に造船産業の覇権は移る。

(つづく)

 
(後)

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